本報は市販になれるポルトランドセメントに於て兩極端をなす高石灰セメントと低石灰セメント及びその中間の普通セメントに就て, 新風篩器により2.0μ以下の如き極微粒子を分離し, これと原セメントとの化學成分, 鑛物組成等を比較檢討したのである. 要約列擧すれば次の如くである.
(i) 何れのセメントに於ても石膏の微粉分への偏在は極端である. 即ち2.0μ以下に全石膏の約1/3, 5.5μ以下に約半分が集中してゐる. 微粉粒子は初期の水和を左右するから此の部分の石膏の役割は化學的に重大であり, 且物理的には石膏がセメント粉碎に際してとる行動にも言及し, 從來行はれた此の方面の研究に大きな示唆を與へることが出來た.
(ii) セメント燒塊の化學成分間の諸係數に就て考察した. 水硬率, 礬土率には原セメントと微粉分との間に大差なく, 活動係數・珪酸率では可なり差があり微粒子に於て小さい. 石灰飽和比は低石灰セメント以外の3つのセメントでは微粉分の方に大きい.
(iii) 石膏から來る影響を排除し, 燒塊をなす成分のみの百分率を求めた結果, 何れのセメントも微粉分にSiO
2少く, Al
2O
3, Fe
2O
3 MgO多く, CaOには餘り差のないことが明かとなつた.
(iv) Bogueの方法により燒塊鑛物組成を求めた結果, 4 CaO・Al
2O
3・Fe
2O
3は何れのセメントに於ても微粉分に多い. 低石灰セメントに於て之が顯著である.
3 CaO・Al
2O
3に於ても之と同樣の傾向が見られるが, 高石灰セメントでは原セメント, 微粉分間に差がない.
3 CaO・SiO
2は高石灰, 普通セメントに於て微粉分に多く偏在してゐるが, 低石灰セメントでは反對である.
2 CaO・SiO
2は上の3 CaO・SiO
2の傾向と密接な關係があり逆の傾向を示し微粉分に少く, 低石灰セメントでは餘り差が見られない, MgOは何れのセメントも極微粒子分に多く偏つてゐる.
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