Journal of Computer Chemistry, Japan
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10 巻, 4 号
(Special Issue of the 10th Anniversary)
選択された号の論文の12件中1~12を表示しています
巻頭言
寄稿
ハイライト
総合論文
  • 吉村 忠与志
    2011 年 10 巻 4 号 p. 109-114
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/12/31
    ジャーナル フリー
    化学PC研究会を10 年,化学ソフトウェア学会を10年,そして,日本コンピュータ化学会を10年と,化学とコンピュータの学際領域の学術活動を続ける中で,30 年目の節目を迎えている.この30 年間で230万倍の性能が向上して,電卓レベル以下の機能しかもっていなかったコンピュータ創生期から京コンピュータの現状までに発展したコンピュータ環境は,人間社会に無くてはならぬツールとして定着した.これらの学術活動の前半でリーダーシップをとってきた者としてその歩んだ足跡を語り,これからの学術の発展に寄与したい.
研究論文
  • 田辺 和俊, 西田 健次, 鈴木 孝弘
    2011 年 10 巻 4 号 p. 115-121
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/12/31
    ジャーナル フリー
    我々は先に,化学物質の発ガン性を評価するための動物試験に代わる手段として,定量的構造活性相関(QSAR)により多種多様な構造の化学物質の発ガン性を構造から予測するモデルを検討し,同族体群ごとに構築したサポートベクターマシン(SVM)を並列に組み合わせるモデルが約900種の化学物質の発ガン性を80%という高い精度で予測できることを見出した.本報では,このモデルの予測性能をさらに向上させるために,同族体群の中で正解率が他の群に比べて最も低い芳香族N-ニトロソ・ニトロソ・ニトロ群(89物質)の正解率向上を目的として,SVMモデルにおける記述子選択の方法を検討した.相関係数法,F-score法,感度分析法の3手法により選択した記述子を用いて正解率を検討した結果,感度分析法を用いると芳香族N-ニトロソ・ニトロソ・ニトロ群の正解率が前報の70.8%から77.5%に向上し,この方法が記述子選択法として良好な結果を与えることを見出した.
  • 金子 弘昌, 船津 公人
    2011 年 10 巻 4 号 p. 122-130
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/12/31
    ジャーナル フリー
    スペクトル解析やプロセス管理などの分野における回帰分析において,隣接する説明変数Xの間の相関が高いデータを扱う場合に変数を領域単位で選択する試みがなされている.変数領域選択手法の一つであるgenetic algorithm-based wavelength selection (GAWLS) 法により変数領域とその組み合わせを同時に最適化することが可能であるが,モデル構築手法として線型回帰分析手法の一つであるpartial least-squares法が使用されており,Xと目的変数yの間の非線型関係を適切に表現することは困難である.そこで本研究では,変数間に非線型性が存在する場合においても適切な変数領域選択と予測精度の高いモデル構築を同時に達成することを目的として,GAWLSと非線型回帰分析手法の一つであるsupport vector regression (SVR) を組み合わせた新規な変数領域選択手法を開発した (Figure 1).この提案手法をGAWLS-SVR法と呼ぶ.GAWLS法における評価値をSVRモデルのq2値とすることで,SVR法による非線型性の抽出とGAWLS法による領域単位の変数選択が同時に達成できると考えられる.本手法の有効性を確認するため,シミュレーションデータを用いた解析を行った.隣接する変数間の相関の強いXyの間に非線型性がある場合において解析を行った結果,非線型関係が単調増加関数や単調減少関数で表現される場合はGAWLS法により適切に変数選択を行うことが可能であったが,極小値を持つような関数の場合はGAWLS法では対応できなかった.このような場合に提案手法であるGAWLS-SVR法を用いることで,非線型性を考慮した適切な変数選択が達成され,精度と予測性能の高いモデル構築が可能であることを確認した (Table 2, Figure 6).
