Journal of Computer Aided Chemistry
Online ISSN : 1345-8647
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2 巻
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  • 早水 紀久子
    原稿種別: 技術報告
    専門分野: 化学情報学
    2001 年 2 巻 p. 1-10
    発行日: 2001年
    公開日: 2001/03/01
    ジャーナル フリー
    総合的なスペクトルデータベースシステム(SDBS)は17年にわたって工業技術院コンピューターセンターの大型汎用計算機 (MSP)に構築されたが、MSPは1999年3月末で廃止された。MSPではデータベース管理システム(DBMS)であるFAIRSにデータの追加・更新・検索のシステムが作成されていた。またSDBSは1997年からコンピューターセンターのワークステーション(WS)をサーバーとしてインターネットによる一般公開を行っている(SDBSWeb:http://www.aist.go.jp/RIODB/SDBS/)。インターネット公開のために、WS用のOracle WebServerを採用し、MSPのFAIRSで作成された化合物辞書部をWS-Oracleへ移植した。しかし、WS-Oracleには新規データを入力してデータベース化する機能は具備していない。MSP廃止後にデータの追加・更新・検索などのデータベース活動を継続するためには、WSあるいはパソコン(PC)で稼働するデータベースシステムを再構築する必要がある。このために、PC-OracleをインストールしたWindows-NTをサーバーとしたグループ内Webシステムを作成し、新規データ入力・データ更新・検索・表示のためのPC用データベースシステム作成した。PC-Oracleでは新規化合物の入力とデータ更新のためにWeb画面から検索、データ追加・更新する機能、および化合物情報とスペクトル情報の表示機能を作成した。新規化合物のマニュアル入力にはISIS/Baseを採用した。NMRスペクトル・データベース作成用入力ツールでは、MSPで構築してきたSDBS-NMR(13CNMRと1HNMR)のデータ形式を継承したが、マニュアル入力に辞書部と同様にISIS/Baseを用いることによって普遍性と汎用性が得られた。スペクトルパターンはJavaアプレットで表示し、スペクトルの拡大・ピーク位置表示を可能にし、スペクトルの検証ができるようにした。NMRスペクトル・データベースの追加・更新などの活動継続のために必要な入力ツールの基本的な機能を確立した。
  • 長谷川 清, 細田 武宏, 船津 公人
    原稿種別: 研究論文
    専門分野: ケモメトリックス及びそのソフトウエア
    2001 年 2 巻 p. 11-20
    発行日: 2001年
    公開日: 2001/07/27
    ジャーナル フリー
    部分最小2乗法 (PLS: Partial Least Squares Regression)は、パラメータ間の共線性が強いあるいは解析化合物の数がパラメータ数より少ないといった場合でも威力を発揮し、現在多くのQSAR研究に利用されている。PLSは有用な手法であるが反面、化学構造と生物活性が線形関係の場合にしか適用できないという問題点を持っている。構造活性データは非線形関係を内在的に有していることが多く、そのようなデータを包括的にモデリングできる手法が求められてきた。このような流れの中で、代表的な手法としてバックプロパゲーションニューラルネットワーク(BNN: Back Propagation Neural Network)が利用されるようになり、さらにBNNと比較して学習の収束時間が短くかつ再現性が高い方法としてカウンタープロパゲーションニューラルネットワーク(CNN: Counter Propagation Neural Network) が注目を集めている。本研究では、非線形の構造活性データを解析するためにCNNを採用した。さらに、膨大な変数組み合わせの中から効率的に最適解を導くために、遺伝的アルゴリズム(GA: Genetic Algorithm)と組み合わせ、変数選択を行なうことを考えた。GAの評価値として、予測セットに対する予測的相関係数値(Rpred2)を用いた。解析データとして、フェニルアルキルアミンの幻覚作用データを用いた。GAにより、全15変数から9変数まで変数を減らすことができ、予測セットに対する予測能力は飛躍的に向上した。さらに得られた最適CNNモデルで外部バリデーションを実施したところ、全変数を使った場合に比べて予測値は実測値に非常に近いものとなった。
