清酒13点を用いて得られた官能熟度および清酒の熟成に関係のある成分項目間の単相関行列を用いて, R技法およびQ技法による因子分析と多重回帰分析を行い, 各成分および各清酒間の潜在構造の解析と官能熟度の予測式の設定を試みた。
1.R技法による因子分析の結果, 清酒の26項目間の変動を, 第1因子アミノ酸に関する因子 (寄与率34.9%) 第2因子カルボニル化合物に関する因子 (同23・3%) 第3因子糖に関する因子 (同13.2%) 第4因子還元性物質に関する因子 (同11.2%) 第5因子酸に関する因子 (同7.5%) の5次元の主成分によって, 90.1%説明することができた。また, 清酒の官能熟度に対しては, 第1因子および第2因子の寄与率が高かった。
2.Q技法による因子分析の結果, 清酒13試料間の変動を, 第1因子熟し易さ (寄与率48.4%) 第2因子熟しにくさ (同47.7%) の2次元で, 96.1%説明することができた。
熟し易い清酒群では, 成分的にフェリクリシン, Fe, Cu, Zn, アミノ酸度, Trpが多く, OD280アルカリ性側および酸性側緩衝能が大きく, 熟しにくい清酒群では, これらの成分が少なく, アセトアルデヒドおよびピルビン酸が多い特徴がみられた。
3.多重回帰分析の結果, 次の回帰式が得られた。
Y1=-3.690+1.250
X9+1.097
X18-0.150
X19+1.379
X20 (
R2=0.912)
Y2=0.1819-0.007
X11+0.005
X12+ 1.308
X18 (
R2=0.896)
Y1: 老香強度 (40℃, 60日),
Y2: 味の熟度 (40℃, 60日),
X9: 酸性側緩衝能,
X11: アセトアルデヒド,
X12: ピルビン酸,
X18: フェリクリシン,
X19: Fe,
X20: Cu
4.清酒19点について, 回帰式の妥当性を検討した結果, 老香強度では72.5%, 味の熟度では51.0%の精度が得られた。
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