日本補完代替医療学会誌
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9 巻, 2 号
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総説
  • 鈴木 克彦, 秋本 崇之
    2012 年 9 巻 2 号 p. 69-74
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/10/24
    ジャーナル フリー
    近年の microRNA (miRNA) の発見と,血中に miRNA が安定に存在しているという知見は,バイオマーカーとしての miRNA の可能性を示した.さらに最近,血中に分泌された miRNA が他所にて遺伝子発現を抑制しうると報告されるに及び,従来のホルモンやサイトカインを中心とした細胞間情報伝達の概念は大きく変更を余儀なくされる可能性がある.そこで本総説では,血中 miRNA の種類や機能について概説し,バイオマーカーとしての miRNA に関する最新の知見をまとめ,身体運動の影響を含めたストレス負荷条件における変化や予測される機能に関して概説する.
原著
  • 大野木 宏, 速水 祥子, 工藤 庸子, 水谷 滋利, 榎 竜嗣
    2012 年 9 巻 2 号 p. 75-82
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/10/24
    ジャーナル フリー
    明日葉 (Angelica keiskei) の安全性を評価するために,微生物を用いた復帰突然変異試験,ラットへの単回および 13 週反復経口投与試験を実施した.復帰突然変異試験では代謝の有無に関わらず試験に用いた 5 菌株全てにおいて明日葉抽出物は陰性であった.ラットへの単回経口投与試験では,3,500 mg/kg の投与量において死亡例はみられず一般状態,体重の異常は認められなかった.13 週反復経口投与試験では,875 および 1,750 mg/kg/日の投与量において死亡例はみられず一般状態,体重,摂餌量,眼科的検査,血液生化学的検査,血液学的検査,剖検,器官重量および病理組織学的検査において異常は認められなかった.以上の結果から,明日葉は安全な食品素材であることが示された.
  • 大野木 宏, 速水 祥子, 工藤 庸子, 榎 竜嗣
    2012 年 9 巻 2 号 p. 83-88
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/10/24
    ジャーナル フリー
    明日葉青汁の過剰摂取時の安全性を健常人ならびに境界域糖尿病者を対象に評価した.24 名の被験者は明日葉青汁を毎日 31.5 g (3.5 g/包,9 包),4 週間摂取した.摂取期間(摂取前,摂取 2 週目,摂取 4 週目)と 2 週間の後観察期間において,理学的検査,血液検査,尿検査,診察・問診を行った.その結果,いずれの検査においても臨床上問題となる変動は見られなかった.また,被験食に起因し臨床上問題となる有害事象も認められなかった.以上の結果から,明日葉青汁はその過剰摂取時において安全であることが示された.
  • 鈴木 克彦, 駒場 優太, 泊 美樹, 鈴木 洋子, 菅間 薫, 高橋 将記, 三浦 茂樹, 吉岡 浩, 森 有一
    2012 年 9 巻 2 号 p. 89-95
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/10/24
    ジャーナル フリー
    今日,活性酸素の身体への影響は重大な関心事となっている.活性酸素の過剰産生は酸化ストレスとなり,生活習慣病や発がんに関与するとされている.一方,抗酸化作用を有する様々な健康食品が普及しているが,より生体に近い条件での機能性評価法が求められている.そこで本研究では,新規好中球機能検査法を用いて植物抽出物の抗酸化作用を比較検討した.植物抽出物には,レモンバーベナ抽出物,緑茶抽出物,ツバキ種子抽出物,アンチアレーゼ®を用いた.濃度調整した各種植物抽出物と血液,ルミノールを混和し,熱可逆ハイドロゲルを用いてルミノール依存性化学発光により好中球の活性酸素産生量を測定した.また,活性酸素産生能の測定後,ハイドロゲル内に浸潤した細胞数を計測し遊走能を評価した.その結果,レモンバーベナ抽出物,緑茶抽出物は 1 mg/ml の添加条件において活性酸素産生量を有意に抑制し,抗酸化作用をもつことが示唆された.従来の好中球機能測定法は,血液から好中球のみを単離する必要があったため測定に時間がかかり,好中球の活性が変化してしまうという問題もあったが,本検査法では採血直後に全血のまま測定を開始することができるため,炎症や酸化ストレスの状態を評価するにとどまらず,抗酸化物質の効果などを事前評価するスクリーニング系として有用と考えられた.