  • 浦田 新吾, 入澤 潤, 高田 章, 玉井 良一, 黒河 勇治, 関屋 章
    原稿種別: 研究論文
    専門分野: ケモメトリックス及びそのソフトウエア
    2001 年 2 巻 p. 21-28
    発行日: 2001年
    公開日: 2001/07/27
    ジャーナル フリー
    クロロフルオロカーボン(CFC)、ハイドロクロロフルオロカーボン(HCFC)に替わる新規代替化合物探索のため、階層型ニューラルネットワークを用い、含フッ素エーテル(HFE)及び含フッ素ケトン(HFK)の溶解度推算を試みた。はじめに、n-Eicosane(C20H42)の溶解度推算を検討した結果、入力パラメータとして、分子シミュレーションより得られる分子間相互作用エネルギーと密度、分子量などの基本物性を用いることにより、精度良く推算することが可能であることを見出した。また、ポリオールPE-315(オルトフタル酸にジエチレングリコールが2モル縮合付加したポリエステルポリオール)への溶解度は、分子間相互作用の情報と密度、分子体積に水素の電荷を新たな入力パラメータとして加えることにより推算可能であった。さらに、構築したネットワークを用いて溶解度の高い新規化合物の探索を行った結果、新たな発泡剤の候補化合物としてHFE-236pc(CHF2CF2OCHF2)を見出した。
  • 荒川 正幹, 長谷川 清, 船津 公人
    原稿種別: 研究論文
    専門分野: ケモメトリックス及びそのソフトウエア
    2001 年 2 巻 p. 29-36
    発行日: 2001年
    公開日: 2001/08/03
    ジャーナル フリー
    CoMFA法をはじめとする多くの3D-QSAR手法では、解析に用いるそれぞれの化合物を実際の活性発現に近い位置となるようにあらかじめ重ね合わせておくことが要求される。このことは3D-QSAR解析の成否に大きな影響を与えるため、非常に重要である。そこで本論文ではHopfield Neural networks (HNN)を用いた新しい分子構造重ね合わせ手法を提案する。2つの分子構造上に疎水性 (Hydrophobic), 水素結合供与 (Hydrogen-bonding donor), 水素結合受容 (Hydrogen-bonding acceptor), 水素結合供与/受容 (Hydrogen-bonding donor/acceptor)の4種類のプロパティを定義し、HNNを用いてこれらの対応付けを調べ重ね合わせ候補を出力する。Protein Data Bankより引用した12組の酵素阻害剤について重ね合わせ実験を行い、X線結晶構造解析による結果と比較することにより本手法の有効性を検証した。
  • -遷移状態データベース-
    堀 憲次
    原稿種別: 研究論文
    専門分野: 化学情報学
    2001 年 2 巻 p. 37-44
    発行日: 2001年
    公開日: 2001/08/21
    ジャーナル フリー
    これまで経験に基づいて行われてきた化合物の新規合成経路を創生する手段として、合成経路設計システムが実用的となりつつある。このようなシステムは、自身が有するデータベースと推論ルーチンにより合成経路を与える。しかしながら、一般的に複数の合成経路を提案するのみで、どの経路を選択するかの最終判断は、合成を行う個々の化学者に委ねられる。もしも提案された合成経路に含まれる反応の容易さが、計算化学的手法により判断できれば、だれにでも経路のランクづけが可能となる。遷移状態探索と極限的反応座標計算を十分に活用すれば、そのことは可能であるが、結果を得るために長い時間が必要とされる。本研究では、遷移状態ライブラリを構築し、合成経路の可能性を見極めるために必要な時間を短縮するシステム「遷移状態データベース」の概要および、それ利用した合成経路のランクづけの方法について述べる。
