ジオシンセティックス論文集
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18 巻
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  • 特別史跡・水城を中心として
    林 重徳
    2003 年 18 巻 p. 1-12
    発行日: 2003/12/04
    公開日: 2009/12/17
    ジャーナル フリー
    福岡県太宰府市に現存する特別史跡“水城”は、高さ約10~14m、全長約1.20kmにも及ぶ大規模な盛土構造物であり、かつ千数百年を経過した土構造物として、施工された年を確定できる数少ない事例の一つである。この水城堤の築造には、大陸の影響を強く受けた様々な工夫と当時の建設技術が駆使されている。また、福岡県嘉穂郡桂川町に在る特別史跡“王塚古墳”の石室からは、精巧かつ鮮やかな装飾壁画が発見された。そこには、千数百年を経てもなお鮮やかな色彩の保存を可能にした石室内の環境を維持する巧妙な工夫が用いられている。しかし、当然ながら、いずれにおいても当時の設計・施工図および記録といった類いのものは一切無い。
    これらの2つの特別史跡・遺構に関する多くの調査記録および試験結果等について、現代の地盤工学・建設技術の視点から、古代の建設技術と工夫を解釈し、当時の工事を指揮監督した設計者・指導者・の意図を推察する。また、水城の堤体から採取した不撹乱試料の土質試験の結果等より、盛土の土質特性に及ぼす年代効果について考察する。
  • 赤井 智幸, 前田 敏, 深沢 健, 山田 耕一, 近藤 誠二, 松下 正樹, 石田 正利, 上田 滋夫, 嘉門 雅史
    2003 年 18 巻 p. 13-16
    発行日: 2003/12/04
    公開日: 2009/12/17
    ジャーナル フリー
    廃棄物処分場の遮水工に遮水シートを用いる場合、保護マット等の保護層の設置が義務づけられている。我が国の陸上処分場の場合には保護マットに不織布が多用されており、保護マットに適用する不織布は500N以上の貫入抵抗を有することが規格値になっている。海面処分場においても不織布保護マットが適用されるが、陸上処分場とでは構造や使用する地盤材料が異なるので保護マットを材料選定するための判断基準は明らかにはなっていない。本研究では、海面処分場保護マットに適用する不織布の保護性能に関し、各種不織布の貫入試験や実際の施工断面を想定した不織布-遮水シート-不織布の積層の載荷試験を行い、それらの結果から、海面処分場に適用する不織布保護マットの選定基準を明らかにした。
  • 小竹 望, 手塚 隆, 大槻 貴志, 徳永 和幸, 守谷 公一
    2003 年 18 巻 p. 17-20
    発行日: 2003/12/04
    公開日: 2009/12/17
    ジャーナル フリー
    透水性地盤に管理型廃棄物海面処分場を築造する場合、廃棄物護岸背面と処分場底面の全面に遮水工が必要となる。また、波浪や潮汐による揚圧力に対して遮水工の安定を確保する必要がある。本事例では、遮水工に2重の遮水シートを用いて、中間保護層と上部被覆層に押さえ荷重としての役割をもたせる構造とした。遮水工はそれぞれ「上側保護マット(長繊維不織布)・遮水シート(PVCシート)・下側保護マット(短繊維不織布)」から成り、敷設時の施工性・効率性を考慮し、接着により3層一体構造とした。遮水工の施工は、陸上ヤードによる広幅加工、法面部・底面部の一体化後に沈設・敷設する方法とした。本報告では、遮水工の設計・施工概要について述べる。
  • 小竹 望, 手塚 隆, 北出 圭介, 徳永 和幸, 守谷 公一
    2003 年 18 巻 p. 21-26
    発行日: 2003/12/04
    公開日: 2009/12/17
    ジャーナル フリー
    管理型廃棄物海面処分場が透水性地盤に立地する場合を対象とし、潮汐が引起こす処分場内外の水位差に起因して遮水工に作用する揚圧力を浸透流解析により評価した。基礎地盤が砂質および礫質土層から成る場合の代表的な透水係数値に関し、潮位変動を境界条件として与える非定常解析によって、遮水工に作用する圧力水頭の経時変化を求めた。その結果、潮位変動に対する水圧伝播の時間遅れや護岸からの距離による減衰が現れ、その程度が基礎地盤の透水係数に大きく影響を受けることが確認された。遮水工の安定検討に用いる外力として、側面・底面遮水工に沿って作用する揚圧力の最大値と護岸からの距離との関係を示した。また、揚圧力の低減対策として、遮水矢板、揚水による効果を検討した。
  • 長束 勇, 石村 英明, 渡嘉敷 勝, 森 充広, 宮田 哲郎
    2003 年 18 巻 p. 27-32
    発行日: 2003/12/04
    公開日: 2009/12/17
    ジャーナル フリー
    ジオメンブレンを用いた水中浮上式天蓋の開発において残された技術的課題である天蓋挙動の安定化について,室内モデル実験により検討した.その結果,降雨の集中により天蓋保護水が増量して貯水容量が減少する課題については,貯水と天蓋保護水に天蓋の重さに見合った水頭差が生じる現象と天蓋保護水が増量すると天蓋が沈降する現象に着目して考案した無動力自動排水システムが有効であることが明らかになった.また,天蓋ジオメンブレンの保護のため水中に完全に潜行して浮上させ,かつ貯水容量の減少を最小化するため天蓋保護水深をできるだけ一様とする天蓋の形状制御については,天蓋に適切な重量の錘を配置する,若しくは適切な重量を持ったジオメンブレンを使用する,ことで対処できる見通しが得られた.