  • 丸岡 弘, 藤井 健志
    2012 年 9 巻 2 号 p. 97-105
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/10/24
    ジャーナル フリー
    目的:老化促進モデルマウスにおける長期間の還元型コエンザイム Q10 (QH) 摂取と運動トレーニング (EX) が老化や運動能力,酸化ストレス防御系におよぼす影響について検討した.
    方法: 対象は老化促進モデルマウス 50 匹とし,無作為に QH 摂取群,QH 摂取+EX 群,EX 群,コントロール群の 4 群に区分した.研究は 8 週齢から開始し,QH 摂取を 12 ヶ月間継続した.酸化ストレス防御系は研究開始時と QH 摂取 12 ヶ月後 (12M) の各時点,走行時間と老化度評点,体重を研究開始時,QH 摂取 6 ヶ月後 (6M),12M の各時点で測定した.酸化ストレス防御系は酸化ストレス度 (d-ROM test) と抗酸化力 (BAP test) を測定した.
    結果:QH 摂取と EX の併用において老化度評点は高齢期に増加抑制,走行時間では減少抑制を示した.酸化ストレス防御系は酸化ストレス度の上昇による潜在的抗酸化能の減少を認めた.
    結論:QH 摂取と EX の併用は老化遅延や運動能力の減少抑制,潜在的抗酸化能の減少が示された.
  • 山﨑 永理, 砂川 正隆, 沼口 佳世, 時田 江里香, 池谷 洋一, 北村 敦子, 世良田 紀幸, 石川 慎太郎, 中西 孝 ...
    2012 年 9 巻 2 号 p. 107-113
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/10/24
    ジャーナル フリー
    目的:ポリフェノールの一種であるロズマリン酸は,抗アレルギー作用,抗酸化作用,抗炎症作用などを有することが報告されている.本研究では,アレルギー性鼻炎 (AR) に対するロズマリン酸の有効性について検討した.
    方法:TDI 誘発による AR モデルラットを作製し,ロズマリン酸を投与した.鼻過敏症状の観察ならびに,アレルギー症状の誘発に関与する鼻汁中の Substance P (SP), calcitonin gene-related peptide (CGRP), nerve growth factor (NGF) の濃度を測定した.
    結果:ロズマリン酸の投与により鼻過敏症状は有意に抑制された.また鼻汁中 NGF の分泌には影響はなかったが,神経ペプチドである SP, CGRP の分泌は有意に抑制された.
    結論:ロズマリン酸が AR に対して有効であり,そこには SP, CGRP の分泌抑制が関与していることが示唆された.
  • 壬生 茉莉衣, 久保田 優, 辻林 明子, 東山 幸恵, 永井 亜矢子, 坂井 三里, 坂下 清一
    2012 年 9 巻 2 号 p. 115-120
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/10/24
    ジャーナル フリー
    血圧,空腹時血糖値,LDL-C の生活習慣病関連の臨床検査値や「太り気味である」「疲れやすい」「抵抗力が弱い」「骨・関節が心配」の主観的健康把握を中心に検診受診者のサプリメント使用の背景を考察した.検診受診者 1108 名(30~79 歳)に過去 1 ヶ月間のサプリメント使用や主観的健康把握に関する自記式アンケートを実施した.喫煙状況,身長,体重,血圧,空腹時血糖値,LDL-C および服薬の有無については健診時のデータを用いた.サプリメント使用者は 336 名(30.3%)で有意に女性に高かった.全体を「サプリメント使用群」と「サプリメント非使用群」に分けてロジスティック回帰分析を行った所,女性,40 歳以上,Body mass index が正常より高いか低い,血圧・空腹時血糖値・LDL-C のすべてが正常値である者においてサプリメント使用率が高いことが分かった.個々の臨床検査値や主観的健康把握は使用率との関連は無かった.
