末梢型肺動脈狭窄症(PPS)は末梢肺動脈に狭窄や閉塞を呈する疾患であり,先天性疾患を合併しない純型PPSの若年成人患者の報告が増えている。最近,もやもや病の疾患感受性遺伝子多型(RNF213遺伝子;p.Arg4810Lys)が,PPSや腎動脈狭窄,アテローム性動脈硬化頭蓋内狭窄などのさまざまな血管疾患の発症・進展に関与していることが明らかとなった。本稿では,当院でのPPS診療経験を踏まえ,この新たな疾患概念(RNF213 vasculopathy)に関する最新の知見を紹介する。
生活習慣病の増加と高齢化により動脈硬化症に関連した心血管疾患が増加している。心血管疾患の診断に不可欠なCTやカテーテル検査はX線照射を用いるため,患者のみならず,医療従事者の放射線被ばくの影響も考慮する必要がある。本稿では,放射線の人体に対する影響やその生物学的線量評価法について概説し,放射線が実際にどの程度患者や術者に生物学的影響を与えているのかを論じる。
Marfan症候群などの遺伝性大動脈疾患の多くは単一遺伝子疾患であるが,発症早期からの積極的降圧剤治療による拡張抑制や,予防的大動脈人工血管置換術などの介入により,解離イベントの予防が可能であるとされる。早期診断・早期介入に際しては,遺伝子診断が極めて有効で,我が国においても,遺伝性大動脈疾患の主要遺伝子については,診断のための遺伝学的検査が保険収載され臨床の場で活用されている。