1000℃から3000℃の温度範囲で熱処理を行ってフラン系炭素をマトリックスとする炭素繊維 (PAN系)/炭素複合材料を試作し, その熱伝導率, 電気比抵抗をそれぞれ室温で測定した. その結果, これらの物性はマトリックス組織の変化と対応していることが分った. 繊維軸平行方向では熱伝導率は熱処理温度 (HTT) の上昇に伴って増加し, HTT 3000℃試料はHTT 1000℃試料の約35倍の値を示し, 電気比抵抗は反対に減少して1/7の値を示した. また繊維軸垂直方向ではそれぞれ15倍, 1/1.4であった.
これらの測定結果並びにX線パラメーター測定から熱伝導はマトリックス黒鉛結晶子の (110) 方向への成長に伴って増大し, 電気比抵抗はマトリックス黒鉛組織の3次元配列化, すなわち結晶子の (112) 方向への成長に伴って減少することが推察された.
マトリックスの繊維平行方向の熱伝導率は垂直方向のそれの5-10倍と試算された.
更にWiedemann-Franz則より, 熱伝導への電子の寄与は数%と試算された. このことは炭素繊維/樹脂炭複合材料の室温での熱伝導がフォノン伝導に支配されていることを示唆している.
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