(1) 米大陸に於けるベントナイト賦存地の地質, 産出の状況及び成因に就て報告せられし所を通覽す。
(2) 邦産ベントナイト及び酸性白土の賦存確認地點を地質圖並に火山帶圖上に求め, 兩粘土共その殆んど全部が兩輝石安出岩を主とする東北乃至北海道火山帶上にあり, 且つ第三紀層と新火山岩露出の併存地點にある事を示す。 而して特に北海道産ベントナイト賦存地は何れも炭田の近接する事を示す。 また黄色系ベントナイトは山形縣以外に産出を見ざる如く, 他は何れも白色系なる事を指摘す。
(3) 山形縣南村山郡西半部一帶の地質圖上にベントナイト及び酸性白土の露出地點を求め, ベントナイト地線 (小白府-荻ノ窪) と酸性白土地線 (上ノ山-長谷堂) とは中央南北に横はる流紋岩大露出を挾み東西に對稱的に横はり, 兩地線上の地質的條件が酷似する事を示す。 即ち第三紀層とこれを貫く流紋岩との接觸部, 流紋岩と反對側に近接して安山岩の露出の存する事を特徴とする。 兩地線に沿う地質條件の差異を求むるに, ベントナイト側の安山岩層の酸性白土側のそれより一層基性にして且つ鐵苦土に富む可能性あるを認むる以外に見當らざる如くである。
(4) 荻ノ窪ベントナイト鑛床の地形及び地質的状況を示し, 同地域にて採集せる標本10種を略系統的序列に從つて詳細に記述したる後, 標本相互間の吟味を行ふ。 吟味の結果ベントナイトの生成過程を次の如く推論す。 粗面安山岩質火山玻璃にして粒子表面幾分風化分解し, 著量の吸着水と氣孔水とを含む如き者に別に高温火山噴出物の飛來接觸乃至溢流接觸あり, 該高温のために前記玻璃は脱玻璃あると同時に水分の爆發的氣化膨脹あり, 該膨脹壓と高温とは兩々相促進して母體の變質加水反應を強壓す。 これベントナイト化に他ならず。 而して母體の玻璃珪酸に富む時は脱珪あるものの如くである。 また酸性熱氣乃至熱水共存すればベントナイト化一層促進せられ且つ完全と稱すべし。
5) ベントナイト化乃至酸性白土化の反應は同樣なる主反應に支配せられ, 兩反應の實際上の相違は各母體たる反應物質の鹽基度の相違に過ぎず, 該鹽基度乃至成分の浮動により又反應の速度條件の變化により主反應は見掛上相當著しき變形を受けるが反應の主内容は斜長石の變質分解にありと推論す。 而して主反應を中性長石の不完全加水變質分解と考へ次の反應式を假説す。
Ab=Na
2O・Al
2O
3・6SiO
2 An=CaO・Al
2O
3・2SiO
2 (Ab・An)+2H
2O=2(Al
2O
3・4SiO
2・H
2O)・(Na
2O・CaO)
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