Journal of Computer Aided Chemistry
Online ISSN : 1345-8647
ISSN-L : 1345-8647
7 巻
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  • 岩本 仁志, 坂本 英文, 木村 恵一
    2006 年 7 巻 p. 1-9
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/02/28
    ジャーナル フリー
    クラウンエーテル部位を有するスピロベンゾピランの液-液溶媒抽出における抽出能を分子動力学計算を用いて評価した。スピロベンゾピラン環に導入したアルキル基は、長鎖のものを導入するほど有機相で安定する傾向を示すことを既に報告しているが、金属イオン錯体モデルについても同様の傾向を示した。全体的に、クラウン化スピロベンゾピランがアルカリ金属イオンと錯形成することにより、水相での立体エネルギーは減少したが、有機相に比べ高く、有機相での安定性が示された。更に、クラウンエーテルの環サイズの違いにより安定となる金属種に違いが生じた。またこの傾向は、スピロベンゾピランを用いた溶媒抽出後の有機相の紫外可視吸収スペクトルの結果とも一致した。このことは、分子動力学計算により求めた立体エネルギーから抽出剤の性質を予測することが可能であることを示している。
  • 河村 智史, 荒川 正幹, 船津 公人
    2006 年 7 巻 p. 10-17
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/03/03
    ジャーナル フリー
    本論文ではスペクトルデータにおいても予測精度の高いモデリングを行うことを可能にする新しい変数選択手法として、GAWLS法の提案を行う。GAWLS法は遺伝的アルゴリズムを用いてモデルの予測精度を向上させる説明変数の組を選び出す変数選択手法であり、従来使用されてきたGAPLS法とは異なり、対象とする目的変数を効果的に説明することのできる波長を領域単位で選択する。本論文では、精密農業における近赤外スペクトルデータを使用して、GAWLS法の有用性の確認を行った。スペクトルデータは変数間に強い共線性を持つため、従来の変数選択手法ではモデルの改良を行うことが困難であったが、本論文で提案するGAWLS法を用いることにより、安定的に高い予測精度を持つモデルの作成が可能になり、目的変数と高い関係性を持つ重要な波長領域の発見と、構築されたモデルの化学的帰属が容易になると考えられる。
  • 山本 博志
    2006 年 7 巻 p. 18-30
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/03/24
    ジャーナル フリー
    イミダゾリウム、ピリジニウム、テトラアルキルアンモニウムなどのカチオン誘導体と様々なアニオンとからなるイオン液体の粘度と融点を計算する式を構築した。カチオン分子を特徴づける説明因子として半経験的分子軌道法の計算結果から得られるダイポールモーメント、軌道エネルギー、電荷の情報などと分子の表面積、体積、卵形度を組み合わせ、推算式の係数を遺伝的アルゴリズムを用いて決定した。融点(Tm)に関しては一部推算値から大きく外れるものがあるが粘度(Vis.)に関してはR2=0.9464と非常に良好に実験値を再現できた。
  • 三井 利幸, 肥田 宗政
    2006 年 7 巻 p. 31-37
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/03/24
    ジャーナル フリー
    既知試料の測定値の補正値を説明変数,未知試料の測定値の補正値を目的変数として重回帰式を作成し,非分離分析を行う改重回帰分析(Different calculation method of regression analysis, DCR)を利用して,得られた重回帰式から未知試料の補正値と計算値の差を比較することにより分析に不適切な試料を検出し,誤った分析結果を提示する危険性を排除する方法について検討した。その結果,PCRやPLSのような従来の方法では困難であった分析に不適切な試料の検出が容易にでき,誤判定を防止することが可能となった。今回は,この方法を腐敗や熱変性を受けた可能性のある血液中の一酸化炭素ヘモグロビン(CO-Hb%)の定量に応用した。その結果,51試料中完全に分析に不適切な5試料,分析にやや問題のある8試料が検出され,誤判定を未然に防止することができた。この方法は,血液のように変性する試料だけではなく,分析目的成分以外の不純物が混合している試料に対しても応用可能である。
  • 佐藤 寛子, 額田 恭郎, 赤羽 克仁, 佐藤 誠
