本報告はセメント粉末の比表面積探究の爲の第1前提たる粒子の統計的形状を追究し, 之を根據として第2前提たる粒子分布状態を究明したる諸點に關して叙述したもので, その概略を順序を追つて列擧ずれば, 次の樣である.
(i) セメント粒子の統計的形状を捕ふるに當つての計算の非常なる煩瑣を囘避する爲, 不均値に關する便法の充分有效なるを確認し得た.
(ii) 粒子の顯微鏡視野内の形像は粒子の大小, セメントの種類に關せず相似性を示し, 又全貌に關しても實用上には, 上の相似性の成立するを證することが出來た.
(iii) セメント粒子の長さ
l, 幅
b, 高さ
tの間には統計的に次の關係がある.
l/
b=1.36
l/
t=1.80
又, 粒子の俯瞰面積を
f, 體積を
v, 米國標準局徑を
Dとするとき, 次の比率が成立する.
√
f/√
b=0.84 √
f/
D=0.83
3√
v/√
f=0.83
3√
v/
D=0.68
更に
fは
l,
bを長, 短軸とする楕圓の面積の90%;
vは
l,
b,
tを長, 中, 短軸とする楕圓體體積の82%に當る.
(iv) セメント製造機械, 技術の發達を期する上からも, 又研究の對象としてもセメソト粒子分布の安定性が要望され, 事實4聯の試驗から此のことが保證された.
(v) 本邦産20種のポルトランドセメントの粒子分布状態を調査した結果, 其の殘滓曲線は
R(
x)=
e-kxn k,
n: 恒數
によつて與へられ, 而も
nは何れのセメントに於ても1に非常に近いことを知ることが出來た.
尚, 此の試驗研究に際して懇切なる御指導, 御援助を賜つた研究所長藤井光藏氏に厚く御禮申上げる.
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