ガラス質に富む火山灰の1種で南九州に大量に賦存しているシラスと石灰の, 80℃及び100℃における水熱反応性について検討した.
シラスのガラス質分 (Ig. loss 2.7, SiO
2 74.3, Al
2O
3 12.7, Na
2O 4.4, K
2O 3.0, その他3.0%, 5950cm
2/g) に, CaOをCa/Siモル比0.6-0.8に配合し, 水/固体重量比20として, 80℃及び100℃で種々の期間保持した.
80℃で20日以上の反応で10Åトバモライトが生成した. その結晶は
b軸方向に伸長した短冊状又は繊維状で (100) をへき開面とするものであった. (100) へき開面で横たわった10Åトバモライト結晶の電子線回折像で, 回折斑点は
k,
lともに偶数の0
klと指数付けされたが,
kが奇数の反射は不整のために
c*軸に平行な連続するストリークとなった. 10Åトバモライトは加熱すると300℃で非晶質化し, 800℃でβ-CaSiO
3が生成した. 10ÅトバモライトはC-S-H (II) に類似しているから, 前者は後者の結晶化が進んだものと考えられる.
80℃で30-40日間以上の反応で, また100℃では6日間以上の反応で, 底面間隔11.8Åの含Al 11Åトバモライトが得られた. その結晶は
b軸方向に伸長した板状で (001) をへき開面とするものであった. この11Åトバモライトは加熱しても800°-900℃でβ-CaSiO
3に転移するまで11Åトバモライトの結晶構造を保持する異常型 (anomalous type) に属するものであった.
更に, いずれの温度でも少量のハイドロガーネット [Ca
3Al
2(SiO
4)(O
4H
4)
2] が生成した.
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