  • 近藤 三樹郎, 狩野 真吾, 渡辺 克也, 岩井 勉, 永治 勇吉
    2003 年 18 巻 p. 33-40
    発行日: 2003/12/04
    公開日: 2009/12/17
    ジャーナル フリー
    管理型廃棄物最終処分場などで用いられる遮水シート(ジオメンブレン)はその性質性能が次々に明確になってきたが、遮水シートの折れ曲がり現象は、現在でも遮水工として使用する際の障害となっている要素である。折れ曲がり現象は材料強度の低下や遮水性能を低下させる恐れがあるので、確認実験として水圧膨張実験を行った。この実験から現在海面処分場で使用されている超軟質PVCシートは折れ曲がり現象があっても、折れ曲がりのない場合に比べてほとんど性能の低下がないことがわかった。また、折れ曲がり現象の存在により性能低下が激しい材料もあるので、この場合には何らかの対策が必要であることがわかった。
    この水圧膨張実験は現場の不陸現象を良く再現しており、この実験結果は遮水シートの設計手法として利用できるものと考えられる。
  • 原田 高志, 西崎 到, 今泉 繁良, 高橋 雅人, 柏木 哲也
    2003 年 18 巻 p. 41-48
    発行日: 2003/12/04
    公開日: 2009/12/17
    ジャーナル フリー
    高分子材料で製造されたジオメンブレンは、軽量で劣化しにくい等の特徴を有するため、最終処分場や農業用池等様々な土木構造物の遮水工に用いられているが、その耐久性の評価は、促進耐候試験や熱劣化試験等の促進試験によるものが主体であり、実暴露実験に基づく評価は膨大な時間を要すこともあり、系統的に実施された例は少ない。今回、ジオメンブレンの化学的な耐久性に関する基礎データを得ることを目的として、熱可塑エラストマーシートを中心に各種ジオメンブレンについて、国内5ヶ所で約10年間にわたる長期実暴露実験を行った。そして基礎的力学特性(強度、伸び等)と表面状態の変化を追跡調査した。また、一部のジオメンブレンについては、接合部分の強度変化や、厚み、歪負荷の影響についても追跡した。その結果、今回の実暴露実験ではジオメンブレンに極端な性能低下は観察されず、さらに十分な残存性能があることが確認された。
  • 許 四法, 今泉 繁良
    2003 年 18 巻 p. 49-54
    発行日: 2003/12/04
    公開日: 2009/12/17
    ジャーナル フリー
    廃棄物処分場には底部と斜面にジオメンブレンとジオテキスタイルからなる遮水工が敷設される。斜面勾配は、経験的に、1:1.5~1:3が採用されることが多い。斜面勾配はその地盤の強度特性に依存するが、切土斜面で十分な強度があれば、埋め立て容量の増大という観点からは斜面勾配は急な方が得策である。本研究では、上部保護マット・遮水シート・下部保護マットからなる遮水工を異なる傾斜角を持つ斜面上に敷設した際に、廃棄物の転圧・圧縮に伴い遮水工部材に生じる張力を模型実験で評価し、かつ力の極限平衡法によって解析した結果を述べる。
  • 井上 幸一, 島岡 隆行, 中山 裕文, 小宮 哲平
    2003 年 18 巻 p. 55-60
    発行日: 2003/12/04
    公開日: 2009/12/17
    ジャーナル フリー
    埋立地遮水シートの検査には、目視外観検査、サンプリングによる検査等が行われている。しかし、これらの検査は多大な時間や労力を伴う。また、目視外観検査は不確実性があり、サンプリングによる検査は切り出し後に補修を行う必要がある。本研究では、埋立地遮水シートの表面劣化を現場において非破壊で検査する手法として、可視近赤外分光法の適用を試みた。HDPE、FPA、PVCの3種の遮水シートをそれぞれ、純水、強酸、および強アルカリに浸せきさせ、浸せき前後の遮水シート表面の可視近赤外分光反射スペクトルを測定した。その結果、反射スペクトルに明らかな変化があった強酸浸せき後のPVCシートには、引張強さ、伸び率および応力-ひずみ曲線にも変化があることを確認した。
  • 水野 正之, 近藤 三二, 水野 克己, 本郷 隆夫, 嘉門 雅史
    2003 年 18 巻 p. 61-64
    発行日: 2003/12/04
    公開日: 2009/12/17
    ジャーナル フリー
    最終処分場において埋立地内2割勾配法面部の土質系保護材でジオメンブレンとジオシンセティック・クレイライナーを組みあわせた複合ライナーの長期安定性を調査する目的で,約2か年に渡り,ジオメンブレンとジオシンセティック・クレイライナーの伸縮変位を計測した.本論では,不織布と排水性の良い面状補強材並びに保護層の違いによる応力ひずみによるデータから知見が得られたので報告する.
  • 浅野 哲男, 植木 治雄, 堤 博恭, 笹木 敏信
    2003 年 18 巻 p. 65-72
    発行日: 2003/12/04
    公開日: 2009/12/17
    ジャーナル フリー
    都市高速道路料金所の渋滞対策として、日交通量約12,000台の入口部斜路に料金所を増設するため、最短の通行止め期間に縦断勾配8%の斜路の路面を最大1.8m嵩上げし、かつ荷重増加による既設構造物への影響を最小限にすることが要求された。そこで、発泡ウレタンの上に交通荷重を受ける舗装兼用のコンクリート版を直接載荷する構造を検討した。この構造は発泡ウレタン層の上に路盤、舗装を施す一般的な軽量盛土設計と異なるため、CBR試験、平板載荷試験などを実施して道路材料としての力学特性を確認するとともに数値解析を行った結果、通常の路盤材料に比べ変形性が大きいものの、コンクリート舗装部の剛性を十分確保することにより適用が可能と判断された。本論文ではその検討成果と工事について述べる。
  • 三澤 清志, 内田 勝美
    2003 年 18 巻 p. 73-78
    発行日: 2003/12/04
    公開日: 2009/12/17
    ジャーナル フリー
    現場発泡させた硬質ウレタンフォーム(発泡ウレタン)を用いて自立性の軽量盛土を構築する方法がある。発泡ウレタンは、単位体積重量0.4kN/m3と非常に軽量であることから土圧軽減が図れ、また耐水性に優れるなどの特長を有している。特に発泡ウレタンは、現場で発泡させるため、現場の形状に合わせて自在に盛土体を形成できる利点がある。
    本研究では発泡ウレタンの力学特性を把握するため、一軸圧縮試験、ポアソン比試験、および繰返し載荷試験を行った。さらに設計に用いる定数の把握のため、土またはコンクリートと発泡ウレタンとの一面せん断試験を行い発泡ウレタンの摩擦抵抗についても検討した。
  • 村上 哲, 安原 一哉, 小峯 秀雄, 佐藤 匠
    2003 年 18 巻 p. 79-84
    発行日: 2003/12/04
    公開日: 2009/12/17
    ジャーナル フリー
    ジオシンセティックスの1つである軽量地盤材料の材料特性の1つに、従来の土質材料と比べポアソン比が小さいことが挙げられる。軽量地盤材料が軽量であることとポアソン比が比較的小さい材料特性から、壁体構造物の裏込め材料として軽量地盤材料を用いると壁面土圧が小さくなることが期待される。著者らは、この材料特性に着目した数値解析の結果、ポアソン比が小さいとき土圧低減効果は期待されるが、境界の拘束条件によって低減効果が変化することを明らかにした。本研究は、さらに裏込めの地山斜面と軽量地盤材料との境界条件の違いによる壁面土圧の算定結果の比較を行うことにより,軽量地盤材料の土圧低減効果について検討したものである。
  • 小野寺 誠一, 福田 直三, 中根 淳, 平井 貴雄, 間 昭徳, 板垣 聡
    2003 年 18 巻 p. 85-90
    発行日: 2003/12/04
    公開日: 2009/12/17
    ジャーナル フリー
    ジオグリッドを用いて築造され,12年を過ぎたL型ブロックと土のう巻き込みを壁面工とする高さ5mの補強土壁(勾配1:0.1),及び7年を過ぎたコンクリートブロックを壁面工とする高さ8mの補強土壁(勾配1:0.0)について,この間に計測された壁面変位,ジオグリッドの歪み,地盤反力などの経時変化をもとに補強土壁の変形挙動について検討を行った.また,使用したジオグリッドを,敷設した盛土内および巻き込み形式の壁面工の表面から切り出して採取し,引張試験および耐薬品性試験を行い引張特性と耐久性について評価を行った。本報告は,そのうち補強土壁の変形挙動に関わる調査結果について報告するものである.
