結核治療においては,治療の利益および公衆衛生上の必要性に対し本人の意向が衝突し,倫理的妥当性が問われる場合がある。人生の最終段階における結核治療につき倫理コンサルテーションを行った事例を報告する。
95歳男性。活動性結核で入院したが,当初より寝たきりで嚥下障害を認め,徐々に服薬不能となった。治療し住み慣れた施設に戻れるよう経胃管投薬が検討されたが,本人は積極的治療を希望しない。治療の倫理的是非を検討したが,医療者からは公衆衛生上の理由で治療を行わざるを得ないのではないかという意見を得た。感染症診査協議会での付議を依頼したところ,積極的治療は行わず支持療法のみとなった。
結核治療では服薬とその支援が重要である。しかしその背景には治療し社会復帰を目指すという考え方があり,人生の最終段階にある患者には必ずしもそぐわない。ここで生ずる倫理的問題に気付き,判断の透明性・一貫性を高める取り組みが必要である。
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