  • 金子 弘昌, 船津 公人
    2011 年 10 巻 4 号 p. 131-140
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/12/31
    ジャーナル フリー
    生活排水や工場排水を処理し浄化するため,membrane bioreactor (MBR) が広く用いられている.MBR法とは,微生物に排水中の汚濁物質を代謝,消費させ,その後膜によって処理水と活性汚泥を分離する方法である.膜を用いることですべての固形物の流出を阻止できるが,MBRは活性汚泥,難溶性成分,高分子の溶質,コロイド等のファウラントが膜細孔に詰まったり膜に堆積したりする膜のファウリングという問題を抱えている.例えばMBRを定量ろ過運転した場合,このファウリングによる膜抵抗の上昇に伴い膜差圧 (transmembrane pressure, TMP) が上昇してしまう.高いTMPを達成するには多くのエネルギーが必要となるので,ファウラントを除去するための薬品洗浄を定期的に行う必要がある.ただ頻繁な薬品洗浄にはコストがかかるため,適切な時期に洗浄を行わなければならない.そのためMBRにおいては長期的にファウリングを予測する必要があるといえる.そこで本研究では,TMPの上昇と運転条件や水質等のMBRパラメータとの間で統計モデルを構築することを提案した (Figure 1).統計モデル構築手法としては,線型回帰分析手法であるpartial least-squares法と非線型回帰分析手法であるsupport vector regression法を使用した.実際のMBRで測定されたデータを解析したところ,提案手法により高精度のモデルが構築できるだけでなく,将来のTMPを精度良く予測可能であることを確認した(Figures 4, 5).
  • 太刀川 達也, 佐藤 博, 野沢 孝一, 中村 恵子, 中野 英彦, 蔵内 伸悟, 後藤 仁志
    2011 年 10 巻 4 号 p. 141-146
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/12/31
    ジャーナル フリー
    Journal of Computer Chemistry, Japan (JCCJ)では,J-STAGEの投稿・審査システム(J-STAGE2)を利用して投稿から公開までの作業をWeb上で行っている.J-STAGE2での論文公開は,PDF形式で行われてきたが,世界標準ではXMLでの公開が求められるようになってきていることや,J-STAGE2の後継である J-STAGE3ではXMLファイル形式に対応することから,JCCJ誌においても,XMLワークフローの開発を行うこととした.その結果,eXtyles,InDesign,and Typefi system 等を用いることで,日本語論文でのXML形式へのワークフローを世界で初めて実現することができた.また,XML形式の論文ファイルを自動的にHTML形式に変換し,成形された論文をWeb公開するJCCJ公開管理システムを開発した.
ノート
  • Amih SAGAN, 長岡 伸一, 寺前 裕之, 長嶋 雲兵
    2011 年 10 巻 4 号 p. 147-151
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/12/31
    ジャーナル フリー
    HeH+は異核2原子分子の最も簡単なモデルであり,その結合形成はHe+ + H → HeH+ で表せる共有結合型とエネルギー的に安定なHe + H+ → HeH+の配位結合型がある.本ノートでは両者の分子軌道エネルギー準位図を示し,その違いについて説明する.用いた計算方法はHF/6-311++G**である.共有結合型の分子軌道エネルギー準位図では,HeH+の1σ軌道の軌道エネルギー(-1.6288a.u.)はHの1s (-0.4998a.u.)より低く,安定化しているがHe+の1s (-1.9983a.u.)より高く,不安定化している.1σ軌道はおもにHeの1s軌道で構成されており,HeH+のHeとHの形式電荷はそれぞれ約0.3および0.7である.このようにHの電子がHe+側に寄っているため,He+の1s軌道から見ると相対的に電子間反発で不安定化するように見える.他方配位結合型の分子軌道エネルギー準位図では,HeH+の1σ軌道の軌道エネルギーはH+の1s (-0.4998a.u.)およびHeの1s (-0.9176a.u.)より低く,安定化している.Heの電子がH+側に寄るため,Heの1s軌道の2つの電子の反発が緩和され安定化する.
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