Ca
2SiO
4の変態であるα, α'およびβ型について適当な安定剤を用いて単結晶を合成し, ラウエ工法, ワイセンベルグ法等によりその回折上の特徴から, これらの結晶の特質を検討した.
α型は6回対称ラウエ写真から六方格子と考えられ, Bredigによるglaseriteと同形な三方格子とは大きくことなっている. 著者らが合成したものはV, P, Baなどの安定剤をかなり多く置換しなければならないが, これらは高温X線回折によると純粋なα-Ca
2SiO
4と連続的な固溶関係をもつ. Pを置換したα型結晶相の格子の大きさは
a=5.401Å,
c=7.144Åであった。
Ba, Sr, B, Vその他により合成したα'型は, Douglasがスラグから採取したものと同周期の軸長をもつ. 著者らはこれが単位格子として最小の大きさであることを確認し, その空間群は
Cmc2
1であった. クリンカー中のα'型結晶も合成物と全く同様なX線回折を示し, 同様な構造であることを認めた. Srにより合成したα'型の格子の大きさは
a=11.091Å,
b=18.683Å,
c=6.829Åであった.
β型は多くの安定剤により簡単に合成できる. これらもMidgleyが合成単結晶を用いて結晶解析を行なったものとはことなり, a, c軸が2倍の周期をもち, またこれはクリンカー中のβ型についても全く同様であった. A1により安定化したβ型の格子恒数は
a=11.067Å,
b=6.746Å,
c=18.575Å; β=94.40°であった。
α, α'間の構造上の相違はβ, α'間の相違よりも大きいことが推察された. これは示差熱分折による前者のより大きな熱変化と, ラウエ写真, 赤外吸収スペクトルの前者の大きな相違により考えられた.
β, α'間のウラエ写真はβの2回軸生成のためのわずかな回折点強度の相違が見られるみで, 相互のごくわずかな格子の変移により小さな熱変化をともなって移行できると考えられた.
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