Journal of Computer Aided Chemistry
Online ISSN : 1345-8647
ISSN-L : 1345-8647
12 巻
選択された号の論文の6件中1~6を表示しています
  • 前田 祐希, 船津 公人
    2011 年 12 巻 p. 1-10
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/02/16
    ジャーナル フリー
    光電極を用いた水分解による水素製造法は二酸化炭素をほとんど副生せずに太陽光エネルギーを水素に変換するための方法であり、その活用が期待されている。しかし、光電極に用いる光触媒に関する研究は盛んに行われている一方、反応器に関する研究はほとんどなされていない。そこで本研究では、光電極による水素製造装置を設計することを目的とした。反応器において高効率な反応を達成するためには、反応器の構造パラメータを反応に対して適切に決定する必要がある。このような反応器の最適設計問題に対して、流体シミュレーションが有効な手段の一つとなる。しかし、流体の流れが反応に有利な状態を形成するように反応器の構造を決定するためには、多くのシミュレーション回数が要求される。特に一回当たりの計算時間が長いシミュレーションを用いる場合、その高い計算コストが障害となる。そこで本研究では、シミュレーション結果を統計解析し、構築した統計モデル(メタモデル)を利用する事でシミュレーション回数を抑制しながら反応器の最適設計を行うことを試みた。本研究で解析の対象である光電極による水素製造装置は、効率的な反応を達成するために最適化を行うべき応答因子が複数存在し、それぞれの因子がトレードオフの関係にあるという特徴を持っている。そのため、反応に有利な構造パラメータを決定する事は困難と考えられていた。しかし、メタモデルの構築と遺伝的アルゴリズムによる多目的最適化により、100回の流体シミュレーションから構造パラメータのパレート最適解を導出した。またこの解析により、統計手法による流体シミュレーションの反応器設計への効率的な適用の可能性を示した。
  • 蓬莱 尚幸, 二瓶 義人, 西岡 孝明
    2011 年 12 巻 p. 11-25
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/03/24
    ジャーナル フリー
    質量分析スペクトルデータベースMassBankにおいてSOAP APIサービスを新たに開発した。このサービスを用いることで、任意のアプリケーション・ソフトウェアからMassBankを利用することが可能となる。すなわち、ユーザの意図どおりにMassBankが提供する機能を組み合わせるプログラム、大量データについて一連の処理を繰り返し実行するプログラム、他のインターネットサービスと連携するプログラム等をユーザが作成することが可能となる。また、既存の質量分析解析ツールにMassBank検索機能を付け加えることも容易になる。MassBankはインターネット上の分散データベースであるが、本SOAP APIを用いてmassbank.jpにアクセスすることで、すべての分散データベースサーバに一括して検索することが可能であり、あるスペクトルデータがどのサーバに存在するかを意識せずにそれを取得することも可能である。
  • 荒川 正幹, 船津 公人
    2011 年 12 巻 p. 26-36
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/05/21
    ジャーナル フリー
    本研究では、有機化合物の変異原性を予測するためのクラス分類モデルの構築を行った。変異原性を評価するための標準的な方法である復帰突然変異試験を対象とし、その評価結果を高い精度で予測することの出来るモデルの構築を目指した。クラス分類モデル構築のための手法として、複数のSupport Vector Machine(SVM)モデルをサブモデルとして構築し、それらを組み合わせることで予測を行うアンサンブル手法を提案する。データセットから一部の化合物および構造記述子をランダムに抜き出し、SVMを用いてサブモデルを構築する。このとき、SVMのパラメータについても乱数によって無作為に決定する。この操作を複数回繰り返した後、精度の高いサブモデルの予測結果を統合することで変異原性の予測を行う。Hansenら[K. Hansen, et al., J. Chem. Inf. Model., 49, 2077-2081] が収集・整理した、6,512化合物からなる復帰突然変異試験のデータセットを用い、モデルの構築および評価を行った。その結果、テストセットに対する予測正解率79.6%のモデルを構築することに成功した。これは、通常のSVMによって得られるモデルと比較し高い精度を示すものであった。また、The Area Under ROC-Curve(AUC)は0.866であり、Hansenらの結果と同等以上の結果であることが確認された。これらのことから、変異原性の予測にあたってはSVMおよびアンサンブルモデルを用いることが有力であるとの結論が得られた。
