(1) 陶磁器釉応力の室温から700℃までの変化を偏光装置付高温加熱顕微鏡を用いて測定した. 無貫入品はすべて同一傾向の変化を示した. 昇温とともに圧縮応力は減少し, 400-560℃の
TSで応力0の横軸と交差してから, 引張り応力側で小さなピークを示した後, 620℃近辺の
TRで再び応力0の横軸と交差し, 圧縮応力の小さなピークを示した後, 最後に670℃近辺で, 完全に応力が開放されて0となった. 貫入品は約530℃まで室温時の引張り応力の値がほとんど変わらずに推移した後, 応力は急減して約620℃の
TRで応力0の横軸と交差し, 圧縮応力の小さなピークを示した後, 最後に670℃近辺で応力が開放され0となった.
(2) 応力0の温度では, 釉と素地の寸法は等しいという仮定の下で, 素地の上に薄層でついている釉の熱膨張曲線を計算した. このようにして得られた曲線と, 素地の実測熱膨張曲線を
TR点で重ね合わせることにより, 釉応力-温度曲線の変化過程を良く説明することができた.
結局, 釉応力発生の起点は, 釉の最低なまし温度ではなく, 釉の転移温度より更に20-100℃高温の
TR点とすべきことが分った. また, 素地の上に薄層でついている実際の釉は, かなりの変質をしているらしいことも推察された.
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