Journal of Computer Aided Chemistry
Online ISSN : 1345-8647
ISSN-L : 1345-8647
13 巻
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  • 中野 達也, 山下 勝美, 瀬川 勝智, 沖山 佳生, 渡邉 千鶴, 福澤 薫, 田中 成典, 望月 祐志
    2012 年 13 巻 p. 44-50
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/10/27
    ジャーナル フリー
    フラグメント分子軌道(fragment molecular orbital; FMO)法は、近年巨大分子系の電子状態計算手法として、注目を集めている。系が大きくなるとFMO法では、ダイマー計算の計算時間の割合が大きくなってくる(O(N3))。この問題を解決するためにdimer-es近似が開発された。Dimer-es近似は離れたモノマー間のダイマーSCF計算を、静電相互作用するフラグメントで近似するもので、系が大きくなると計算精度を落とさず、計算時間の短縮O(N2))に大きな効果がある。しかしながらdimer-es近似では4中心のクーロン積分を計算する必要があることから、大きな系ではボトルネックの一つになってしまう。そこで本稿では、クーロン積分の高速化に用いられる、連続多重極子展開法(continuous multipole method; CMM)をFMO法プログラムABINIT-MPXに実装し、計算精度と計算時間について考察を行った。
  • 金子 弘昌, 船津 公人
    2012 年 13 巻 p. 29-43
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/08/23
    ジャーナル フリー
    化学プラントにおいては、測定困難なプロセス変数を推定する手法としてソフトセンサーが広く用いられている。しかし、ソフトセンサーモデルは化学プラントの運転状態の変化や触媒性能の変化、機器や配管への汚れ付着等により予測性能が劣化してしまう。このモデル劣化への対策の一つとしてプロセス変数の時間差分を用いて構築する時間差分モデルが提案されているが、時間差分モデルに関して十分に議論されているとはいえない。そこで本研究では、データのノイズおよび分散、プロセス変数の自己相関、モデルの精度等の観点から時間差分モデルに関する考察を行った。そして、時間差分モデルの性能について決定係数、自己相関、信号対雑音比を踏まえて定式化した。導入した式については、数値シミュレーションデータを用いて確認を行った。さらに実際の蒸留塔を模倣したダイナミックシミュレーションを行い、時間差分モデルの予測性能と時間差分間隔を検討した。観測可能な外乱および非観測外乱を考慮して発生させたデータを解析することで、適切に時間差分間隔を設定することでモデルの予測性能が向上することを確認した。
  • 荒川 正幹, 船津 公人
    2012 年 13 巻 p. 20-28
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/05/19
    ジャーナル フリー
    我々は、有機化合物の変異原性を予測するためのクラス分類モデルの構築を進めている。複数のSupport Vector Machine(SVM)モデルをサブモデルとして構築し、それらを組み合わせることで予測を行うアンサンブル手法を提案することで、これまでに予測正解率79.6%のモデルを構築することに成功している。しかし一方で、データベースに登録されているデータの一部に誤りが存在することを示唆する結果が得られた。そこで本研究では、誤りが疑われる化合物についてAmes試験を実施することでデータの検証を行った。Hansenらが収集・整理した、6,512化合物からなる復帰突然変異試験のデータセットを用い、アンサンブル手法によって変異原性予測モデルを構築した。そして、データベースに陰性として登録されているにも関わらず、多くのサブモデルによって陽性と判定される化合物を選択し、Ames試験を実施した。その結果、5化合物中の3化合物が陽性であることが判明した。
  • 長谷川 清, 船津 公人
    2012 年 13 巻 p. 1-9
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/03/01
    ジャーナル フリー
    本研究では、薬物設計における2つの基本的な手法を紹介する。すなわち、構造発生と化学構造図示化である。構造発生は、リード最適化で利用され、構造ホッピングに有用である。我々は、定量的構造活性相関に基づく構造発生に注目する。すなわち、逆定量的構造活性相関手法である。逆定量的構造活性相関手法の目的は、定量的構造活性相関モデルから生物活性が高いと予測される化学構造を提案することである。化学構造図示化は、リード最適化の別の重要な手法である。化学構造図示化は、合成化合物が化学空間上どこに存在しているかということ、あるいは、どこまで合成を行えばリード最適化が達成できるかを示す良いコンパスとなる。図示化は、複数のターゲットタンパク質に対する分子選択性を理解するのにも役立つ。一般に、化合物が複数のターゲットタンパク質に対して生物活性を示すと望ましくない副作用を引き起こす可能性があるので、化学構造図示化は安全性の面からも非常に価値がある。われわれの研究を含めて、2つの基本的な手法である構造発生と化学構造図示化を、それぞれ簡単に総説する。
  • 成 敬模, 金子 弘昌, 船津 公人
    2012 年 13 巻 p. 10-19
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/04/05
    ジャーナル フリー
    Membrane bioreactor (MBR) は工場排水や生活下水などの汚水を微生物で分解し、その後処理水と微生物を膜で分離する装置のことである。短時間かつ省スペースでの水処理が可能であるため、ビルや工場などにMBRを分散設置して無人運転を行うことは水不足問題の解決策として注目されている。しかし、膜に微生物や固形物などが堆積することでファウリングが発生し、膜差圧の上昇および運転コストの上昇は大きな課題となっており、膜差圧が一定水準に到達すると膜を薬品で洗浄し膜に付着した堆積物を除去しなければならない。そこで本研究では膜洗浄時期の推定のために1週間以上の長期にわたり、精度良く膜差圧を予測することを試みた。水質以外の変数から膜抵抗(resistance, R)を予測するモデルと水質関連変数からファウラントの堆積しやすさ(deposition rate, DR)を予測するモデルを構築し、それぞれのモデルから長期膜差圧予測を行う手法を提案した。モデル構築手法として線形手法であるpartial least squares (PLS)法と非線形手法であるsupport vector regression (SVR)法を使用した。Rを予測するモデルでは、PLS法とSVR法を用いた場合の両方とも高い予測性能を示したが、DRを予測するモデルでは、PLS法よりSVR法を用いた場合の方が予測性能は高かった。その後長期的に膜差圧を予測したが、Rを予測するモデルよりDRを予測するモデルを用いた方が精度良く予測できることが確認された。提案手法を活用することで、MBRの分散設置や無人運転化の拡大が期待される。
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