子どものこころと脳の発達
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巻頭言
総説
  • 岡 雄一郎, 佐藤 真
    2021 年 12 巻 1 号 p. 3-9
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/10/14
    ジャーナル フリー

    発達期の脳内において,様々な外的因子の影響を受けつつも,軸索の伸長やシナプスの形成といった過程が調和を保ちながら機能的な神経回路網が形成されることが,健やかなこころの育ちの基盤となる.我々の研究室では基礎的な回路形成の研究と共に,(1)巧緻運動に関わる回路の発達,(2)シナプス部における情報伝達に関わる仕組み,(3)母親のストレスと子どもの脳発達,という臨床とも関連の深い3つのテーマに取り組んでいる.本稿ではそれぞれの概略を冒頭で短く紹介し,残りの紙面で(1)について最近発表した論文の内容を詳しく紹介する.

  • 吉村 武, 三好 耕, 天野 元揮, 片山 泰一
    2021 年 12 巻 1 号 p. 10-16
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/10/14
    ジャーナル フリー

    近年,精神・神経疾患における発症リスクに関わる脆弱性因子が多数報告されるようになってきた.我々は脳の発達と精神・神経疾患発症メカニズムを分子レベルで解明することを目的としている.これらの研究を通じて脳と心の発達を科学的基盤に基づいて理解し,子どものこころの健全な発達を支援していく.我々が取り組む4つの主な課題“1)神経軸索の根元(軸索起始部)の形成と破綻,2)脳発達におけるタンパク質アルギニンメチル化修飾の役割,3)シナプスにおけるセロトニン再取り込みの制御機構,4)細胞のアンテナ(一次繊毛)と自閉スペクトラム症の病態”について紹介する.

  • 早田 敦子, 勢力 薫, 中澤 敬信, 橋本 均
    2021 年 12 巻 1 号 p. 17-25
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/10/14
    ジャーナル フリー

    近年,発達障がいの有病率は世界的に増加しており,発症メカニズムの解明や新しい治療法の開発が医学的・社会的に急務となっている.私たちは神経発達障がいのモデルとなりうる動物を作製し,その発症に関わるメカニズムの解明を目指している.本稿では,脳神経機能のメカニズムを理解するために私たちが開発した高速・高精細の全脳イメージング装置であるFASTシステムを用いた神経ネットワーク解析や神経活動のイメージング解析をはじめ,ASD患者などにおいてde novo変異の数が最も多く報告されているPOGZ遺伝子に注目した患者由来iPS細胞を疾患モデル細胞とした神経機能解析,変異導入マウスを用いた精神行動の解析など,さまざまな研究ツールを組み合わせて行ってきた研究の一部について紹介する.

  • 田熊 一敞
    2021 年 12 巻 1 号 p. 26-33
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/10/14
    ジャーナル フリー

    自閉スペクトラム症(ASD)は,社会性・コミュニケーションの障害,興味の限定・反復的な常同行動を特徴とする発達障害の1つである.近年,母親の妊娠中のウイルス感染,薬物摂取やビタミン不足などによってASDの発症リスクが増大することが示され,薬物摂取に関しては,2000年代後半に「妊娠中の抗てんかん薬服用により出生児のASD発症リスクが増大する」との臨床報告がなされている.本稿では,著者の研究グループがこの臨床知見に着目して作製・確立した“バルプロ酸の胎内曝露によるASDモデルマウス”において見いだした知見を中心として概説し,ASDの病態解明ならびに薬物療法の開発に向けた今後の展望と“基礎研究”の課題について考察する.

  • 服部 剛志, 堀 修
    2021 年 12 巻 1 号 p. 34-40
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/10/14
    ジャーナル フリー

    自閉症病態の研究においては,主に神経細胞の異常が注目されてきたが,近年,グリア細胞(脳における神経以外の細胞)の関与が明らかとなってきた.我々は,自閉症病態におけるグリア細胞の役割を明らかにする為に,グリア細胞における自閉症関連分子CD38の機能解析を行っている.本稿では,CD38がグリア細胞の1種であるアストロサイトに強く発現し,グリア細胞の発達に関与するだけでなく,脳の中の炎症である神経炎症にも重要な役割を持つことを紹介する.

