日本補完代替医療学会誌
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11 巻, 1 号
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総説
原著
  • 高橋 恒久, 佐藤 隆司, 渡辺 一弘
    2014 年 11 巻 1 号 p. 9-15
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/05/01
    ジャーナル フリー
    機能性食品素材として利用されるエゾウコギ Acanthopanax senticosus Harms の乾燥エキス (ASE) の CYP2C9 に及ぼす影響について検討した.ヒト小腸および肝ミクロソームを用いた実験より,ジクロフェナク 4'-水酸化活性は ASE の添加により用量依存的に有意に低下し,その阻害形式は非競合的であった.また,ラットに 50~400 mg/kg の ASE を経口投与したときの肝ジクロフェナク 4'-水酸化活性に及ぼす影響を検討したところ,活性値は用量依存的に低下し,200 mg/kg 以上で有意となった.その後,同活性は投与後 8 時間でほぼ投与前のレベルにまで回復した.さらに,CYP2C9 の基質であるトルブタミドをラットに経口投与し,トルブタミドの血中濃度に及ぼす ASE の影響を検討した.単独投与群に比べ,ASE 400 mg/kg の併用群では投与 0–6 時間のトルブタミドの AUC が約 165%上昇した.
    以上より,ASE あるいは代謝物を含む ASE に由来する成分が消化管から吸収され,小腸の CYP2C9 を阻害すると共に,肝へ移行して肝 CYP2C9 活性をも阻害していることが示唆された.
  • 高橋 恒久, 五十嵐 将樹, 佐藤 隆司, 渡辺 一弘
    2014 年 11 巻 1 号 p. 17-24
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/05/01
    ジャーナル フリー
    機能性食品素材として利用されるエゾウコギ Acanthopanax senticosus Harms に含有することが知られている 14 種の各成分について,ヒト肝ミクロソームを酵素源として CYP2C9 および CYP3A4 活性に与える影響を検討した.その結果,セサミン,ケルセチンが両酵素活性を,ケルシトリンが CYP3A4 活性を強く阻害した.CYP2C9 活性に対するセサミンおよびケルセチンの 50%阻害濃度は,エゾウコギ乾燥エキス (ASE) に対しそれぞれ約 124 倍および 59 倍,CYP3A4 活性に対するセサミン,ケルセチンおよびケルシトリンは,それぞれ約 427 倍,約 135 倍および 22 倍低い値を示した.いずれの成分も非競合的に両酵素を阻害した.各成分の ASE 中の含量を考慮すると,エゾウコギの薬物代謝酵素に対する阻害は,これらの含有成分あるいは含有成分の代謝物を含む複数の成分の相加若しくは相乗作用であることが推察された.
  • 五十嵐 将樹, 佐藤 隆司, 山下 浩, 渡辺 一弘
    2014 年 11 巻 1 号 p. 25-33
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/05/01
    ジャーナル フリー
    紅茶葉抽出物 (JAT) の α-グルコシターゼ活性に及ぼす影響を検討した.JAT は酵母由来 α-グルコシターゼ活性を有意に,かつ濃度依存的に阻害し,その程度は食後過血糖改善薬,アカルボース (ACA) よりも強かった.また,2 型糖尿病モデル動物,db/db マウスに JAT (500 mg/kg) および ACA(同 100)を経口投与し,直ちにスクロースを負荷 (2 g/kg) した後,経時的に血糖値及びインスリン値を測定した.その結果,両群の血糖値は 30 分および 60 分後で有意に低下し,インスリン値は変化を示さなかった.JAT および ACA を経口投与し,スクロース負荷後に最も高い血糖値を示した 30 分後の摘出小腸スクラーゼ活性は,いずれも無処理群に対し有意に低下した.さらに,5 週間の JAT および ACA の混餌投与では,いずれも血糖値,インスリン値等に影響を及ぼさなかった.以上より,JAT はインスリン値に影響することなく,小腸 α-グルコシターゼ活性を阻害することにより食後高血糖を是正する有用な機能性食材と考えられた.
  • 石原 克之, 關谷 暁子, 上馬塲 和夫, 川島 拓也, 中出 祐介, 許 鳳浩, 麦田 裕之, 佐久間 塁, 古賀 秀徳, 川端 克司, ...
    2014 年 11 巻 1 号 p. 35-40
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/05/01
    ジャーナル フリー
    じゃがいもには葉酸が含まれており,じゃがいもを原料とするポテトチップスには,フライ調理することにより濃縮され,じゃがいも以上に葉酸が含まれている.葉酸は胎児の先天性疾患の予防から若い女性へ積極的な摂取が勧められているビタミンである.また葉酸は,循環器疾患の危険因子として知られるホモシステインの血中濃度を下げる効果が期待されている.そこでポテトチップスの経口摂取におけるヒトへの葉酸の吸収および血中ホモシステイン濃度について検討した.
    その結果,ポテトチップス摂取後の血清中の葉酸濃度は摂取 1,3,6 時間後に有意に増加し,摂取 3 時間後にはビタミン B6 も有意に増加した.また,血漿ホモシステイン濃度は摂取 6 時間後に有意に減少した.