  • 小野寺 誠一, 福田 直三, 中根 淳, 平井 貴雄, 間 昭徳, 板垣 聡
    2003 年 18 巻 p. 91-98
    発行日: 2003/12/04
    公開日: 2009/12/17
    ジャーナル フリー
    ジオグリッドを用いて築造された、約12年を経たL型コンクリートブロックと土のう巻き込みを壁面工とする高さ5mの補強土壁(勾配1:0.1)、および約7年を経たコンクリートブロックを壁面工とする高さ8mの補強土壁(勾配1:0.0)について、観察してきた壁面変位、ジオグリッドの歪み、地盤反力などを整理し、この間の変形挙動について評価を行った。また、盛土内および壁面工として暴露されてきたジオグリッドを採取し、引張試験および耐薬品性試験を実施し、引張特性、耐久性について調査を行った。本論では、補強材として使用しているジオグリッドの引張特性、及び耐薬品試験などに基づく耐久性について報告する。
  • 間 昭徳, 岡田 安巧, 竹内 則雄, 草深 守人
    2003 年 18 巻 p. 99-104
    発行日: 2003/12/04
    公開日: 2009/12/17
    ジャーナル フリー
    現在、道路盛土において,鋼製壁面材を使用したジオグリッド急勾配補強土壁が急速に普及している。しかしこの工法で現在、多く壁面に使用されている鋼製壁面材についての仕様は、各種報告が行われているものの明確な規定がない。またジオグリッドの3次元的な配置方法についても明確な規定がない。本論は以上の2つの問題を解決すべく、高さ4m、盛土幅5mの実物大盛土において載荷実験を行った。なお3次元的な配置方法として数多く実績のある千鳥配置工法の適用性の確認も併せて報告する。
  • 吉田 眞輝, 間 昭徳, 山崎 真司, 小浪 岳治, 松島 健一, 毛利 栄征, Satoshi SUENAGA
    2003 年 18 巻 p. 105-110
    発行日: 2003/12/04
    公開日: 2009/12/17
    ジャーナル フリー
    補強土構造物を急斜面に設置する場合の設計施工上の問題点と安全性の評価を目標として,実物大の実証実験を実施した。急斜面上に道路や水路構造物を構築するための用地を確保することを目的として,急斜面を想定したソイルセメントによる人工地山を設け,この斜面上にジオグリッドと鋼製壁面材を用いた補強土壁を構築し,補強材と地山を固定するアンカーを併用した実物大補強土壁を施工,載荷実験を行った.本実験では,ジオグリッド補強材,補強材間隔,壁面材,壁面材形状などを変えた3種類の補強土壁構造物を構築した.また埋設管も補強土壁内に敷設した.本論では,3種類の壁面材を使ったジオグリッド補強土壁,アンカーとジオグリッドの連結,パイプラインの敷設などの施工方法,及び仕様について報告する.
  • 計測結果速報
    間 昭徳, 吉田 眞輝, 山崎 真司, 川原 秀樹, 末永 悟志, 松島 健一, 毛利 栄征
    2003 年 18 巻 p. 111-116
    発行日: 2003/12/04
    公開日: 2009/12/17
    ジャーナル フリー
    急斜面を想定したソイルセメントによる人工地山を設け,この斜面上にジオグリッドと鋼製壁面材を用いた補強土壁を構築し,補強材と地山を固定するアンカーを併用した実物大補強土壁を施工,載荷実験を行った.本実験では,ジオグリッド補強材,補強材間隔,壁面材,壁面材形状などを変えた3種類の補強土壁構造物を構築した.これらの壁面変位,ジオグリッドのひずみ,アンカーのひずみ,背面地山の土圧,底部の鉛直土圧などを施工中,施工後,荷重載荷後に計測した.アンカーを併用した際のジオグリッド補強土壁構造物の安定性,補強材,壁面材などの違いによる補強土壁構造物の挙動などを報告する.
  • 弘中 淳市, 平井 貴雄, 谷津 淳
    2003 年 18 巻 p. 117-124
    発行日: 2003/12/04
    公開日: 2009/12/17
    ジャーナル フリー
    ジオグリッドを用いた補強土壁工法において、鋼製枠形式の壁面工は、法面の緑化が可能であり、圧密沈下などの変形に追従できるという特長を持つことから、現在、ジオテキスタイル補強土壁の壁面工として最も数多く採用されている。鋼製枠形式壁面工は、鋼製枠自体がある程度の剛性を有しているが、過去に多く採用されていた巻き込み形式の土のうの代替として位置づけられているため、鋼製枠形式の壁面工に作用する荷重や変形については検討されていないのが現状である。そこで、本研究では試験盛土を構築し、施工過程における鋼製枠形式の壁面工の変形およびひずみ(曲げ、引張り)を計測し、壁面工の挙動や作用する力について検討を行った。
  • 吉田 浩一, 久保田 勝彦, 横田 善弘, 竜田 尚希, 荒井 克彦
    2003 年 18 巻 p. 125-130
    発行日: 2003/12/04
    公開日: 2009/12/17
    ジャーナル フリー
    近年,補強土擁壁工法が数多く開発され,様々な所で施工されている.これらの工法は,壁面材に直接土圧が作用する構造となっており,壁面材のはらみ出し現象や,壁面近傍の転圧不足という問題が懸念される.そこで,壁面材と裏込め土の間に単粒度砕石からなる変形吸収層を設けることにより,壁面材に直接土圧が作用しない構造(以下,二重壁構造)を持つ補強土擁壁工を開発した.ここでは,実現場において計測した壁面連結部に作用する荷重及び補強材に作用する張力分布の結果を報告する.
