(1) 白色系ベントナイトの代表品として北海道渡島國久遠郡貝取澗産の者の精土分に就て一通りの試驗を行つた。 水中荷重0.1gに於けるBN値は原土22.2, 精土52.0, 精土に就ては山形産黄色系代表品精土とBN値, 化學組成共に略同樣であり, 加熱脱水曲線もまた同樣である。 L.Ig. SiO
2 Al
2O
3 Fe
2O
3 MgO K
2O Na
2O 貝取澗精土 5.66 64.71 20.93 1.62 1.21 2.97 2.90 (差) 1.53 5.28 1.00 0.05 0.10 0.36 0.18 山形六角精土 6.27 61.30 21.22 4.38 1.20 3.23 0.28 2.21 1.67 4.91 1.00 0.13 0.10 0.38 - -
(2) 加熱脱水状況をも考慮する時は貝取澗産精土はPyrophilliteと少量の珪酸ゲルとの混合物と考へられる。 600℃以下の水の安定度は幾分Pyrophilliteに比較して小なるも, それは主として100℃以下の水の脱水遲滯による殘留と考へられる。
(3) 分別部分に就て見るに, 原土は2種の部分より成る。 地質學的年代共に新第3系に屬するのみならず, 相前後して殆んど同時に堆積せる2種の火山灰あり, その中粗面岩質の者はベントナイト化し, 石英粗面岩質の者は分解著しからずして殘る。 即ち兩者は共に同樣なる分解營力を受けたるものゝ如く, その分解營力は中性乃至微酸性の水による深層風化と考へて不當ならざるのみならず, この推定は山形ベントナイト礦床の場合に適用しても殆んど差支なき如くである。
(4) Kaoliniteよりは一層高温礦物と考へられるPyrophilliteを主成分とするベントナイトが深層風化生成物なる事は一見矛盾の如く. 猶ほ研究の餘地ある, 兩者は膨潤性及び鹽基可換性有無の點で相違する。 而してこれ等の性質の發現はMgOにその原因が存すると考へ得る事實がある。
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