  • 浦田 新吾, 内丸 忠史, Asit K. Chandra, 高田 章, 関屋 章
    原稿種別: 研究論文
    専門分野: 理論化学
    2001 年 2 巻 p. 45-51
    発行日: 2001年
    公開日: 2001/09/07
    ジャーナル フリー
    密度汎関数法を用いて算出したC-H結合解離エンタルピー(Bond Dissociation Enthalpy : BDE)から、含フッ素エーテル(HFE)の分解生成物である含フッ素蟻酸エステルのOHラジカルとの反応速度(kOH)の推算を検討した。BDEの算出には閉殻系にRB3LYP法、開殻系にはROB3LYP法を適用し、基底関数は6-311G(d,p)を用いた。BDEは水素引き抜き反応の活性化エネルギー(Eact)と相関があることが見出されているが、含フッ素蟻酸エステルに関してはEactの実測値が報告されていないため、G2(MP2)レベルで算出されているCF3OC(O)Hの構造異性体syn、antiの活性化エネルギーを用い、EactとBDEとの関係式を導出した。また、比較的計算負荷の少ないUHF/6-311G(d,p)レベルを用いてCnF2n+1OC(O)H; (n=1-4)のOHラジカルとの反応速度を250-400Kの間で求め、頻度因子(A)を算出した。その結果、頻度因子が鎖長に依存せずほぼ等しいことが確認されたため、G2(MP2)レベルで算出されているCF3OC(O)Hのsynとantiの頻度因子をその他の含フッ素蟻酸エステルにも適用した。この頻度因子とBDEから推算されるEactを用い、syn、antiの存在比を考慮して、CnF2n+1OC(O)H;(n=2-4)、CnHF2nOC(O)H;(n=1-3)の298KにおけるkOHを推算した。
  • - マイクロ化学デバイスにおける流体反応系シミュレーション理論の開発 -
    桝田 晃司, 生田 幸士
    原稿種別: 研究論文
    専門分野: 化学情報学
    2001 年 2 巻 p. 52-61
    発行日: 2001年
    公開日: 2001/09/20
    ジャーナル フリー
    バイオテクノロジーの発展への寄与が期待されている化学ICと呼ばれるマイクロ流体デバイスは、マイクロ流路、マイクロバルブ、マイクロポンプなどの流体部品や各種マイクロセンサによって構成され、それらの組み合わせによって様々な役目のデバイスを作ることができ、サンプル量も少量で済む。しかし個々の部品が小さく自由度が高いため、リアクタ数やその配列、流路に設けられたポンプの能力などの組み合わせが無数に考えられる。よってそれらの組み合わせを評価するために、本論文では、リアクタ・ポンプの配置が与えられた時に、実際に回路を動作させた場合に起こる液体の移動と物質の反応に関するシミュレーションを行う理論を、ペトリネットの理論に基づいて開発した。さらにシミュレーション例を示して、本理論の概要を解説する。
  • - 構成部品の最適配置とGUI構築 -
    桝田 晃司, 生田 幸士
    原稿種別: 研究論文
    専門分野: 化学情報学
    2001 年 2 巻 p. 62-69
    発行日: 2001年
    公開日: 2001/09/20
    ジャーナル フリー
    化学ICと呼ばれるマイクロ流体デバイスでは、大規模な化学プラントに比べて反応器(リアクタ)が小さく、全体の生成量は少なくなるため、効率の良い化学プロセスを行わせるためには、リアクタ数やその配列、流路に設けられたポンプの能力などが与えられた条件の下で、全体の組み合わせや配置を最適化して設計しなければならない。よって本論文では、液体の移動と物質の反応に関するシミュレーション理論を元に、容積の制限があってリアクタ数の上限が決まっている場合、あるいはポンプの能力と反応完了までの制限時間が決められた時に、リアクタ・ポンプの配置を最適化する理論を述べる。さらに最適化プログラムにシミュレーションプログラムを組み込んだGUI画面によるソフトウェア構築したので、その概要をシミュレーション例を通じて解説する。
  • - Arcing_RAの提案と評価 -
    浦田 新吾, 高田 章, 関屋 章
    原稿種別: 研究論文
    専門分野: ケモメトリックス及びそのソフトウエア
    2001 年 2 巻 p. 70-78
