1) 清酒もろみにおける並行複発酵の一端を握る蒸米の溶解性を検討するに先立ち, もろみを7℃ にとめて徐々に品温を上昇させる従来の品温経過方式と, はじめから15℃ で発酵させる方式とを比較した。
2) 従来の品温経過方式は, 当然のことながらはじめから15℃に保ったものに比較して最高ボーメの出が悪く, また発酵もおくれた。アルコール1%生成に対する日本酒度の切れは, 前者で平均5度であり, 後者では平均6度であった。
3) 蒸米の溶けも従来方式のものは, はじめから15℃ に保ったものに比較して遅く, 溶解の初速度は, 後者が約9.79/1009一白米/言であるのに対し, 前者では3.59/1009一白米/日とほぼ1/3であった。また全体の溶け量も, もろみ23日の段階で約59/1009一白米分だけ前者は後者より低かった。
4) 品温経過は従来方式とし, α-アミラーゼを800或いは100units/9一白米と変えて比較を行なった。その結果, α-アミラーゼレベルの高い方は前半におけるエキス補給が多く, アルコール生成に対する日本酒度の切れは約3.2度と小さかった。併し後半は殆んどエキスの補給がなくなり日本酒度の切れは10となった。
5) α-アミラーゼレベルの高い方は蒸米の溶けも早く, その初速度は約59/1009一白米/日と早かった。併しはじめから15℃に保ち, α-アミラーゼを100units/9一白米と低くしたものには及ばなかった。全体の溶け量も, もろみ23日の段階で約79/1009一白米分だけα一アミラーゼレベルの高い方が低い方より多かった。
6) グルコース生成速度はα-アミラーゼレベルに関係なく, 品温経過が同じならほぼ同一であった。従ってアルコール生成速度もほぼ同一であった。
はじめから15℃ に保ったものは, 従来の品温経過をとったものよりもグルコース生成速度が大きく, 終局的に59/1009一白米分だけ多く生成された。
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