    2006 年 7 巻 p. 38-47
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/06/23
    ジャーナル フリー
    本研究は,可視化される分子情報と力覚デバイスに提示される力により,分子間力を体感できる新しい分子模型システム教材の基盤構築と基本要件の確立を目的としたものである.本稿では,本システムのコンセプトと方法について述べ,次いで,開発した基本システムの構成と実行例を示す.さらに,本システムの最初の実施結果に基づき,力覚デバイスや可視化に求められる基本要件について考察した結果を報告する
  • 松井 春美, 石若 裕子, 小林 淳哉, 小西  修
    2006 年 7 巻 p. 48-56
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/07/14
    ジャーナル フリー
    免疫アルゴリズム(IA)を用いて、メタノール水蒸気改質反応用のCu/Al2O3触媒組成の最適化を行った。これまで触媒開発に用いられてきた遺伝的アルゴリズム(GA)と比較して、IAは局所解に陥りにくく広範囲を探索するのに有効である。人工ニューラルネットワーク(ANN)により触媒反応を近似した関数に対して、IAとGAを適用した。ANNにより近似した二つのピークを持つ関数を探索した結果、GAでは極大値付近の組成のみを提示した一方、IAでは二つのピーク近傍の組成を提示した。多成分触媒を対象とした開発の初期段階では、ANNによる近似関数は複数のピークを持つことが予想される。したがって、広範囲を探索し潜在的な候補も提示できるIAとANNを組み合わせた手法が有効であると考えられる。
  • 丸山 英俊, 海尻 賢二
    2006 年 7 巻 p. 57-68
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/07/19
    ジャーナル フリー
    タンパク質の機能解析において、配列モチーフは重要な情報である。配列モチーフとは、機能を代表するアミノ酸部分配列であり、タンパク質ファミリにおいて非常に良く保存されている。未知タンパク質のアミノ酸配列中から配列モチーフを見つけ出すことで、そのタンパク質の機能を類推することができるのである。しかしアミノ酸配列に基づく配列モチーフ解析には限界があり、タンパク質立体構造からの特徴抽出の方法論が望まれている。タンパク質立体構造からの特徴抽出として三次元モチーフの研究が行われている。著者らは、新規な三角形IDに基づくタンパク質立体構造ホモロジー検索の可能性について検討を行ってきている。三角形IDとは、辺の長さに幅を持たせた三頂点20種類のアミノ酸の組み合わせ8000個の数値IDである。タンパク質のアミノ酸Cαの位置関係を三角形に見立て、該当する三角形IDにすべて数値変換し、その三角形IDを比較する方法である。その三角形IDに基づくタンパク質立体構造ホモロジー検索を行い、有効性を示した。本論文では、この三角形IDに基づく近傍三角形IDを用いて、タンパク質ファミリの三次元的特徴、すなわち三次元モチーフの作成を試みた。同じファミリ中から任意に選択したいくつかのタンパク質の共通した近傍三角形IDを抽出し、三次元モチーフとした。具体的には、医薬品のターゲットとして注目され、また比較的立体構造データが多いプロテアーゼファミリに着目し、それら各ファミリの三次元モチーフの作成を行った。作成した三次元モチーフを用いて、プロテアーゼファミリ検証用データセットの機能解析を試みた。その結果、プロテアーゼの各ファミリへ帰属を可能とする類似度、選択性の高い三次元モチーフの作成ができた。三角形IDに基づく三次元モチーフを用いたタンパク質の機能解析の可能性を示した。
  • 植村 圭祐, 荒川 正幹, 船津 公人
    2006 年 7 巻 p. 69-77
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/07/28
    ジャーナル フリー
    本論文では、ケモインフォマティックスの手法を用いた触媒設計支援手法の提案を行う。触媒組成や反応条件を説明変数、転化率と選択率をそれぞれ目的変数としてPLS法やGAPLS法を用いて回帰モデルを構築し、これらのモデルを用いて転化率と選択率が高いと予測される触媒候補を探索する。触媒候補の探索では転化率と選択率の二つの目的変数に対してパレート最適の概念を利用した多目的最適化を行うことで、要求される触媒性能に応じて最適な触媒候補を選択することができる。本論文では、特許から収集したプロピレンオキシド製造用触媒のデータを用いてこの手法の有効性を確認した。この手法を用いることで、性能の高い触媒を効率よく設計できるようになると期待される。
  • 岩淵 真悟, 小坂井 晋作, 栗田 典之
