清酒および合成清酒について成分の差違を緩衝能を指標として検討した。すなわち, それらのアルカリ滴定曲線を仮に酸区分 (pH 4.0~6.8), 無機塩区分 (pH 6.8~8.0), 高分子区分 (pH 8.0~9.4), アミノ酸区分 (pH 9.4~10.3) および糖区分 (pH 10.3~11.0) に分別し, 各区分の占める割合いを検討した。その結果, 合成清酒の緩衝能は酸区分のみが強く, 糖区分, 特に無機塩区分が少ないことを認めた。この事実は清酒と非常に異なっていた。
そこで, この点を改良するために, 純合合成清酒の各成分 (酸, 塩類など) の緩衝能を検討した。その結果, 酸類および無機塩類を増すこと, 特にアンモニウム塩を添加することによって, 清酒の滴定曲線とほとんど近似した滴定曲線を示す純合合成清酒の仕込配合を見出した。この仕込配合は酸類および糖類はもとの仕込配合より約10%増加しているし, 特に無機塩類は約3.6倍になっていた。成分的には濃くなっているにも拘わらず, 官能審査では味は薄く収れん性も減じているように認められた。
従って, この組成を基礎にして検討を進めれば, 呈味のバランスをくずさず, エキス分を多くし, 良好な合成清酒を造ることができるとの可能性を得たo
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