(1) アルミナ質耐火物或は研磨劑の改良研究に資するためAl
2O
3の變態に關し考察したが本報にては先づβ型アルミナの加熱による轉移に就いて行つた2, 3の實驗結果を報告した.
(2) アルミナ融塊中に晶出したβ-Al
2O
3結晶に就いて先づ其物理化學的諸性質を檢し次で其の酸化及還元兩雰圍氣に於て種々の温度に加熱し加熱物に就て化學分析, 比重量及屈折率測定, 顯微鏡觀察を行ひ其變化状態を檢べた.
(3) β-Al
2O
3試料中には94.58% Al
2O
3, 4.57% Na
2Oを含み其他の成分は極めて少量であつてこの結果から求めたβ-Al
2O
3の化學組成はNa
2O・12.59 Al
2O
3であつた.
(4) 原試料は六方晶系に屬す薄板状の一軸性負性結晶であつて其屈折率はε=1.637, ω=1.671である. 又見掛比重は2.96, 眞比重は3.27 (25°/4℃) で明かに從來提唱されて來たβ型アルミナに類する物であつた.
(5) 加熱試驗の結果温度の上昇と共に比重の増加及びNa
2O含有量の低下を認め共にα-Al
2O
3の示す數値に接近した. 又其轉移状態は顯微鏡試驗により確めた.
(6) 共等の諸試驗の結果より綜合するに (1) βAl
2O
3は加熱により比重及屈折率を増加すると共にNa
2O成分を失つて結局γ型に轉移するか其轉移速度は極めて緩慢であつて比較的低温度に於てはたとへ加熱時間を延長しても一小部分の轉移を見るに過ぎず半融又は熔融分解により始めて其大部分がα-Al
2O
3に變化する. (ii) 轉移は1000℃附近迄は殆ど起らないで1200℃附近より開始される. 轉移により生成したα-Al
2O
3の結晶は最初β-Al
2O
3結晶の周邊に微粒子結晶の集群として現はれ漸次加熱湿度の上昇と共に周邊より内部に擴がり1600℃ 4時間燒成にて其微粒子結晶はβ-Al
2O
3結晶の表面を蔽ふ状態になる. β-Al
2O
3試料は約1730℃にて熔融するが熔融物にては大部分の結晶がα-Al
2O
3に轉移し其場合は最早や微粒子状結晶として認められなかつた.
(7) 還元性による燒成に酸化性燒成による場合より明かに轉移速度は早い.
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