  • 織田 浩嗣, 中野 学, 若林 裕之, 山内 恒治, 樋田 知宏, 岩附 慧二, 松本 哲哉
    2012 年 9 巻 2 号 p. 121-128
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/10/24
    ジャーナル フリー
    ラクトフェリン (LF) は乳(特に初乳),涙,唾液等の外分泌液に存在し,抗微生物作用や免疫調節作用等を示すことから,生体防御因子として作用していると考えられ,これまでに各種ウィルスへの感染防御作用が報告されている.今回,牛乳由来の LF の継続摂取が風邪・胃腸炎へ及ぼす影響を評価することを目的として,アンケート調査を実施した.健常成人女性 398 名を摂取群(199 名)と非摂取群(199 名)に分け,摂取群は LF 含有食品を 3 ヶ月間摂取した.その結果,風邪等症状(喉の痛み,咳,痰,鼻水・鼻詰まりの少なくとも 1 つ)と胃腸炎症状(腹痛,下痢,食欲不振の少なくとも 1 つ)を発症した人数は,3 ヶ月目において摂取群で非摂取群に対して有意に少なかった.このことから,LF 含有食品の継続摂取は,風邪等症状や胃腸炎症状の発症を抑制する上で有効である可能性が示唆された.
  • 西 正人, 榎本 俊樹, 坂井 良輔
    2012 年 9 巻 2 号 p. 129-135
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/10/24
    ジャーナル フリー
    【目的】オカラの殆どは産業廃棄物として処理されており,食用として利用されるのはごく僅かである.オカラを亜臨界水と反応させ,低分子化,可溶化することにより風味や食感が改善される.亜臨界水反応後のオカラの付加価値を明らかにするために抗腫瘍効果と抗プロモーター活性について検討した.
    【方法】オカラピューレの調製は 30 MPa, 340℃の亜臨界水条件下で行った.抗プロモーター活性は JB6 Cl 41 細胞を用いたコロニー法及び 3-3 MTT (3-(4,5-dimethylthiazol-2-yl)-2,5-diphenyl tetrazolium bromide) 法により評価した.マウス結腸がん細胞を移植したマウスの左足蹠高および移植後のマウスの生存日数と体重を測定することにより,抗腫瘍性を検討した.
    【結果】オカラピューレ DMSO 抽出液は JB6 Cl 41 細胞の EGF で誘導したコロニー形成を抑制した.実験開始 10 日目から 20 日目の期間では,結腸がん細胞を移植したマウスは,オカラピューレ群で他の群より生存数が多い傾向が見られた.さらに 22 日目以降では,オカラピューレ群で他の群より,生存期間が長くなる傾向が見られた.
    【結論】オカラピューレには未処理のオカラにはない,抗腫瘍性,抗プロモーター活性を有する可能性のある機能性素材としての発展が期待できる.
  • ―日中作業後休息時における使用―
    梶本 修身, 白市 幸茂, 大塚 雅生, 門脇 孝徳, 杉野 友啓
    2012 年 9 巻 2 号 p. 137-147
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/10/24
    ジャーナル フリー
    本試験では,4 時間の疲労負荷作業後の休息時において,新開発 LED 照明を使用した場合における室内環境快適性について検証するため,健常成人男女を対象としたランダム化 2 試験区クロスオーバー試験を実施した.
    その結果,新開発 LED 照明は従来 LED 照明との比較において,休息時の適切な照度および色温度の環境を作り,室内環境快適性を向上させることが確認された.それらの作用機序の 1 つとして,自律神経機能の調節作用が考えられた.これらのことから,新開発 LED 照明は室内環境快適性を高める有用な機器であると考えられた.
  • 鈴木 信孝, 上馬塲 和夫, 宋 函, 滝本 裕子, 鈴木 里芳, 川端 豊慈樹, 大野木 宏, 仲井 培雄
    2012 年 9 巻 2 号 p. 149-155
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/10/24
    ジャーナル フリー
    ガゴメ昆布フコイダンの高年齢者に対する安全性と免疫機能に対する効果をオープン試験により評価した.高年齢者(69.4 ± 6.9 歳)18 名(男性 7 名,女性 11 名)にガゴメ昆布フコイダン(1 日摂取量 50 mg)と乳酸菌を配合した食品を 8 週間摂取してもらい,摂取前と摂取 4 週間後および摂取 8 週間後に血液検査,尿検査,QOL 調査,免疫機能検査を行った.その結果,いずれの検査においても臨床上問題となる変動は見られなかった.また,試験食品に起因し臨床上問題となる有害事象も認められなかった.免疫機能検査においては,血中の IgE の有意な低下が認められた.以上の結果から,ガゴメ昆布フコイダンは高年齢者に対し安全性の高い機能性食品素材であることが示された.
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