  • 山下 洋輔, 荒川 正幹, 船津 公人
    2011 年 12 巻 p. 37-46
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/05/26
    ジャーナル フリー
    りんごについて測定された近赤外スペクトル用いて、内部品質である糖度および蜜・褐変の有無を推定する情報化学的手法の確立を行った。糖度に関しては、近赤外スペクトルを説明変数、糖度を目的変数とした回帰モデルを構築した。遺伝的アルゴリズムを応用した領域選択手法であるGenetic Algorithm-based Wavelength Selection (GAWLS)法を適用し、従来手法であるGenetic Algorithm-based Partial Least Squares (GAPLS)法によるモデルとの比較を行った。その結果、GAWLS法によるモデルの精度は従来手法と同程度であったが、糖度を説明するために重要である波長領域を明確に特定することが可能であることが示された。蜜・褐変の有無に関しては、GAWLS法をk-Nearest Neighbor (k-NN)法と組み合わせることでクラス分類問題へと適用する新規手法を提案し、k-NN法およびSupport Vector Machine (SVM)によるモデルとの比較を行った。その結果、糖度に関する解析と同様に、GAWLS法は重要な波長領域を明確に求めることが可能であった。以上の結果から、GAWLS法は近赤外スペクトルを用いた果物の内部品質解析において有用な手法であるとの結論が得られた。
  • 長谷川 清, 船津 公人
    2011 年 12 巻 p. 47-53
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/07/13
    ジャーナル フリー
    定量的構造活性相関(QSAR)では、部分最小2乗法(PLS)が統計手法として特に注目されている。QSARへの成功例以来、PLSは複雑なデータ構造に関連するより複雑な要求を克服して進化してきた。その中で、特に、図示化と化学的解釈に特化したPLSの別法がマルチターゲット構造活性研究では望まれてきた。本研究では、3つのセリンプロテアーゼレセプター(トロンビン、トリプシン、ファクターXa)に対する阻害剤の活性予測のために、SOMPLSを適用した。VolSurf記述子を化学記述子として使用した。SOMPLS解析の結果から、どのような化学構造的特徴がそれぞれのセリンプロテアーゼタンパクの阻害に関連するかのラフなトレンドを見つけることができた。X線結晶構造と対応するアミン酸から、これら化学構造的特徴の妥当性を検証することができた。
  • 草場 敏彰, 宮本 真二, 荒川 正幹, 船津 公人
    2011 年 12 巻 p. 54-64
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/12/13
    ジャーナル フリー
    本研究では,有機化合物のゼオライトへの吸着量を予測するモデルの構築を行った。対象とする有機化合物の構造記述子を説明変数,吸着量の指標である分配係数を目的変数として,GAPLS法によりゼオライト-溶媒の組合せ別に回帰モデルを構築した。結果,全182通り(ゼオライト14種×溶媒13種)の組合せのうち181通りについて,予測的説明分散Q2が0.5以上の予測性に優れたモデルを構築することができた。さらには,このモデルを用いて,擬似移動層クロマトでの分離に適したゼオライトと,溶離剤として用いる溶媒の組合せを選定するシステムを開発した。2-Adamantanoneと2-Adamantanolの分離を例に,本システムの有効性を評価した結果,本システムにより選定された組合せと,測定結果に基づき選定した組合せは概ね一致しており,本システムの有効性が確認された。本システムを利用することで,擬似移動層クロマト分離装置の設計において,ゼオライトと溶媒のスクリーニングに要する検討期間の大幅な短縮と,選定精度の向上が期待される。
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