Journal of Computer Aided Chemistry
Online ISSN : 1345-8647
ISSN-L : 1345-8647
8 巻
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  • 岩淵 真悟, 中川 智彦, 中村 春彦, 山口 蓉子, 那須 民江, 栗田 典之
    2007 年 8 巻 p. 1-11
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/01/18
    ジャーナル フリー
    ペルオキシゾーム増殖剤活性化受容体(Peroxisome proliferator-activated receptor : PPAR)は、リガンド依存的転写因子であり、最近の医学的研究により、多くの病気に関与することが明らかになっている。また、プラスチック類の可塑剤として使用されるフタル酸ジ-2-エチルヘキシル(DEHP)などのフタル酸エステル類は、PPARを誘導し、様々な毒性を発揮することが生理医学的研究により分かっている。本研究では、PPARのサブタイプであるPPARαとプラスチック可塑剤の特異的相互作用機構を原子・電子レベルで解明することを目的とし、PPARαとフタル酸エステル類及びアジピン酸エステルとの複合体の安定構造を、古典分子力場AMBERを用いて求めた。また、安定構造に対し、半経験的分子軌道法MOPACを用いて電子状態を計算した。これらの結果を基に、PPARαとフタル酸エステル類及びアジピン酸エステルの結合特性を解析し、マウスを用いた実験結果と比較した。
  • Ethyl Methacrylate 及び Benzyl Methacylateへの適用
    堀 憲次, 貞富 博喬, 岡野 克彦, 隅本 倫徳, 宮本 敦夫, 林 里織, 山本 豪紀
    2007 年 8 巻 p. 12-18
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/01/18
    ジャーナル フリー
    標的化合物の合成経路を創出する情報化学的手法を用いた合成経路設計プログラムと、化学反応の機構解明に有力な手段である計算化学との融合による合成経路設計支援システムの開発を目指し、KOSP および TOPS から導出されたメタクリル酸エステル合成経路の理論的・実験的検証を行った。KOSP および TOPS から導出されたメタクリル酸エステルの合成経路のうち、Favorskii 転位、Horner-Emmons 反応、Eschenmoser 試薬を用いる反応、カルボキシラートの SN2 反応の 4 経路について、B3LYP/6-31G* あるいは、B3LYP/LANL2DZ レベルの密度汎関数理論(DFT)計算により、詳細な反応解析を行った。その結果、Favorskii 転位を経る方法では、より安定な副生成物が得られると予想されたが、その他の 3 経路では遷移状態や活性化エネルギーの値から穏やかな条件下で反応が進行すると評価された。実験的検証を行ったところ、Eschenmoser 試薬を用いた反応では、目的の生成物を得ることはできなかったが、Horner-Emmons 反応およびカルボキシラートの SN2 反応においては、標的化合物が得られ、情報化学的手法により創出された合成経路の評価を、計算化学を用いて行うことの可能性が示された。
  • 千原 秀昭
    2007 年 8 巻 p. 19-40
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/01/31
    ジャーナル フリー
    主として第2次世界大戦後の日本における化学情報活動を世界の化学情報機関の活動,M&A,サービスの変遷と関連づけて概観した.とくに紙媒体から電子媒体への発展およびそれに至る背景についてやや詳しく述べた.現状と近い将来の姿について簡単にふれてある.
  • 金子 弘昌, 荒川 正幹, 船津 公人
    2007 年 8 巻 p. 41-49
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/01/31
    ジャーナル フリー
    本論文では、独立成分分析(ICA)を応用した新たな回帰分析手法を提案し、シンプルで予測精度の高いモデルの構築を目指す。本手法は、前処理として説明変数にICAを適用し独立成分を得た後、PLSにより独立成分と目的変数の間で回帰モデルを構築する手法である。この手法をICA-PLSと呼ぶ。さらに、遺伝的アルゴリズム(GA)を用いてQ2値が最大になるように独立成分を選択し回帰する手法(ICA-GAPLS)を提案する。ICAは、信号処理の分野などで用いられる手法である。複数の音声信号が混合された信号を、複数のセンサーで観測する状況でICAを適用することにより、混合される前の音声信号を精度良く復元することが可能となる。つまりICAとは、複数の説明変数を統計的に独立な成分に分解する手法である。このICAをPLSの前処理として用いることで、PLSと比較して予測精度が向上することがサンプルデータによって確認された。本手法の適用例として、1023個の化合物に関する水溶解度データの解析を行った。PLS、GAPLS、ICA-PLS、ICA-GAPLSを用いてモデルを構築し、それらのモデルの予測性を比較した。PLS、ICA-PLSはともに最適成分数が2であり、それぞれQ2値は0.821、0.854であった。Rpred2値はPLSで0.790、ICA-PLSで0.881となり、前処理としてICAを用いることにより、予測精度の向上が見られた。さらにICA-GAPLSによって得られたモデルの最適成分数は2であり、Rpred2値は0.889であった。ICA-PLSと比較して、より少ない数の独立成分で同程度の予測精度を持つモデルが構築された。