    発行日: 2001年
    公開日: 2001/10/25
    ジャーナル フリー
    学習精度の高くない学習機械(Weak Learner)を複数足し合わせることにより、相関性、予測性を向上させるアンサンブル学習法(Ensemble Learning)を回帰分析に適用するため、新しいアルゴリズムArcing_RAを提案した。モデルケースとしてFriedman Test; f(x) = 10sin(pix1x2) + 20(x2-0.5)2 + 10x4 + 5x5 + N(1,0) (x1-5は0-1のランダムな値;N(1,0)は正規分布で与えられる誤差)を用い、学習用に200データ、予測用に1000データを発生させ、相関、予測精度を評価した。学習機械としては、3層からなる階層型Neural Networkを用いた。1つのNeural Networkを用いた場合、中間層のNeuron数が10を越えると過学習が起こることが確認されたため、過学習の起こらない中間層に5個のNeuronを用いたNeural NetworkをWeak Learnerとして採用し、相関、予測精度が向上されるかテストを行った。各データの重みを決定するリサンプリングの方法が異なる3つの方法Arcing_RA1-3を検討した結果、いずれの方法も相関、予測における絶対平均誤差を約20%減少させることが確認され、その有効性が示された。
  • - ニトロ芳香族化合物の変異原性 -
    岡田 孝
    原稿種別: 研究論文
    専門分野: 化学情報学
    2001 年 2 巻 p. 79-86
    発行日: 2001年
    公開日: 2001/11/01
    ジャーナル フリー
    電子付録
    カスケードモデルは、相関ルール探索におけるアプリオリアルゴリズムと同じく、ラティスの構築に基づく帰納的なルール導出法である。属性値と値の対をアイテムとして表現した上で、ラティス中のすべてのノードはアイテムセットとそれらを支持する事例群で特徴づけられる。もし、クラス属性値の分布がラティス中の特定のリンクに沿って急激な変化を示すならば、そのリンクを"IF item-along-link added on itemset-on-upper-node, THEN class-i"という形式のルールとして示す。ここで各ルールの強度をBSS値で示すことができる。構造活性相関関係の発見においては、まず化合物群の構造式から"NH-C-C-C-OH"のような多数の線形部分構造パターンを抽出する。これらの部分構造パターンが化合物中に存在するか否かを[pattern: y or n]のようなアイテム群で表現して、カスケードモデルを適用することにより、構造と活性間の相関関係を表すルールが得られる。このようにして得られたルールとそれを支持する化合物群の構造を視察することにより、ニトロ芳香族化合物群におけるニトロ基の共平面性の重要性など、多数の有効な知識を見出すことができた。
  • 猪口 明博, 鷲尾 隆, 岡田 孝, 元田 浩
    原稿種別: 研究論文
    専門分野: 化学情報学
    2001 年 2 巻 p. 87-92
    発行日: 2001年
    公開日: 2001/11/01
    ジャーナル フリー
    アプリオリ型グラフマイニング法とは相関ルール探索におけるアプリオリアルゴリズムをグラフ探索に適用するように拡張したものである。その際、k次のラティスレベルには、k個の頂点を有するグラフの中から、与えられた最小サポート値以上のものが置かれる。本方法により、”IF 事例中にサブグラフGa が存在するならば、THEN サブグラフGa∪Gb もその事例中にある確信度で存在する”というルールを導くことができる。本研究においては、事例を構成するグラフとして、化学構造式および分子の各種性質を表現する仮想的な孤立グラフ頂点を与えることにより、構造活性相関関係を表現するルールを得ることができる。本方法を230種の芳香族ニトロ化合物群における変異原性の解析に適用した結果、有効な作業仮説を得ることができた。本方法は、一般的な構造活性相関研究の方法論として採用できるものである。方法の原理と応用結果について述べる。
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