1. 清酒醸造工程中の醸酵末期およびアルコール添加後, 清酒中のFe, Cu, Zn, K, P, Mg等の無機成分が顕著に増加する原因を検討した。
2. 醸酵末期にアルコール添加したもろみと水添加したもろみの清酒中の無機成分含量を比較すると, アルコール添加したもろみの清酒中の無機成分含量が多く, それ等の無機成分はFe, Cu, Zn, K, P, Mgであった。
3. 協会7号酵母とアルコール耐性酵母で醸造した清酒中の無機成分含量を比較すると協会7号酵母で醸造した清酒中の無機成分含量が多く, それ等の無機成分はFe, Cu, Zn, K, P, Mgであった。
4. 清酒もろみ中の無機成分含量に近い無機成分を含んだ合成培地に培養した清酒酵母は, 比較的多量のFe, Cu, Zn, K, P, Mgを菌体内に取り込んだ。なおアルコール添加によって菌体中のCu, Zn, K, P, Mgは減少した。以上の結果から醸酵末期およびアルコール添加後, 清酒中のFe, Cu, Zn, K, P, Mg含量が顕著に増加する原因は, 清酒酵母のこれ等の無機成分の取り込み停止とともに清酒酵母の菌体内に摂取吸着されたこれ等の無機成分の清酒中への溶出が大きく影響しているものと考えた。
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