  • 吉田 眞輝, 竜田 尚希, 西田 陽一, 井上 昭一
    2003 年 18 巻 p. 131-138
    発行日: 2003/12/04
    公開日: 2009/12/17
    ジャーナル フリー
    これまで、柔な土構造物のエネルギー吸収性能に注目し,衝撃荷重が作用する落石防護を目的とした補強土壁の開発を進めてきた.数多くの実験結果からその性能が実証されて,近年,我が国の落石対策工法の一翼として施工実績も徐々に増加している。
    しかし、日本の地形がもたらす自然災害は,落石だけでなく山崩れ・土石流・雪崩などの斜面災害も多数発生している。これらの災害は落石のような集中的な衝撃荷重とは異なり、広範囲で面状に作用する衝撃荷重となる。そのため土構造物である補強土防護擁壁で受け止めた場合,堤体の転倒や部分的な抜け出しというような問題を生じることが懸念される。
    本研究では,面状載荷に対する研究の初期段階として,これまでの落石に対する実験研究で得た性能特性をもとに、補強土擁壁にプレストレス補強した場合の拘束効果などを確認する目的で,落石と同様の重錘衝撃実験を行ったので,これを報告する。
  • 梅崎 健夫, 河村 隆, 三村 大輔
    2003 年 18 巻 p. 139-146
    発行日: 2003/12/04
    公開日: 2009/12/17
    ジャーナル フリー
    土中における補強材の引抜き挙動を評価するために,初期供試体高さが異なる場合の密なアルミ棒積層体に対して定体積および定載荷圧の条件における引抜き試験を実施した.さらに,実際の土中の応力状態を考慮して,K0応力状態以外の初期応力状態における定載荷圧条件の引抜き試験も実施した.試験結果に基づいて以下の知見が得られた.定体積および定載荷圧の条件によらず補強材の引抜きにともなって鉛直応力が増加する.引抜き摩擦定数は鉛直応力の増分を考慮して算定すべきであり,この場合の引抜き摩擦定数は定体積および定載荷圧の条件によらずほぼ等しい値が得られる.引抜きにともうダイレイタンシーに関する定量評価を行い,その卓越する領域を同定する手法の妥当性が示されている.さらに,得られた知見に基づいて,実際の補強土壁における鉛直応力の増加や実用的な引抜き試験についても論じている.
  • 安井 一浩, 井澤 淳, 林 雄介, 桑野 二郎
    2003 年 18 巻 p. 147-152
    発行日: 2003/12/04
    公開日: 2009/12/17
    ジャーナル フリー
    これまでの研究結果によりジオグリッドの横方向部材が引抜き特性に大きく影響を及ぼすことがわかっている.これは横方向部材が地盤変形に大きく影響を及ぼすためであると考えられる.そこで今回は引抜き試験を行うとともに地盤変形を観察する実験を行った.引抜き試験では横方向部材の数が多いほど大きな引抜きせん断応力が発揮されることが確認でき,最大引抜きせん断応力が鉛直総面積ATの総面積に比例することもわかった.これは横方向部材が前方の土を上に押し分けながら変形が起こっていることであることがわかった.上に押し分けながら変形する理由は試験装置上部が柔な境界条件であるのに対し,下部が剛な境界条件であるために起こると考えられる.
  • 内村 太郎, 龍岡 文夫, 青木 一二三, 米澤 豊司, 北野 陽堂, 舘山 勝, 渡辺 健治, 田村 幸彦, 桝尾 孝之
    2003 年 18 巻 p. 153-160
    発行日: 2003/12/04
    公開日: 2009/12/17
    ジャーナル フリー
    良質な盛土材である粒度調整砕石をセメント混合により改良した盛土中に敷設された補強材の引き抜き試験を行った。同じ荷重レベルでの引き抜け量は、剛性の高いグリッドの方がかなり小さく、また、土被りが約2倍異なっても、拘束圧による引き抜け量の差は小さかった。また最大で約15mm~30mmの引き抜け変位が生じたが、荷重を除荷するとそのうち1/3程度が復元した。クリープ変位量も大きかった。また、同じジオグリッドの引張試験結果を別途行い、現場の引き抜け試験結果を比較する解析を行った。これらの結果から、柔らかい高分子補強材が、ジオグリッドが比較的固いセメント改良盛土材の中で引き抜かれる場合、張力の影響範囲が載荷とともに深い部分に拡大していき、セメント改良土と補強材のすべり特性だけでなく、補強材の引張変形特性が強く反映されていることが分かった。
  • 金重 正浩, 落合 英俊, 安福 規之, 河村 隆
    2003 年 18 巻 p. 161-166
    発行日: 2003/12/04
    公開日: 2009/12/17
    ジャーナル フリー
    近年、ジオグリッドを土中に敷設することで発揮される引張補強効果以外の効果として、拘束効果の存在が知られてきている。このような効果を現行の設計法に導入できればより合理的である。これまでの一連の研究で、拘束効果を現行の設計法に導入することを目的として、拘束効果の発現度合いを表現できる拘束効果パラメータを定義している。本研究では、拘束効果パラメータを一般化させるために、ジオグリッド上に作用する土被り圧に着目した。そこで、補強土を対象にした二軸圧縮試験を行い、土被り圧を制御した条件の下で、ジオグリッドを裁断することで段階的に引張補強効果を減少させた供試体を用いて、拘束効果の発現特性を考察した。
  • 龍岡 文夫, 平川 大貴, 内村 太郎, Warat KONGKITKUL
    2003 年 18 巻 p. 167-174
    発行日: 2003/12/04
    公開日: 2009/12/17
    ジャーナル フリー