  • 濱舘 直史, 瀬戸 加代子, 山本 哲郎, 山口 英世, 山本 悦司, 神谷 有久理, 矢澤 一良
    2014 年 11 巻 1 号 p. 41-47
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/05/01
    ジャーナル フリー
    柿抽出物含有食品(KE 食品;1 回摂取量:柿抽出物として 150 mg)の健常成人における口腔ガス中の主要口臭原因物質とされる 3 種の揮発性硫黄化合物 (VSC),すなわち硫化水素 (H2S),メチルメルカプタン (CH3SH) およびジメチルサルファイド (CH3SCH3),の濃度に及ぼす効果を検討する試験(試験 1)および糞便臭の原因となる VSC として知られる CH3SH および H2S の糞便中濃度ならびに自覚的糞便臭に対する効果を検討する試験(試験 2),を各々実施した.11 名の被験者を対象として試験 1 においては,KE 食品の単回摂取によって口腔ガス中の CH3SCH3 の濃度が有意に低下することが示された.14 名の被験者を用いた試験 2 においては,KE 食品の 1 日 1 回,7 日間摂取は,CH3SH および H2S の糞便中濃度を有意なレベルまでは低下させなかったものの,自覚的糞便臭を有意に改善した.以上の成績から,口臭ならびに糞便臭に対する KE 食品の有益な効果が示唆された.
  • 高田 艶子, 岩永 誠
    2014 年 11 巻 1 号 p. 49-55
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/05/01
    ジャーナル フリー
    本研究は,認知症高齢者を対象として,補完代替医療 (CAM) としての音楽療法がその行動・心理症状 (behavioral and psychological symptoms of dementia: BPSD) のうちアパシーに与える効果を検証することを目的とした.平均年齢 85.9 歳の施設の認知症高齢者 20 名に,なじみの音楽による集団音楽療法を隔週で 8 ヶ月間,合計 10 回実施した.その結果,対象者全体では「情動反応」領域の歌唱,リズム,身体運動に有意な改善が認められ,「社会性」領域の集中力に改善傾向が認められた.アルツハイマー型ではリズム,集中力の改善および歌唱と参加意欲に改善傾向が認められたが,脳血管型では改善が認められなかった.このことから,音楽療法は認知症高齢者,特にアルツハイマー型のアパシーの側面に見られる BPSD 軽減に役立ち,QOL の向上に結びつくものと考えられ,薬物療法の補完代替医療法として有効であることが示唆された.
  • 神内 伸也, 新藤 由梨, 内海 有香, 岩田 直洋, 岡﨑 真理, 鈴木 史子, 飯塚 博, 浅野 哲, 松崎 広和, 日比 ...
    2014 年 11 巻 1 号 p. 57-66
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/05/01
    ジャーナル フリー
    【目的】霊芝菌糸体培養培地抽出物 (WER) の長期摂取による 2 型糖尿病マウスの血糖上昇抑制作用を明らかにするために,本研究では肝臓での糖質代謝について検討した.
    【方法】KK-Ay マウスに WER を混合した飼料を自由摂取させ,8 週間飼育した.飼育終了後の肝臓における糖代謝関連酵素の発現量および酵素活性を解析した.さらに,グリコーゲン量を測定するとともに,GLUT2 発現量および AMP キナーゼ (AMPK),グリコーゲン合成酵素キナーゼ 3β の活性化の有無を検討した.
    【結果】WER は,糖新生酵素のグルコース-6-ホスファターゼ,ホスホエノールピルビン酸カルボキシキナーゼ mRNA 量および酵素活性をともに減少させ,解糖系酵素であるグルコキナーゼを増加させた.さらに,GLUT2 の発現量を亢進させるとともに,グリコーゲン合成酵素を活性化してグリコーゲン量を増加させ,加えて AMPK を活性化することから,WER は肝臓での糖新生を抑制するとともに解糖系およびグリコーゲン合成を活性化させ,さらに肝臓への糖の輸送能を亢進して血糖上昇を抑制するものと考えられた.
  • 濱舘 直史, 瀬戸 加代子, 矢澤 一良
    2014 年 11 巻 1 号 p. 67-74
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/05/01
    ジャーナル フリー
    黒酢は,日本をはじめとする東アジアを中心に伝統のある発酵食品であり,様々な健康機能を持っていることが報告されている.本試験では,軽度肥満成人に黒酢含有食品を 12 週間摂取させるとともに毎日 10 分間程度の運動を併用させることで,体脂肪の減少効果およびエネルギー代謝への効果について,プラセボ食品を対照としたダブルブラインド法にて検討した.その結果,黒酢含有食品摂取群では,ヒップ周囲長の減少傾向,消費エネルギーが脂肪メインになるとともに運動時のエネルギー消費量が大きくなる傾向,脂肪量が多いほど脂肪量を減少させる効果が大きいことが示された.また,12 週間の黒酢含有食品の安全性について問題は見られず,安全に摂取できる食品であることが確認された.以上のことから,適切な運動と黒酢含有食品の摂取は,メタボリックシンドロームの改善に寄与することが示唆された.
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