Journal of Computer Chemistry, Japan
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6 巻 , 3 号
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総説
  • 佐藤 文俊
    2007 年 6 巻 3 号 p. 145-158
    発行日: 2007/09/15
    公開日: 2007/10/19
    ジャーナル フリー
    ProteinDFはタンパク質の全電子計算を実現するために設計、製作されたプログラムである。計算法にはガウス型関数を用いる密度汎関数法を、プログラミングにはオブジェクト指向技術をそれぞれ採用している。2000年にシトクロムcの全電子波動関数の計算が達成されたのを皮切りに、文部科学省「戦略的基盤ソフトウェアの開発」、「革新シミュレーションソフトウェアの研究開発」の各プロジェクトを通して、研究開発が続けられ、計算規模、速度、堅固性ともに大幅に向上している。本稿では、ProteinDFの解説、計算例、および実用化の鍵を握ると考え、当初から開発を続けているインターフェースについて報告し、将来を展望する。
  • 高田 俊和
    2007 年 6 巻 3 号 p. 159-166
    発行日: 2007/09/15
    公開日: 2007/10/19
    ジャーナル フリー
    文部科学省と理化学研究所が、開発を進めている次世代スーパーコンピュータの重要応用分野としてライフサイエンスが取り上げられているが、その中のひとつにタンパク質を中心とした分子レベルでの生体機能解明に向けたアプローチがある。量子力学的な手法を数千から数万原子にも及ぶタンパク質複合系に直接適用することは、計算時間の観点から現実的ではなく、注目している化学事象に対する計算精度を堅持しながら、計算時間を大幅に短縮する計算手法が望まれている。QM/MM法は、そのような時代的な背景から大変注目されているアプローチである。本稿では、QM/MM法の考え方、その課題などについて概観すると共に、創薬への分子シミュレーション技術の適用について、大阪大学の進めている"創薬バリューチェーンプロジェクト" を例に、その最新成果を紹介する。
  • 関野 秀男
    2007 年 6 巻 3 号 p. 167-172
    発行日: 2007/09/15
    公開日: 2007/10/19
    ジャーナル フリー
    巨大生体高分子への量子論の適用は新しい多体論を必要とするかもしれない。現存の量子化学的手法のそのままの形での拡張適用は理論的にも技術的にも破綻する可能性がある。生命科学に必要な精度を保障するにはシミュレーションにおける空間表現の問題が重要となる。次世代量子化学では半世紀以上にわたって使われているガウシアン基底を越える表現法が必要であろう。多重解像度多重ウェーブレット基底による分極率のような分子物性予測により、新しい効率の良い空間表現の試みを示した。また現在大規模量子化学計算の主流である密度汎関数法での物性算定の問題にも空間表現が関連している。
総合論文
  • 中野 達也, 望月 祐志, 甘利 真司, 小林 将人, 福澤 薫, 田中 成典
    2007 年 6 巻 3 号 p. 173-184
    発行日: 2007/09/15
    公開日: 2007/10/19
    ジャーナル フリー
    1999年に北浦らにより提唱されたフラグメント分子軌道(FMO)法は、分子系をフラグメントに分割し、フラグメントのモノマー、ダイマー・・・の計算から系全体を計算する方法であり、タンパク質やDNAのような巨大分子系全体を量子論的に扱う計算方法として、近年注目を集めている。本稿では、FMO法の概要と、多層FMO(MLFMO)法に基づいたタンパク質の励起状態計算、及びFMO法に基づいたconfiguration analysis for fragment interaction (CAFI)やvisualized cluster analysis of protein-ligand interaction (VISCANA)といった解析方法について報告し、FMO法の今後について展望する。
  • 福澤 薫, 中野 達也, 加藤 昭史, 望月 祐志, 田中 成典
    2007 年 6 巻 3 号 p. 185-198
    発行日: 2007/09/15
    公開日: 2007/10/19
    ジャーナル フリー
    フラグメント分子軌道(FMO)法プログラムABINIT-MPを用いた生体高分子の応用計算の現状をGUIシステムBioSation Viewerの機能とともに紹介する。具体例として、核内受容体とリガンドの相互作用、DNAと転写因子タンパク質との結合などについて、主に転写に関わる分子認識機構を詳細に解析した。フラグメント間相互作用エネルギー、電荷分布、及び軌道相互作用の解析などを通じて、生体高分子の分子認識における各アミノ酸残基の役割や相互作用の様式を明らかにした。またこれらの分子認識には、静電的な相互作用ばかりでなく、分散力に基づくvan der Waals相互作用が重要であることを明らかにし、電子相関を適切に取り入れた量子化学計算が必要となることが具体例を通じて示された。その他にも、光励起特性の解析などの先駆的な研究も進めている。
  • 石川 英明
    2007 年 6 巻 3 号 p. 199-216
    発行日: 2007/09/15
    公開日: 2007/10/19
    ジャーナル フリー
    二階線型常微分方程式の固有値問題を高精度に解く数値解法を述べる。一つは離散化行列固有値法、もう一つはshooting法である。前者では微分方程式の空間変数に関する微分を離散化して実空間での行列固有値問題に変換し、その固有値方程式を解く。後者では二点境界値問題を、両端を出発点とする初期値問題と解の接続問題に書き換え、固有値と固有関数の初期値を離散化固有値問題法で求め、初期値問題を線形多段法の高次の新しい公式で高精度かつ安定に解き、接続点で固有値の修正量を高精度に計算する。量子力学への応用では、一次元の調和振動子、非調和振動子、Morseポテンシャル及び変形Pöschl-Teller ポテンシャルの束縛状態を報告する。
研究論文
  • 渡邊 寿雄, 稲富 雄一, 石元 孝佳, 梅田 宏明, 櫻井 鉄也, 長嶋 雲兵
    2007 年 6 巻 3 号 p. 217-226
    発行日: 2007/09/15
    公開日: 2007/10/19
    ジャーナル フリー
    フラグメント分子軌道(FMO)法に基づいた大規模系の分子軌道(FMO-MO)計算についての概要と、Lysozyme分子およびモデルDNA分子への適用結果を示す。FMO-MO法は、FMO計算によって得られた密度行列を基にFock行列を生成し、それを一度だけ対角化することによって近似的な分子軌道を得る方法である。本方法は巨大な分子全体に対する反復解法を行わずにすむため、従来の分子軌道法では非常に困難であった2000原子程度の大規模分子の分子軌道計算を、比較的短時間で行うことができる。また新たに開発した対角化法を用いると化学反応に重要なHOMO-LUMO付近のみの軌道エネルギーと軌道を得ることが可能であり、従来法に比較して大幅な時間短縮が可能である。
    Dual Opteron 246, 2GHz × 128台を用いた並列計算では、Lysozyme分子(129 アミノ酸残基, 1961 原子)と溶媒(8258原子、STO-3G 20758基底関数)に対するFMO-MO計算を、5時間程度で行うことができた。このとき、水分子の配置の仕方でHOMO-LUMOの位置が大きく変化することが確認された。また同じシステムを用いるとDNAのモデル(40核酸対、2636原子、STO-3G 10108基底関数)を1時間以内で計算可能であった。この場合、HOMOはDNAの中央に大きな振幅を持ち、LUMOはDNAの末端近くに大きな振幅を持っていた。
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