ジオシンセティックス論文集
Online ISSN : 1883-146X
Print ISSN : 1344-6193
ISSN-L : 1344-6193
24 巻
選択された号の論文の41件中1~41を表示しています
特別講演
  • 小竹 望
    2009 年 24 巻 p. 1-16
    発行日: 2009年
    公開日: 2010/01/22
    ジャーナル フリー
    廃棄物海面処分場においては, 遮水シート, 不織布などジオシンセティックス材料が主要材料として用いられている. 廃棄物海面処分場では, その特有の環境条件である波浪・潮汐などの海象条件, 地震や軟弱な沖積粘性土の沈下に伴う護岸変形, 遮水シートの海上作業などに対する配慮が必要である. 本稿では, まず廃棄物海面処分場の遮水性能に係る法令や構造規定を概説し, 実際に用いられているシート遮水工の構造と構成材料について述べる. 次に, 廃棄物海面処分場の事例を二件紹介する. 一つは, 透水性地盤に廃棄物海面処分場を築造するプロジェクトにおいて, 二重の遮水シートからなる表面遮水工を処分場の底面および側面に敷設する構造に関して実施した解析・設計・施工の概要を紹介する. もう一つは, 廃棄物海面処分場に用いる土質系不透水性材料として開発した線状高分子混合処理土の材料特性と実施工への適用を紹介する.
論文
  • 岡村 昭彦, 中村 圭一, 宮崎 京太郎, 山本 拓治, 伊達 健介, 岩野 圭太
    2009 年 24 巻 p. 17-22
    発行日: 2009年
    公開日: 2010/01/22
    ジャーナル フリー
    従来より地すべり対策として施工されている保孔管は,塩ビパイプが一般に使用されているが,対象が砂質地盤の場合,土砂流出による地山崩壊や,目詰まりが懸念される.本研究ではジオテキスタイルを筒状に加工したパイプジャケット1)を用いて,保孔管としての適用性を検討した.室内実験においてパイプジャケットは表面に無数の小さな孔が開いており集水効果が高く,ジオテキスタイルの特徴であるフィルター層がパイプジャケット表面に形成されてろ過機能が発現されることが確認された.これらの知見をもとに地すべり地帯において試験施工を行い有孔塩ビパイプとの比較試験を行った.この結果パイプジャケットは土砂流出抑制,排水量供に有孔塩ビパイプよりも優れることが確認できた.
  • 狩野 真吾, 近藤 三樹郎, 鳥居 一春, 竹内 克昌
    2009 年 24 巻 p. 23-30
    発行日: 2009年
    公開日: 2010/01/22
    ジャーナル フリー
    処分場での遮水シート工では,貫入破壊は安易に想定される破壊現象である。遮水シート工の信頼性を向上させるためには,この突刺し貫入に対し,その破壊過程や,異なる環境条件下での貫入抵抗の相違などの基礎的情報を把握しておく必要がある。遮水シート工は不織布などの保護マットを用いた多層構造になっているので,遮水シート単体,保護マットと重ね合わせた二層,さらに保護マット複数枚と遮水シートを重ねた三層および五層の遮水シート工を対象に,遮水シート工の貫入実験を行い,貫入特性の特徴や,保護マットの保護性能について知見を得た。
  • 西村 正樹, 赤井 智幸, 和田 昭太, 新開 千弘, 浅田 毅, 嘉門 雅史
    2009 年 24 巻 p. 31-36
    発行日: 2009年
    公開日: 2010/01/22
    ジャーナル フリー
    廃棄物最終処分場の最終カバー層に用いるキャッピング材料として、筆者らは、多孔質シートと不織布から成るジオコンポジット(GC)を開発し、その適用性を評価してきた。通常、処分場に最終カバーをする場合、その最上層には覆土が設置されるが、GCが遮水性を有することに由来して、斜面部に敷設した場合、GCと覆土の界面、あるいは覆土内でのすべりが懸念される。したがって、GCを斜面部に適用するためには、降水の影響を含めた検討が必要である。本研究では、屋外の実験斜面(勾配1:2.0)にGCを敷設し、上部に層厚0.5 mの覆土を設置して、斜面の安定性を評価した。その結果、施工後1年が経過しても、GCおよび覆土は、すべりに対する安定性を有していることが確認された。また、GCを適用した斜面部最終カバー層について、設計方法の概要を示した。
  • 及川 照靖, 小峯 秀雄, 安原 一哉, 村上 哲
    2009 年 24 巻 p. 37-42
    発行日: 2009年
    公開日: 2010/01/22
    ジャーナル フリー
    近年,湖沼等の閉鎖性水域において水質悪化が顕著であり,様々な対策が施されている.その対策の一つとして挙げられる覆砂工法は,湖沼の富栄養化の抑制に有効な工法とされている一方で,水深の浅い小規模な湖沼においては,水深の低下による湿原化が懸念される.本研究では,ジオシンセティックスを用いることにより,富栄養化の一因となるリンおよび窒素に対して高い吸着効果を発揮する吸着材料を挟み込み,シート状に敷設する工法に関する基礎的研究を行った.本工法により湖沼底質上への吸着材料の施工,またその栄養塩溶出抑制効果が減少した後の撤去が容易となる.このシートの栄養塩溶出抑制効果を,実際の湖沼底質を利用した水槽模擬試験により実験的に調査した結果,リンおよび窒素を吸着したことによる,濁度の抑制効果が認められた.