  • 西村 拓朗, 船津 公人
    2007 年 8 巻 p. 50-58
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/03/28
    ジャーナル フリー
    本報では、ガス分離膜モジュールの構造最適化のための評価関数として、数値流体力学(CFD)で得られる計算結果を用いることによって、分離膜モジュールの性能評価を可能とするシミュレーションシステムの提案を行う。CFDを機能拡張し、ガスの膜透過用に対応させたCFDエンジンを用いることにより、分離膜エレメントの集合体であるモジュール構造におけるガス流動状態の把握が可能となり、また、分離膜表面における濃度分極現象を再現するシステムを構築することができた。このシステムを用いることにより、分離膜モジュールの構造パラメータの設計変更に対応したモジュール性能の比較検討が容易となり、実際の装置設計に必要とされる開発期間短縮への貢献が期待できる。
  • 阿部 百合子, 日下部 千尋, 中尾 いずみ, 田中 裕美, 山邊 信一
    2007 年 8 巻 p. 59-68
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/05/10
    ジャーナル フリー
    化学反応に及ぼす溶媒効果は,溶媒の物理的性質である誘電率や溶解パラメータで説明されているが,非プロトン性溶媒とプロトン性溶媒の溶媒効果を同時に説明できない場合が多く生じる。そのため,経験的溶媒パラメータが多数提唱されている。そのなかでGutmann et al. のdonor number (DN)とacceptor number (AN) は溶媒の電子授受性の尺度と考えられている。したがって,溶媒のHOMOおよびLUMOのエネルギー値との間に相関があると見なされ,8種類の溶媒 (DMSO, DMF, AN, Ac, EtOH, MeOH, FA, H2O ) の値がすでに計算されてANとの相関が調べられている。今回,さらにそれらの溶媒を加えて31種類の溶媒についてab initio法によりEHOMOおよびELUMOの値を求めて検討した。その結果,プロトン性溶媒で, ELUMO値が大きくなり,電子受容能が低下しAN 値の間で逆の相関が成立しているのが認められ,予想と反対の結果となった。そこで,31P NMR化学シフトに基づく経験的溶媒パラメータAN値の基準標準物質であるtriethylphosphine oxide(Et3PO)と溶媒(S)の1:1溶媒和構造を半経験的方法とab initio 法で計算を行い,Et3PO のPおよびOの電子電荷分布,P-O距離,Et3POとSの間の水素結合距離を求めた。AN値は溶液(溶媒(S))中で得られた値であり,気相中の計算結果との比較は興味が持たれる。溶媒は非プロトン性溶媒とプロトン性溶媒に大別されるが,さらに極性の大小により分けられる。AN値が10以下の溶媒は極性の小さい非プロトン性溶媒,10から20までの間に極性の大きい非プロトン性溶媒,20以上に極性を持つプロトン性溶媒が位置している。したがって,各グループからよく使用される溶媒を20種類選択した。その結果,極性の小さい非プロトン性溶媒と水以外のプロトン性溶媒は,ほぼ1:1溶媒和錯体で相関関係(R=0.79-0.88)がよく,溶液中においても気相計算から得られた構造に基づくことが示唆された。一方,10から20までの間の非プロトン性極性溶媒と54.8の水がAN値との相関関係から大きくずれた。10から20までの非プロトン性極性溶媒(DMF,DMA, DMSO 等)は双極子モーメントが大きく,溶媒の液体構造が発達した構造 (aggregation) を形成している。また,水は水素結合形成による液体構造(cluster)を形成している。したがって,これらの溶媒中では,aggregationまたはcluster 化した複数の溶媒分子が溶媒和に関与しており,このことがずれの原因であると見なされる。
  • 池永 裕, 花木 美紗, 隅本 倫徳, 椎木 弘, 長岡 勉, 堀 憲次
    2007 年 8 巻 p. 69-74
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/06/07
    ジャーナル フリー
    キャピラリー電気泳動(Capillary Electrophoresis、CE)の分離モードの一つであるミセル動電クロマトグラフィー(Micellar Electrokinetic Chromatography、MEKC)は有機化合物の光学異性体分離を行うことが可能である。その分離機構には泳動液中のミセルと測定試料の疎水的相互作用の違いが関与していると考えられている。しかしながら、分離機構に関与しているパラメータを統計的手法を用いて解析し、分離に重要なパラメータを特定することは、これまで行われていない。本研究では、界面活性剤として4種類の胆汁酸類、コール酸(CA)、タウロコール酸(TCA)、ケノデオキシコール酸(CDCA)、デオキシコール酸(DCA)を用いて、MEKCによる11種類のアミノ酸の光学異性体分離を行い、得られた結果から分離度(Rs)を算出した。全ての胆汁酸類において、アミノ酸の物性値や実験条件などの6種類の値を説明変数とし、算出したRsを目的変数とするGA-PLS解析を行い、Rsに影響を与えるパラメータについて検討を行った。その結果、予想通り全ての系においてアミノ酸の疎水性度(Hi)が選択された。この結果は、疎水的相互作用が関与していることが統計的に証明されたことを示している。しかしながら、CDCA、DCAを用いた実験結果は、6変数から選択された4または3変数を用いることでモデル化可能であったが、CA、TCAにおいてはそれらのRsを説明できなかった。これは、CDCA、DCAよりも親水性の官能基を多く持つCA、TCAでは、疎水的相互作用が弱く、6変数以外の他のパラメータの関与が大きいためであると考えられる。