    盛土の引張り補強用の石油高分子ジオテキスタイル補強材は、金属製補強材と比較すると剛性が低くクリープ変形しやすい。このことから、長期材令に対する設計引張り強度を、ひずみ速度1%/分程度の引張り試験で得られた引張り強度を1.0よりもかなり大きなクリープ破断に対する安全率で除して求めている。この方法は、以下の理由によって不合理である。従来の設計法は「クリープは劣化現象であり引張り強度は時間経過とともに減少する」という誤解を与えるが、クリープ変形は劣化現象ではなく材料粘性による応答である。引張り破断強度は破断時のひずみ速度に支配され、クリープ破断しない限りクリープ変形履歴に影響されない。地震時に生じる補強材の残留変形も荷重増加と粘性によるものであり、特にクリープ破断に対する安全率を考慮する必要がない。通常のジオテキスタイル補強盛土では、常時にジオテキスタイル補強材は引張り力が時間的に低減していて、クリープ破壊の可能性は非常に低いと考えられる。時間的な材料劣化が無い場合に対して、クリープ破断に対する安全率を用いず想定した破壊時のひずみ速度で引張り破断強度を定義する方法を提案する。
  • 平川 大貴, 高岡 秀明, 龍岡 文夫, 内村 太郎
    2003 年 18 巻 p. 175-182
    発行日: 2003/12/04
    公開日: 2009/12/17
    ジャーナル フリー
    豊浦砂をポリエステル補強材で補強した剛な壁面を持つ小型擁壁模型を作成し、1G場での模型載荷実験を行った。帯基礎を用いて盛土天端から鉛直載荷し、基礎の荷重~沈下特性に対する盛土と補強材の材料粘性の影響と、単調載荷・クリープ載荷・繰返し載荷という異なる載荷法が「基礎の変位~壁面に作用する土圧、補強材張力・ひずみの推移パターン~壁面の水平変位特性」に与える影響を調べた。その結果、a)基礎の鉛直変位特性と壁面の水平変位特性にも載荷速度依存性があること、b)クリープ載荷と繰返し載荷において生じる「基礎と壁面の鉛直・水平残留変位~時間関係」は定性的に等しいが、繰返し載荷時の方が残留変形の増加率が大きく収束が遅いこと、c)クリープ・繰返し載荷時において補強材ひずみは時間経過と伴に減少し、補強材がクリープ破断に至る傾向を示さないこと、が確認された。
  • 平川 大貴, 龍岡 文夫, 内村 太郎, W. Kongkitkul
    2003 年 18 巻 p. 183-190
    発行日: 2003/12/04
    公開日: 2009/12/17
    ジャーナル フリー
    近年での地盤工学の重要な議論の一つに、供用期間内に土構造物に生じる残留変形を見積もること、があげられる。本研究では、a)単調載荷試験,b)荷重保持載荷試験,c)荷重振幅と周波数を制御した繰返し載荷試験、を行い、高分子補強材の荷重保持載荷・繰返し載荷時における残留変形特性を検討した。一般的に繰返し載荷によって生じる高分子補強材の残留変形は、繰返し載荷回数や振幅等の載荷履歴(時間に依存しない変形要因)の効果と考えられてきた。しかし、本研究による検討によると、繰返し載荷による残留変形はほぼ材料粘性による載荷速度効果であることが分かった。すなわち、繰返し載荷による残留変形は、ほぼクリープ変形による時間依存変形である。
    さらに、本研究では時間依存変形特性を表現するために提案された非線形レオロジーモデルを用いることにより、繰返し載荷や荷重保持を含む載荷条件での高分子補強材の変形特性をシミュレーションすることが出来た。
  • 森口 周二, 八嶋 厚, 沢田 和秀, 前田 英史, 松本 七保子, 間 昭徳, 弓良 知, 久保田 薫
    2003 年 18 巻 p. 191-196
    発行日: 2003/12/04
    公開日: 2009/12/17
    ジャーナル フリー
    近年、多自然型河づくりの奨励、河川法の改正等により、既存の自然生態系の保全を考慮した多自然型河川護岸工法が考案されている。筆者らはこれまでに、河川護岸に対して、ジオグリッドを用いた「補強土護岸工法」を提案している。河川護岸に対して補強土工法を用いることにより、工期・工費の削減が可能であり、壁面の緑化が可能なため、自然共生型の護岸となる。補強土護岸工法の設計・施工法の確立を目的として、実河川における試験堤防構築、陸上での実大規模破壊実験、および室内でのモデル実験を行った。これらの結果に基づいて、設計・施工マニュアルを作成した。本論文では、設計マニュアルについて報告する。
  • 渡邉 一弘, 野坂 正, 近藤 誠二, 今川 圭太郎
    2003 年 18 巻 p. 197-200
    発行日: 2003/12/04
    公開日: 2009/12/17
    ジャーナル フリー
    近年,河川環境や生態系の保全が重視され,自然あふれる本来の河川を取り戻すことを目指し多自然型川づくりが実施されている.国土交通省土木研究所河川研究室との共同研究により,侵食防止シートの開発を行った.侵食防止シートを用いた河川改修工法は,植物の耐侵食力を補強することで流水による侵食作用を低減させ,堤防の環境保全および堤防被災・氾濫などの一因となる侵食を防止することができる.本論文では,侵食防止シート工法に関する2件の施工事例を報告する.
  • 横田 善弘, 吉田 眞輝, 篠原 久雄, 荒井 克彦
    2003 年 18 巻 p. 201-206
    発行日: 2003/12/04
    公開日: 2009/12/17
    ジャーナル フリー
    建設副産物である建設汚泥については,土質改良等により埋め戻し材料や盛土材料への活用が図られているが,全国的な利用率は約40%程度であり,より新しい積極的な有効利用が求められている.そこで,脱水及び流動化した建設汚泥にジオシンセティックスを用い,曲げ剛性を有する地盤補強材としての利用を考えた.さらに,セメント固化材使用時における六価クロム溶出対策についても検討を行った.本論文では,地盤補強材としての曲げ剛性評価試験と支持力特性を把握するための平板載荷試験,六価クロム対応型還元剤の性能評価試験などの結果を報告する.