  • 目黒 牧子, 堀家 慎一
    2021 年 12 巻 1 号 p. 41-46
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/10/14
    ジャーナル フリー

    ダウン症をはじめ,13トリソミー,18トリソミー,ターナー症候群など染色体の数の異常による症候群の多くは,その染色体が異なるにも関わらず精神発達遅滞を呈する.また,近年のゲノム解析技術の進歩に伴い,神経発達障害患者において多数のゲノムコピー数の異常が同定されている.これらのことは,遺伝子の核内配置や高次クロマチン構造が調和の取れた健やかな脳の発達に重要であることを示唆している.そこで我々は,人工的に15q重複モデル細胞を樹立することで,遺伝子の核内配置や高次クロマチン構造などエピジェネティクスによるグローバルな遺伝子発現制御の破綻が自閉症の発症にどの様に関与しているのかについて解析を行った.

  • 辻 隆宏, 辻 知陽
    2021 年 12 巻 1 号 p. 47-52
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/10/14
    ジャーナル フリー

    嗅覚系及び,視覚系(網膜)には,バソプレシン陽性細胞が存在する.本稿では,嗅覚系視覚系バソプレシン陽性細胞の役割について我々が得た知見を中心に解説する.モデル動物において,感覚モダリティに焦点を当てた研究は,シナプスから神経ネットワーク,さらには,知覚レベルで社会性行動や情動がどのように調節されているのか,哺乳類共通の原理を明らかにするのに有効である.モデル動物から得た知見は,ヒトの自閉症スペクトラム障害を含む発達障害やその他の精神疾患における感覚過敏や感覚鈍麻,睡眠障害の病態メカニズムの解明につながる.

  • 松﨑 秀夫
    2021 年 12 巻 1 号 p. 53-63
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/10/14
    ジャーナル フリー

    自閉スペクトラム症(ASD)は対人的相互作用やコミュニケーションの困難さ,興味・活動の限定された反復的常同的行動様式などで特徴付けられる神経発達障がいです.近年,ASDの有病率は先進諸国で2%を超えるとされ,様々なアプローチで研究が行われていますが,その病態メカニズムは現在も不明のままで,生物学的に根拠のある診療技法は存在しません.私は福井大学に着任してからモデル動物を用いたASDの基礎研究,ASD診療手段開発を目指した橋渡し研究を進めてきました.

  • 松澤 大輔
    2021 年 12 巻 1 号 p. 64-70
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/10/14
    ジャーナル フリー

    遺伝子DNAが出生後もエピジェネティックな修飾を受けて発現調節されることが注目されている.DNAメチル化はその1つであり,脳内神経組織のDNAメチル化も様々な外部刺激により後天的に変化がもたらされることが知られてきた.近年では精神疾患においてもその影響を示唆する研究が相次いでいるが,不安や恐怖の記憶が症状に関わる不安症関連精神疾患ではエピジェネティックな現象の関与について現在でも知見は多くない.本稿では,不安関連精神疾患で発症脆弱性や治療抵抗性を示す背景へのDNAメチル化の関与を,筆者の教室で得られた結果を紹介しながら論じたい.精神疾患におけるエピジェネティックな機構は,ストレス応答の変化など獲得した行動の次世代への継承にも役割を果たしている可能性もあり,今回そうした可能性を示唆する結果も得られたので紹介する.

  • 川崎 雅子, 坂寄 里紗, 加茂 登志子
    2021 年 12 巻 1 号 p. 71-78
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/10/14
    ジャーナル フリー

    PCIT(Parent-Child Interaction Therapy:親子相互交流療法)は,1970年代に米国で開発されたエビデンスに基づく心理療法である.I-PCIT (Internet-delivered Parent-Child Interaction Therapy:インターネット親子相互交流療法)は,ビデオ会議システムを利用してセラピストが自宅にいる家族に遠隔でセラピーを提供できるようにしたものである.コロナ禍において,特に発達障害児は,外出制限のあるストレスフルな状況下において問題行動が増加しやすく,それに伴い親の育児ストレスの高まりも危惧される.パソコンやタブレット等の日常的デバイスを用いて遠隔リアルタイムコーチングを行うI-PCITは,コロナ禍でも発達障害児とその親への継続的な支援が可能である.また,親が感じる治療への障壁が少ない点や般化のしやすさ等メリットは多く,発展性は高い.

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