    2006 年 7 巻 p. 78-86
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/09/20
    ジャーナル フリー
    カルシウムイオン(Ca)は、生体内の情報伝達物質として多くの役割を担っている。その情報伝達には、カルシウム結合タンパク質(CaBP)とCaの結合が関わっている。本研究では、EF-handモチーフを持つCaBPとCaの相互作用機構を原子・電子レベルで解明することを目的とし、CaBP単体及びCaが結合した状態のCaBPの安定構造を、古典分子力場AMBERを用いて求めた。さらに、それらの安定構造に対し、半経験的分子軌道法MOPACを用いて電子状態を計算し、CaBPファミリーのCa結合特性を解析した。その結果を基に、各CaBPの機能の違いを議論した。
  • 田中 尚人, 阿部 貴志, 宮崎 智, 菅原 秀明
    2006 年 7 巻 p. 87-93
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/09/15
    ジャーナル フリー
    数多くの原核生物および真核生物のゲノム情報は国際塩基配列データベース (INSDC, DDBJ/EMBL/GenBank) から公開され簡単に入手できる。このゲノム情報を手がかりに生物学的研究を進めていくために、容易にゲノム情報を扱える環境を整えることが必要である。しかし現在はそのための支援ツールの開発があまり進んでいない。我々が開発した G-InforBIO は INSDC から公開されているゲノム情報を中心に端末のパソコン上で効率的に統合・解析できるツールであり、ダウンロードサイト (http://www.wdcm.org/inforbio/G-InforBIO/download.html) からフリーソフトウェアとして提供されている。本ツールの主な機能は、アノテーション情報の編集、配列データのホモロジー解析とクラスタリング解析である。解析プログラムは現在 9 種類搭載されている。これらの機能を利用することで、近縁種間の比較ゲノム解析やゲノム上の遺伝子配列やコードされているアミノ酸配列の網羅的解析など、ゲノム情報を活用することが可能である。操作の詳細はオンラインマニュアル (http://www.wdcm.org/inforbio/G-InforBIO/manual_E/index.htm) で見られる。
  • 真保  陽子, 坂口  峻一, 中村 由紀子, モハマド・アルタフル・アミン , 黒川  顕, 船津 公人, 金谷  重彦
    2006 年 7 巻 p. 94-101
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/09/15
    ジャーナル フリー
    二次代謝物は種固有性が非常に高く、また、生物の生き残りのために重要な役割を演ずる。種々の生物からの代謝情報が集められ、化学ならびに代謝経路の情報を提供する既存のデータベースはあるが、これらのデータベースは代謝物とその代謝物を有する生物の情報を提供することができない状況にある。代謝物の生物種固有の多様性を体系的かつ網羅的に理解するためのデータベースを考案し、これをKNApSAcKと名づけた。KNApSAcKは化合物名、構造式、分子式、分子量、CAS登録番号等の化学情報に加え、同定されている生物種名、生理活性、文献情報からなり、化合物名、分子式、分子量、生物種名、生物系統からの検索ができる。また、FT-MS等の精密質量分析装置によるメタボローム解析に対応するため、マススペクトル解析の結果から各ピークに対応する化合物を検索することも可能である。2006年1月19日までに約7,600の文献からの11,075個の代謝産物、25,930組の代謝産物-生物種データを収集した。ダウンロードバージョンはhttp://kanaya.naist.jp/KNApSAcK/、ウェブバージョンはhttp://kanaya.naist.jp/KNApSAcK/KNApSAcK.phpより無償で得ることができる。ダウンロードバージョンを使用する場合は、予め、Java 1.4.2をインストールする必要がある。
  • 大山  彰, 黒川  顕, 恵内  京徹, 斉藤  仁浩, 金谷  重彦, アミン ムハメドアルタフウル, 小笠原  直毅
    2006 年 7 巻 p. 102-115
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/09/15
    ジャーナル フリー
