1. 本報に於ては南滿洲大石橋附近主要6礦區のマグネサイト及之に少量の他物質を添加したるものを種々の温度に熱して鏡檢したる結果を記せり。
2. 6種のマグネサイト粉末にて成形したる錠をタンマン爐にて1200-1800°Cに1時間保持したるときの微構造次の如し。
(1) 薄片に現はれたる主要相は、ペリクレース、無定形マグネシア、forsterite 2MgO・SiO
2及clinoenstatite MgO・SiO
2なり。高温度焼火物はスピネルMgO・Al
2O
3を含有する筈なるもペリクレースと識別し難し。尚ほfayalite 2FeO・SiO
2, monticellite CaO・MgO・SiO
2, diopside (Ca, Mg)O・SiO
2, ceylonite (Mg, Fe)O・Al
2O
3, chlorospinel MgO・(Al, Fe)
2O
3等の如く固溶體として或ひは獨立の結晶として薄片中に存在し得べき鑛物は微細にして確定するを得ざりき。
(2) 原石の化學組成より求めたる (a) olivine (Mg
2SiO
4, Fe
2SiO
4, CaMgSiO
4)、 (b) スピネルMgAl
2O
4及 (c) ペリクレースMgOの體積百分率は善く鏡檢の結果と符合せり。
(3) 薄片の構造は燒火温度と共に變化するも、1200-1300°及1600-1700°の變化は特に著し。即ち1200-1300°にてclinoenstatiteがマグネシアと化合して殆ど全部forsteriteとなる、且無定形マグネシアがペリクレースに變化す。1600-1700°にてはforsteriteは熔けてペリクレースの間隙を充し、所謂poikiliticに發達するに至る。
(4) 一般に珪酸の多きものほど再結晶の速度大なるが如し。
3. マグネサイト6種の粉末、又は青山坏マグネサイト粉末に珪酸、アルミナ、酸化鐵、酸化クロム、二酸化マンガン、酸化ニツケル、酸化コバルトの内1又は2を1-4%添加し、是等を1000°にて燒きたる後成形して錠となし、之を瓦斯爐にてSK 26-30迄熱して得たるものにつきて鏡檢を行ひたり。
(1) マグネサイトのみより成る薄片の微構造は前項1500°燒火物に略同じ。
(2) 珪酸の添加はforsterite及ペリクレースの發達を助く。
(3) 酸化鐵の添加はペリクレースの發達を助け、且magnesioferriteの微晶を生ず。
(4) 添加したる少量の酸化クロムはforsterite中に溶解するが如し。
(5) アルミナの添加は幾分ペリクレースの發達を助け、且融點の低き鑛物を生じて全體を覆ひpoikilitic structureを示すに至る。
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