  • 曹 健, 横田 善弘, 竜田 尚希, 伊藤 修二
    2003 年 18 巻 p. 207-210
    発行日: 2003/12/04
    公開日: 2009/12/17
    ジャーナル フリー
    一般的に,ジオグリッドを用いた補強土工法の土中での応力は,ジオグリッド表面に接着材で貼り付けられた歪ゲージの電気抵抗の変化により測定される歪から推定されている.しかし,詳細な長期計測を行う場合には,歪ゲージの寿命や多量の配線が必要となることなどから,その信頼性や施工性などの問題点が生じている.そこで,既に鋼構造やコンクリート構造物に用いられている光ファイバーのケーブルを用い,ジオグリッドに生じる歪を計測することで,ジオグリッドの性能を評価し,盛土の変状を検知することができるものと考えた.本論文では,光ファイバーを内蔵したジオグリッドの性能評価試験結果を報告する.
  • 巻内 勝彦, 峯岸 邦夫, 石井 大悟
    2003 年 18 巻 p. 211-214
    発行日: 2003/12/04
    公開日: 2009/12/17
    ジャーナル フリー
    インターロッキングコンクリートブロック舗装などのセグメント式舗装では,クッション層が交通荷重下での平坦性維持とブロック間の噛み合わせ効果に重要な役割を果たす。表層ブロック層は透水性を有しその雨水浸透作用でサンドクッションの路盤への流亡防止が問題であり,現下の良質砂の枯渇対策とコスト縮減のための対策としてのクッション層下部へのジオテキズタイル敷設は,分離効果と補強効果などが期待できる。繰返し荷重下でのジオテキスタイルの性能評価法として,本研究では,室内ローラーコンパクターを改良した輪荷重下のクッション層挙動をシミュレートする試験装置を用いた。試験は通常不織布と強化不織布の2種類の試験供試体について,舗装構造一定条件下で繰返し回数と耐久性,浸透水の有無の影響を調べた。
  • 河端 俊典, 内田 一徳, 田中 泰雄, 平井 貴雄, 斉藤 喜久雄, 澤田 豊, 中瀬 仁, 平山 豪隆, 今井 正幸
    2003 年 18 巻 p. 215-220
    発行日: 2003/12/04
    公開日: 2009/12/17
    ジャーナル フリー
    本論では,ジオシンセティクスを活用したスラスト防護工法の有効性を明らかにするため,∅90の模型パイプを対象に,乾燥砂地盤内で横引き実験を行い,その抵抗力について検討した.その結果,パイプの後方にジオグリッドを鉛直方向に設置する工法が,スラスト防護工法として極めて有効であるこが明らかになった.さらに,そのメカニズムについてDEM解析から検討を加えた.
  • 笹倉 剛, 田口 勝則, 石川 典男, 西村 元男
    2003 年 18 巻 p. 221-224
    発行日: 2003/12/04
    公開日: 2009/12/17
    ジャーナル フリー
    一般に城郭の石垣修復においては,文化財保護という観点から構築当時の景観や工法を再現し,それを後世に伝承することが重要とされる.その一方で,石垣の安定性確保も重要な課題であり,今回報告する城郭石垣修復工事では,防災上の配慮から現代土木工学技術を取り入れた工事が行なわれている.本論文ではこの一例として,石垣への作用土圧低減を目的に採用された,ジオテキスタイル補強盛土工法の施工事例について報告を行う.
  • 北本 幸義, 吉田 輝, 吉川 正, 柴田 健一, 秉崎 和孝, 八木 伊三郎
    2003 年 18 巻 p. 225-230
    発行日: 2003/12/04
    公開日: 2009/12/17
    ジャーナル フリー
    土質材料の弱点を補うために、補強や排水,分離,濾過,遮水などを目的として、これまでに多種多様なジオシンセティックスが開発・適用されてきたが、ジオテキスタイルをはじめとするこの種材料は形態的に面状であるのが一般的である。しかし、テキスタイルという意味合いでは、筒状の織物やホース状物などの袋(ジャケット)も代表的な形態であり、袋内にモルタルや流動化処理土などを填充することにより、従来にないジオシンセティックス材料として、地盤工学分野への貢献が期待される。具体的には、斜面安定対策におけるフリーフレームに替わる補強格子枠としての適用,軟弱地盤の表層処理に用いられるシート工法が抱える不同沈下対策への適用,トンネルの簡易支保覆工への適用,さらに杭の機能向上への適用などが挙げられる。本論文では、実用に供されている事例を含め、筒状織物,ホース状物の地盤工学分野への適用方法を紹介するとともに、効果を確認するための実験結果などについて述べ、今後の展開,将来への展望について言及する。
  • 柴 錦春, 三浦 哲彦, 野村 忠明, 米谷 宏史
    2003 年 18 巻 p. 231-236
    発行日: 2003/12/04
    公開日: 2009/12/17
    ジャーナル フリー
    キャップ付きドレーン(キャップドレーン)の特性及び真空圧と兼用して地盤を圧密する仕組みを説明した。地表に厚い高透水・透気性層が存在する場合、ならびに粘土地盤中に中間砂層が存在する場合におけるキャップドレーンの応用について数値解析で検討した。前者の場合には、水平方向の空気漏れによって気密シートだけで真空圧密を行うことは困難であり、改良領域周辺に遮断壁を設置する必要がある。この場合にキャップドレーンを利用すると比較的経済的に地盤を改良することができることが分かった。中間砂層が存在する場合には、その影響で下の粘土層中の真空圧が低下するが、キャップドレーンを利用すると、真空圧密の効果を高めることができることを示した。キャップドレーンと真空圧とを組み合わせる工法は、軟弱粘土地盤を圧密改良するのに有効な方法の一つと考える。
  • 青木 一二三, 米澤 豊司, 渡邉 修, 舘山 勝, 龍岡 文夫
    2003 年 18 巻 p. 237-242
    発行日: 2003/12/04
    公開日: 2009/12/17
    ジャーナル フリー
    兵庫県南部地震をはじめとするレベル2地震動に対し,橋台と橋台背面盛土を含めた橋台部全体系の耐震性能の向上が重要な課題となっている.現在,日本鉄道建設公団・鉄道総合技術研究所・東京大学では,共同研究として耐震性能を有する合理的な新しい形式の橋台の研究開発を実施している.その成果として,ジオテキスタイルで補強されたセメント改良補強土からなる橋台(以下「セメント改良補強土橋台」という)が提案された.今回,九州新幹線高田トンネル入り口付近に実際に構築したセメント改良補強土橋台について,レベル2地震動に対する耐震性能を確認することを主目的として,現地水平載荷試験を実施した.その結果,反力に用いた2連連結した橋脚に比べ,本橋台の変位量は半分程度と,大きな水平耐力を有していることが確認できた.また,橋台の変形モードは転倒モードであり,事前に設計・解析した変形モードと同じ結果であった.