  • 永瀬 圭良, 小林 浩, 永田 昇, 山本 史雄, 夏目 貴行, 出立 兼一, 塚本 貴志, 栗田 典之
    2007 年 8 巻 p. 75-84
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/06/07
    ジャーナル フリー
    癌細胞の浸潤には様々な蛋白質分解酵素が関与している。本研究では、これらの酵素の役割を明確にするため、細胞シミュレータ E-CELL を用いて、癌浸潤機構のモデルを新たに開発した。このモデルを用いて、5種類の癌細胞の浸潤特性を解析し、実験結果と定性的に一致する結果を得た。その結果、癌細胞の浸潤には、癌細胞が産生する urokinase-type plasminogen activator ( uPA )と癌細胞膜上に存在する活性型受容体 uPA receptor の結合が重要であることが、明らかになった。
  • 仙石 康雄, 宮原 忍, 若林 一, 関野 秀男
    2007 年 8 巻 p. 85-91
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/08/30
    ジャーナル フリー
    生体高分子などの巨大系を第一原理計算の精度で高速に計算する近似法の1つに Fragment MO (FMO) 法がある。FMO 法では、分子をフラグメントに切り分けて計算することで、従来の第一原理計算では計算機資源や時間の問題から計算自体が困難な巨大系の全エネルギー計算が可能である。近年の先行研究により、この近似法がエネルギーだけでなく分極率などの分子物性においても十分な精度で計算可能であることが証明されつつある。生体高分子における諸物性の物理化学的測定が可能になってきた現在において、シミュレーションによるその分光学的解析や予測がより重要な意味を持つと考えられる。本研究では、系のエネルギーに加え、IR、ラマンという分光学的基本スペクトルを決定する双極子、分極率の各物性とその空間微分について FMO 法による計算を行い、これらの物性においても FMO 法が有効な近似法であることを紹介する。
  • 西村 拓朗, 船津 公人
    2007 年 8 巻 p. 92-102
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/08/30
    ジャーナル フリー
    ガスの膜透過現象を扱えるように拡張された数値流体力学(CFD)による、分離膜モジュールの性能シミュレーションシステムを開発した。このシステムでは、分離膜面積に依存した性能予測だけではなく、分離膜表面での濃度分極や、モジュール内部のガスの流動状態を反映させた性能評価により、分離膜モジュールの構造パラメータによる分離モジュールの性能比較が可能となった。その結果、分離膜モジュールの分離性能は、分離膜エレメントの配置パターンの影響が大きいことが明らかとなり、分離膜面積が比較的小さい場合でも、分離モジュールの体積を小さくコンパクトにした分離モジュールの中に、分離効率に優れたモジュールが存在することを確認した。さらに、分離エレメントの太さと分離エレメントの配置間隔の関係が、分離モジュールの性能に及ぼす影響も明らかとなった。
  • 中島 基樹, 櫻谷 祐企, 野口 良行, 山田 隼, 堀 憲次
    2007 年 8 巻 p. 103-113
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/09/20
    ジャーナル フリー
    我々は,化審法における生分解性予測に新たな視点を加えるため,その変化物生成の主たる要因の一つである加水分解予測に,量子化学計算による反応解析から得られる活性化エネルギーを判断指標の一つとして用いることを検討している。この過程において,MOPACベースでの平易な活性化エネルギーの算出を可能とするインタフェースとして,加水分解予測システムを開発した。このシステムでは,遷移状態付近の構造探索を効率的に行うために,過去の計算結果を利用する置換基法を,加水分解反応に特化して応用しシステム化した。その結果,エステル酸加水分解反応について,市販の量子化学計算ソフトウェアのみを用いた反応解析に比べ,大幅に計算時間を短縮しつつ,MOPACベースでの活性化エネルギー計算結果が得られることが判明した。今後,DFT計算やab initio MO計算といった上位の計算手法との併用も視野に入れ,生分解性予測へ活用することを検討している。
  • 松田  弘幸, 山本  博志, 栗原  清文, 栃木  勝己
    2007 年 8 巻 p. 114-127
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/11/03
    ジャーナル フリー
    イオン液体のイオン伝導度ならびに粘度の推算モデルを,多項式展開法にグループ寄与法を組み合わせて構築した.本研究で今回構築したモデルは,カチオンでは4級アミン,ピペリジン,ピリジン,イミダゾール,ピラゾールに,アニオンについてはTFSI, Br, Cl, PF6, BF4, CF3SO3, CF3BF3, and C2F5BF3にそれぞれ適用可能である.モデル中のパラメータ決定を行うために遺伝的アルゴリズム法を適用した.計算結果はイオン伝導度および粘度ともに良好な相関精度をえた.構築したモデルの予測精度を検証することを目的として,パラメータ決定に用いなかったデータを対象に推算値と実測値との比較を行った.
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