    インビトロ(試験管内)での生物学実験を代替する手段として有力と考えられているインシリコ(コンピュータ内)での分子生物学実験を試みている。生物学の数多くの分野の中でも分子クローニングに着目し、生物分野でもっとも系統的にまた網羅的に情報が収集されているDNA情報を利用する。インシリコ実験にはいくつかの利点があり、たとえば、分子生物学実験の計画に活用できる、実験ノートの代用となる、分子生物学実験の教育用ツールとして用いることができることなどが挙げられる。しかしながら、インシリコ実験を実装するためには、制限酵素による消化切断生成物の末端形状やPCR生成物などの記録方法などの定式化が必要である。このため、GenBank/EMBLデータベース注釈規約にいくつかの拡張を行い、新規FeatureおよびQualifierとして定義した。さらに、DNA配列上に表現されたFeatureはPCRや制限酵素消化切断などの際に部分的に削られることがあり、このためこの部分的に削られたFeatureを記述する規約の定式化を行った。また、DNAの2面的な性質により、通常興味の対象としては片方のStrandのみを表示するが、インシリコ実験を実装するソフトウェアにおいてはこの対象としての長鎖DNA配列をその上にFeatureを保持したままその逆相補鎖と頻繁に切り替える操作が必要であることを示した。これらの定義やデータ記述に従い、我々は「インシリコモレキュラークローニング」と呼ぶインシリコ実験ソフトウェアを開発し、いくつかの典型的な分子クローニング実験をコンピュータ上で実行し、この方法が有効であることを示した。
  • 木ノ内 誠, 黒川 顕
    2006 年 7 巻 p. 116-124
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/09/15
    ジャーナル フリー
    現在までに250以上のコンプリートゲノム配列が決定されており、広範な生物について種固有の遺伝子発現に関する研究が盛んに行われている。tRNAは遺伝子発現に大きく関わっており、その生物が持つtRNA全体を知ることは遺伝子発現を理解するために非常に重要である。本研究では、DNA塩基配列からtRNA遺伝子を検出するプログラム群であるtRNAfinderを開発した。tRNAを検出する手順は次のとおりである。はじめに、クローバー葉2次構造に基づきtRNA遺伝子候補を検出する。次に、実際のtRNAから得られた規則に基づき候補が選別される。本稿では、tRNAfinderのアルゴリズムを紹介し、72種のガンマプロテオバクテリアについてtRNAデータベースサイトと比較することによりtRNAfinderのパフォーマンスを検証する。さらに、ガンマプロテオバクテリアにおけるユニバーサルなtRNA組成について考察する。本研究で開発したプログラム群はウェブサイトからダウンロード可能である。
  • 矢野 美弦, 金谷 重彦, Md. Altaf-Ul-Amin , 黒川 顕, 平井 優美, 斉藤 和季
    2006 年 7 巻 p. 125-136
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/09/15
    ジャーナル フリー
    本論文の目的は、我々が開発した一括学習型自己組織化マップ(BL-SOM)のソフトウエアを活用することにより植物科学の分野で得られるポストゲノム科学の多変量データから生物学的に有用な知見を効率よく抽出できることを例証することである。BL-SOMは典型的なSOMを特に分子生物学の分野におけるデータ解析に向けて改変したものであり、学習の結果がデータの入力順に依存しないという特性を持っているため結果の再現性が保証されている。我々はこの解析ツールをフーリエ変換イオンサイクロトロン型質量分析装置(FT-ICRMS)による代謝物蓄積量の網羅的測定(メタボローム)とマイクロアレイによる遺伝子発現解析(トランスクリプトーム)を行うポストゲノム的手法による植物の栄養ストレス応答に関する研究に応用した。メタボロームデータの解析では、まずBL-SOMの可視化機能により植物の栄養ストレス応答の全体像をメタボリックフィンガープリンティングとして直感的に把握できる様式で示すことができ、植物が栽培条件や組織に依存して代謝物蓄積量プロファイルを大きく変化させていることを明らかにした。また、BL-SOMのもうひとつの特性である優れたクラスタリング機能を利用して、精密質量数から生物学的にも合理的と考えられる化合物名を推定することができ、欠乏させた元素を含む重要な二次代謝物の蓄積量が経時的に大きく変化することを明らかにした。トランスクリプトームデータの解析においては、適切な時系列データをBL-SOMで解析することにより、その機能が塩基配列からの推定にとどまっている遺伝子の機能を複数の代謝経路において同時に効率よく包括的に予測する方法を確立した。さらにこの方法によって予測した遺伝子の機能のいくつかを酵素学的方法によって確認することができた。BL-SOMはポストゲノムにおけるomics科学の分野で大量に得られる異なった種類のデータを統合して解析する際にも極めて有用な知識抽出のためのツールとなる可能性を示した。本ソフトウエアは以下のサイトにおいて無償でダウンロードできる(http://prime.psc.riken.jp)