  • 井澤 淳, 石濱 吉郎, 桑野 二郎
    2003 年 18 巻 p. 243-250
    発行日: 2003/12/04
    公開日: 2009/12/17
    ジャーナル フリー
    補強土壁の地震時変形量予測においては,補強土壁を構成する補強材および盛土材料の特性を把握することが重要であると考えられる.これまで筆者らは,補強材の剛性,引抜き抵抗が補強土壁の安定性に及ぼす影響を調べてきた.本研究では,盛土材の粒径に着目し,3種類の異なる粒径を持つ砂を用いた遠心傾斜台実験および遠心振動台実験を行った.その結果,傾斜台実験と振動台実験では破壊時水平震度は異なるものの,破壊断面(変形断面)は非常に良く一致していた.また転倒モードのTwo-Wedge法による安定計算では,遠心傾斜台実験の破壊断面および破壊時水平震度,振動台実験の変形断面を非常に良く算定できた.
  • 松島 健一, 毛利 栄征, 山崎 真司, Hoe. I. Ling
    2003 年 18 巻 p. 251-258
    発行日: 2003/12/04
    公開日: 2009/12/17
    ジャーナル フリー
    ブロック型補強土擁壁は1999年の台湾集集地震で甚大な被害を受けた.調査によるとブロック壁面全体の剛性やブロックと補強材の接続,補強材の敷設間隔が問題として挙げられている.そこで筆者らは補強材の敷設間隔やブロックと補強材の接続の影響に着目し,敷設間隔を変化させた実物大規模の振動実験を行った.
    本研究では,ブロック壁面と背面土の土圧や補強材,壁面変位などの地震時挙動からブロック型補強土擁壁の耐震性について検討を行った.
  • 倉持 裕子, 古谷 明寿, 内村 太郎, 龍岡 文夫
    2003 年 18 巻 p. 259-266
    発行日: 2003/12/04
    公開日: 2009/12/17
    ジャーナル フリー
    重量構造物の免震基礎としてのPLPS補強盛土は、初期固有振動数が入力振動数よりも小さい場合において、免震効果を示す。本研究では、PLPS補強盛土の模型振動台実験を種々の条件で行い、盛土の乾燥密度、プレストレスの大きさ、ラチェット装置の有無という各種条件がPLPS補強盛土の免震性能に及ぼす効果を検討した。また、プレストレスとラチェット装置が共振時の構造物としての強さに及ぼす効果を検討した。
  • 佐々木 康, 加納 誠二, 村川 奉嗣, 辻 誠治
    2003 年 18 巻 p. 267-274
    発行日: 2003/12/04
    公開日: 2009/12/17
    ジャーナル フリー
    地盤液状化時の耐震対策として、河川堤防や道路盛土などの土構造物の底部にジオグリッドを敷設する工法が有効であることが平成12年鳥取県西部地震時に確認された。この工法の適用限界を明らかにし、ジオグリッドの設計法の確立に必要な基礎資料を整えることを目的として、振動台実験を実施した。ジオグリッドの有無による天端沈下量、堤体および地盤変形量、間隙水圧等の挙動の違い、ならびに地下水位の高さによるこの工法の効果への影響を検討した。その結果、液状化層の厚くない場合にはジオグリッドにより模型盛土の変形が抑制されるのみならず、沈下量も抑制されることがわかった。
  • 安原 一哉, 棚橋 由彦, 宮田 善壽, 平井 貴雄, Chandan GHOSH
    2003 年 18 巻 p. 275-282
    発行日: 2003/12/04
    公開日: 2009/12/17
    ジャーナル フリー
    最近になって、Mechanical stabilizationの補強土工法とChemical stabilizationの地盤改良工法を組み合わせたハイブリッドな工法が提案されるようになって来た。著者らがここで提案しようとしているものもこのような観点に立った変形を抑制するためのハイブリッドなサンドイッチ工法である。ここで言うハイブリッドは、(1)使用する材料がハイブリッドであること、(2)使用するジオシンセティックスと他の材料を組み合わせるという両方を含んでいる。前者では、ジオコンポジットがそれに相当する。後者では、(i)他の材料と組み合わせて敷設するか、(ii)他の固化材料を添加・混合して付加価値を高めることを意図している。ここでは、(i)のうち、ジオシンセティックスに砂層を組み合わせることによって得られてきた3つのアドバンテージ:1)支持力改善効果,2)剛性改善効果,3)透水・通水性能維持するための、安定な基礎地盤と土構造物を構築することを狙いとしたものである。
  • 榊原 務, 安原 一哉, 小峯 秀雄, 村上 哲, Chandan GHOSH
    2003 年 18 巻 p. 283-290
    発行日: 2003/12/04
    公開日: 2009/12/17
    ジャーナル フリー
    本研究は、軟弱地盤を模擬した高含水比シルト地盤上の砂地盤にジオネットを敷設し、さらに砂地盤を固化剤によって固化させるというハイブリッドなサンドイッチ補強(HBS)方法の有効性に関する模型実験とその結果を考察したものである。小型模型土槽を用いた二次元平面ひずみ条件下での静的、繰返し載荷実験を行った。実験結果から、本方法の補強効果とその特性について考察した結果、本補強方法は、繰返し載荷をうける地盤の変形抑制に対して特に効果的であった。また、HBS補強地盤では、無補強地盤や固化材を注入しない地盤に比べて、地盤の支持力、剛性ともに顕著な改善効果が示された。特に、繰返し荷重に対する剛性改善に寄与していることが特筆される。また、高含水比シルト地盤内は、間隙水圧と土圧の発生を顕著に低減させる効果も観測された。これは、地表面の剛性が補強によって高められた結果と推測される。
  • Chandan GHOSH, 安原 一哉
    2003 年 18 巻 p. 291-298
    発行日: 2003/12/04
    公開日: 2009/12/17
    ジャーナル フリー