  • 西  達也, 増田  泰, 氏家 義史, 森田 直樹, 北山 雅彦, 池村 淑道, 金谷 重彦
    2006 年 7 巻 p. 137-140
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/09/15
    ジャーナル フリー
    GeneLook ウェブサーバ(http://www.genaris.co.jp/plaza/free_DB_top.html)は、ab initio 原核生物遺伝子同定プログラムGeneLookのインターフェースを提供する。GeneLookは配列組成に関する予備知識なしに高精度に翻訳領域を予測することできる。GeneLookは短いDNA配列からでも翻訳領域を同定できるが、良好な予測結果を得るには、配列の長さは10 kb以上であることが望ましい。
  • 佐藤 寛子, 青木 淳, 浅岡 浩子
    2006 年 7 巻 p. 141-149
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/09/15
    ジャーナル フリー
    基盤ソフトウェアのオープンソース化は共通技術の共有化によるソフトウェア技術の発展と次世代の育成と継承のために重要である。しかし、化学ソフトウェアの市場は圧倒的に欧米製のもので占められており、かつ共通技術であっても公開されているソースコードは極めて少ないのが現状である。そこで我々は、基盤技術の1つである化学用グラフィックスソフトウェアのオープンソース化に向けてライブラリの構築を進めてきた。2005年12月26日に、本ライブラリを「ケモじゅん」と命名し、公開を開始した。本稿では、2006年8月10日リリースしたケモじゅんの最新版050の機能と特色について,ケモじゅんプロジェクトの考え方と合わせて報告する.
  • アミン モハマド・アルタフル, 辻  尚, 黒川  顕, 旭  弘子, 真保  陽子, 金谷 重彦
    2006 年 7 巻 p. 150-156
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/09/15
    ジャーナル フリー
    本研究では、いままでに開発を進めたクラスタリング・アルゴリズムに基づいて開発を進めたグラフ・クラスタリング・ソフトウエアについて報告する。本アルゴリズムは、要素間がお互いに密に連結した領域を抽出するために開発されたアルゴリズムである。ユーザーは、密な結合関係のみをクラスターとして抽出したい、あるいは疎な結合関係までを考慮に入れたいなどの目的に応じて適切な範囲内で二つのパラメータを自由に設定することができる。本ソフトウエアは一般にはグラフ・クラスタリングとして用いるが、非常に複雑なタンパク質相互作用関係からタンパク質複合体を検出することに焦点をあてることもできる。さらに、本ソフトウエアは、適切な分子機能単位を表すタンパク質のクラスターを視覚化することも可能であり、また、その他の多くのネットワークで表現されるデータから適切なクラスターを抽出することにも適用可能である。
  • 富木  毅, 斎藤  臣雄, 植木  雅志, 今野  英明, 浅岡  丈生, 鈴木  龍一郎, 浦本  昌和, 掛谷 秀昭, 長田  裕之
    2006 年 7 巻 p. 157-162
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/09/15
    ジャーナル フリー
    我々は、理化学研究所天然化合物バンク(RIKEN NPDepo)の情報基盤として、化合物データベース"理化学研究所天然化合物エンサイクロペディア(RIKEN NPEdia)"を構築した。このデータベースには、奈良先端科学技術大学院大学の金谷教授らが構築した二次代謝物データベース"KNApSAcK (http://kanaya.aist-nara.ac.jp/KNApSAcK/, http://prime.psc.riken.jp/ (mirror site))"から提供されたデータを含め、現在約25,000の化合物データが登録されている。ここに収録されているデータのほとんどは、放線菌、糸状菌、植物などから単離された二次代謝物のものである。それぞれの化合物データは、構造、起源、物理化学的性質、生物学的性質などから構成されている。MOLファイルをダウンロードすることも可能となっている。近日、UVスペクトル、MS/MSスペクトル、NMRスペクトルをデータに組み入れる予定である。このデータベースは、以下の3つの機能:(1)化合物の検索、(2)化合物データの登録、そして、(3)化合物バンクの受発注システムとの連携、を有している。我々は現在、化合物を収集するとともに、化合物データと代謝産物マップ、タンパク質間相互作用マップ、ケミカルゲノミクスマップ(バイオプローブが代謝系のどこに作用するかを示すマップ)との統合を目指している。我々は、NPEdiaが様々な領域の研究者にとって有益で、親しみやすいデータベースとなることを望んでいる。本データベースに関する詳細と最新情報は、我々のWebサイト(http://npd.riken.jp/)をご参照頂きたい。
  • 野中 尋史, 関野 秀男
    2006 年 7 巻 p. 163-167
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/11/09
    ジャーナル フリー
    DNAやタンパク質などの物性を解明するために、分子動力学法をはじめとする分子シミュレーションが現在、盛んに使用されている。しかし、その計算コストは非常に大きく、高速化が求められている。高速多重極展開法(FMM)はシミュレーションの計算時間上、ボトルネックとなっているクーロン力計算の高速近似法として開発された。このFMMの欠点として、近似精度を向上させるためには計算時間の増大が避けられないことが挙げられる。本研究では、FMMの局所展開としてL2誤差ノルムに関する最良近似多項式である最小二乗近似多項式を導入することにより、計算コストの増大なしに精度を上げることが可能であることを示した。
  • 山本 博志, 栃木 勝己
    2006 年 7 巻 p. 168-177
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/11/09
    ジャーナル フリー
    クロロフルオロカーボン(CFC)-11は、その低い熱伝導度の為に発泡剤などに用いられてきた。塩素を含まない代替品は、国家プロジェクトとして地球環境産業技術研究機構(RITE)が、ヒドロフルオロエーテル(HFE)、ヒドロフルオロケトン(HFK)などを精力的に検討した。いくつかの化合物の気体の熱伝導度 (Thermal Conductivity of Gas: ThCG) が測定されデータベースにまとめられている。本研究では、こうしたCFCから普通の炭化水素系有機化合物までに使用できる気体熱伝導度の推算式を構築した。推算式には多項式展開法を用い、式の係数を遺伝的アルゴリズムを用い決定した。得られた多項式を用いて式を構築するのに使わなかった化合物の熱伝導度を予測した所、決定係数R2=0.996と非常に良好に予測できることがわかった。この推算式を用いると熱伝導を小さくする構造を逆設計する事が可能である事を示した。
  • 高橋 聖和, 栗田 典之
    2006 年 7 巻 p. 178-189
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/11/23
    ジャーナル フリー
    アデノシン三リン酸(ATP)は、高エネルギー結合を持つ分子として、生体内での様々な機構に必要なエネルギー源として広く利用されている。本研究では、ATPが有する特徴を明らかにする目的で、ATP、アデノシン二リン酸(ADP)、アデノシン一リン酸(AMP)、及びグアノシン三リン酸(GTP)の安定構造と電子状態を、密度汎関数法に基づく高精度分子軌道計算により解析した。さらに、これらの分子とMg2+の複合体の安定構造と電子状態を解析し、ATPとMg2+の結合が最も強く、Mg-ATP複合体が加水分解しやすいことを明らかにした。
  • DNA副溝内の水和水がHOMOに与える影響
    塚本 貴志, Yasuyuki Ishikawa, 夏目 貴行, 出立 兼一, Marius J Vilkas, 栗田 典之
    2006 年 7 巻 p. 190-200
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/11/23
    ジャーナル フリー
    本研究では、DNAへの水和がDNAの電子状態、特に、DNA中の電荷移動に関係するフロンティア分子軌道の空間分布にどのような影響を与えるかを明らかにする目的で、中性子回折により得られた水和水を含むB型DNAに対し、密度汎関数法に基づくAb initio 分子軌道(MO)計算を行った。その結果、DNAの副溝内に水素結合する水分子に、ホール移動に関係するHOMO周辺のMOが分布することを明らかにした。従って、DNAの副溝への水分子の水素結合により、DNA中のホール移動の経路が変化する可能性がある。
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