    本論文は、ジオコンポジットと薄い砂層からなる3つの異なるハイブリッドな排水システムの水平方向の透水特性を実験的に調査したものを報告する。これらの排水システムにおいて関東ローム、人工的なシルト質粘土の2種類の細粒土に対して実験を行なった。2つの粘性土によって薄い砂層と同様に1枚のジオコンポジットの試験もさらに別々に行われた。これらの排水は400kPaまで1の荷重増加比でスラリー状から圧密された。50kPaの圧密圧力により圧密したとき100mmの厚さの供試体になるスラリー状の土の重量を求めた。圧密中、排水層からの排水が出来るのと同時に、圧密の各段階において排水層内に水平方向の水を流す流動試験も可能な装置を作り上げた。ジオコンポジットのみを用いた透水試験結果では圧密圧力が増加すると透水量が減少する。しかし、ジオコンポジットの上下に薄い砂を挟んだハイブリッドシステムでは透水量の減少を抑えることが出来た排水層の透水係数は土の透水係数は高く、実験結果より105ぐらい高くなければならない。土の中にあるジオコンポジットの透水係数はクロッギングしていないジオコンポジットの30%以下になる。この研究は、クロッギングに対する保護材として薄い砂層がよく機能することが確認できた。
  • 嘉門 雅史, 楠部 義夫, 赤井 智幸, 福田 光治
    2003 年 18 巻 p. 299-304
    発行日: 2003/12/04
    公開日: 2009/12/17
    ジャーナル フリー
    水平排水補強材(GHD)の設計では排水性と摩擦特性が重要な役割を果たしている。本論文ではこのうちGHDの摩擦係数と試験方法に関する研究成果を示す。摩擦試験方法として一面せん断試験と引き抜き試験をとりあげ,また一面せん断試験をスライディング船底方式とスライディングブロックの2つに分け,試験方法によってGHD材も摩擦係数が異なる傾向にあることを示す。開発されたGHDは様々な構造と材料があるが,摩擦係数はGHD材の種類よりも試験法による違いが大きく,スライディング船底方式>スライディングブロック方式>引抜き方式の関係があり,既存研究成果と類似した結果が得られた。
  • 巻内 勝彦, 峯岸 邦夫, 増田 貴之
    2003 年 18 巻 p. 305-310
    発行日: 2003/12/04
    公開日: 2009/12/17
    ジャーナル フリー
    盛土内の浸透水の排水対策は盛土体の安定性向上を図るため大切であり、特に高含水粘性土の強度増加、間隙水圧低下、補強領域形成の目的で、排水性と引張り強度を有する面状ジオテキスタイル等のジオシンセテティックス・ドレーン材を敷設する方法がある。しかしながら現状では盛土・ジオドレーン複合構造体の透水・通水性能の相互作用や目詰まり現象などの水理特性が十分に解明されていないことから合理的な設計や材料選定に至っていない。本研究では、試料土に関東ロームと比較的透水性の良好な川砂、不織布を使用して、土とドレーン材の室内土槽モデル試験およびFEM浸透解析を行い、試料土の種類、ジオテキスタイル厚、敷設枚数、敷設間隔上載荷重、水頭などの諸条件の影響を調べ考察した。
  • 竜田 尚希, 河内 昌弘, 村松 武馬, 中村 幸生, 伊藤 修二
    2003 年 18 巻 p. 311-316
    発行日: 2003/12/04
    公開日: 2009/12/17
    ジャーナル フリー
    現在,静岡空港では本体用地造成工事が進められている.造成工事は,総盛土量2,600万m3,最大盛土高75mに達する大規模高盛土工事である.盛土材として使用する発生土はすべてが良質なものとは限らず,一部含水比の高い盛土材を使用しなければならない.そこで,水平排水材を用いて,盛土の圧密を促進させ,排水補強効果による盛土の安定性を図る計画とした.しかし,水平排水材の効果については不確定な要素も多いことから,試験盛土を構築し,動態観測により盛土の挙動および排水材の効果を調査した.また,この試験盛土に対してFEM解析を実施し,水平排水材の効果を再現し,動態観測による実測値と比較検討した.
  • 嘉門 雅史, 赤井 智幸, 楠部 義夫, 福田 光治
    2003 年 18 巻 p. 317-322
    発行日: 2003/12/04
    公開日: 2009/12/17
    ジャーナル フリー
    排水補強材(GHD)は粘性土による盛土補強を対象に開発されている.従って盛土中あるいは盛土後の外力により大きな変位が予想される.こうした変位は一般的には限界状態設計法では使用限界の規定要因になる.一方GHDの設計は内的安定,外的安定が検討され,極限釣り合いあるいは斜面安定解析が基本になる.限界状態設計論では終局限界状態に対応している.従ってGHD盛土における限界状態設計論の導入は種々の問題が存在していることが予想される.本論文ではGHD補強盛土を対象に,限界状態設計論の適用条件を分析した結果を示す.この場合限界状態設計論が最も進んでいる鉄筋コンクリート,海洋構造物及びトンネルにおける検討結果を基準に比較する.比較検討結果からGHD補強盛土に限界状態設計を適用する場合,GHD盛土自体の挙動から考えると限界状態設計論を導入する目的が不明瞭であること,しかし他の構造物の使用限界で規定される可能性があることを示す.
  • 米澤 豊司, 矢崎 澄雄, 篠田 昌弘, 舘山 勝, 古関 潤一
    2003 年 18 巻 p. 323-330
    発行日: 2003/12/04
    公開日: 2009/12/17
    ジャーナル フリー
    筆者らは,補強土壁構造物の従来設計法からライフサイクルコストを含めた変形性能照査型の限界状態設計法への変換の研究を行っている.今回,鉄道の設計基準による補強土壁構造物(RRR工法)の従来設計を,部分安全係数を有する限界状態設計法の性能評価関数に変換し,コードキャリブレーションを行い,従来設計法による補強土壁構造物の構造仕様と等価となるような限界状態設計法の部分安全係数の設定を試みた.さらに,計画壁高さ5m,7m,10mの補強土壁構造物の設計を従来設計法で行い,決定された構造仕様に対する信頼性設計をモンテカルロシミュレーシュンで行った.その際,支配的な破壊モードに対して,限界状態超過確率や部分安全係数を求め,従来設計法との安全性の比較,コードキャリブレーションで設定した部分安全係数との比較検討を行ったので報告する.
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