  • 木幡 行宏, 神 智子, 弘中 淳市, 平井 貴雄
    2009 年 24 巻 p. 43-48
    発行日: 2009年
    公開日: 2010/01/22
    ジャーナル フリー
    不織布(ジオテキスタイル)をフィルター材として土中に敷設した場合,土粒子の侵入・捕捉に伴った目詰まりによる透水性能の低下が予想される.本研究では,不織布の垂直方向透水性能に及ぼす諸要因を検討することを目的として,製造方法や厚さが異なる種々のジオテキスタイルを試料土層(千葉ローム)と礫層の間に挟んだ供試体に,動水勾配i= 1 及び 4 として,定水位透水試験を実施し,種々の不織布の垂直方向透水性能について検討した.実験結果に基づいて,経過時間に対する透水量から算出した透水係数,単位体積目詰まり量,および垂直方向透水性能に及ぼす動水勾配や温度(水温)の影響に着目して考察を加えた.最終的に,本研究において対象とした千葉ロームに対して,目詰まりが生じにくい不織布を評価した.
  • 内田 一徳, 松田 光平, 岩出 郁美, 宮川 智弘, 河端 俊典, 井上 一哉
    2009 年 24 巻 p. 49-54
    発行日: 2009年
    公開日: 2010/01/22
    ジャーナル フリー
    近年,全国にある多くのため池が老朽化により改修の必要性が生じている.また,将来予想される地震を考慮して,ため池の耐震化が急務となってきており,ジオグリッドを用いた補強土工法を堤体に適用することなどが提案されている.しかしながら,ジオグリッド敷設が堤体の透水特性に与える影響については未解明のままである.そこで本研究では,ジオグリッドの有無が補強地盤の透水特性に与える影響を明らかにするため,大型三軸セル透水実験装置と大型土槽透水実験装置を用いて実験を行った.その結果,ジオグリッドが地盤の透水特性に与える影響は極めて小さいことがわかった.
  • 梅崎 健夫, 河村 隆, 岡村 昭彦, 倉田 正博
    2009 年 24 巻 p. 55-60
    発行日: 2009年
    公開日: 2010/01/22
    ジャーナル フリー
    袋詰脱水法(従来法)に真空圧密を応用した袋詰真空脱水法を提案している1).前報1)では,ジオシンセティックス製の袋内に排水層としてプラスチックボードドレーンを挿入して比較実験を実施し,脱水効率を大幅に向上できることを示した.本報では,袋詰真空脱水法を発展させるために,袋の外側に排水層を設置する方法を提案した.この方法は非常に簡便であり,効率的な施工が可能となる.従来法および袋内に排水層を設置した方法との比較実験(笠岡粘土:約320kg,w0≒130%≒2.1wL)を実施し,本提案の有効性を示した.さらに,袋の内容物量と袋の形状の関係を検討し,効率的な排水面の形状および新しい施工方法の提案も行った.
  • 張 鈞, 安福 規之
    2009 年 24 巻 p. 61-68
    発行日: 2009年
    公開日: 2010/01/22
    ジャーナル フリー
    ジオグリッド補強された土構造物は1980年から補強の分野において重要な役割を担っている。一般的に、ジオグリッド補強構造物を設計する際は、ジオグリッドの相互作用挙動は直接検討されていない。その代わりに、相互作用強度は土の圧密排水強さによって説明されている。しかし、土の強度を強め、多大な保守性を有する締め固めやサクションの効果は考えられていないため、工事において余計な費用を費やしてしまっている。さらに、適切な排水法によると、設計時は土構造物の持続性に対する水の影響は特に考えられていない。その結果、補強された土構造物は降雨によって崩壊してしまう可能性がある。したがって、締め固め効果やサクションの影響が土構造物の挙動に影響していると考える傾向にある。このような傾向にあるように、降雨による崩壊を避けるために、ジオグリッドの相互作用挙動を注意深く調査する必要がある。本研究では、降雨の浸透をシミュレーションした引き抜き試験によって、降雨の浸透と圧密の影響について考察する。相互作用挙動において浸透効果を調査するために、浸透した供試体の引き抜き挙動は、乾燥状態のものと最適含水比の状態の供試体と比較する。そして、引き抜き試験の供試体は、圧密の影響を考慮し、さまざまな温度下で圧密を行った。試験の結果は、浸透することでジオグリッドの相互作用の引き抜き強さは著しく減少したことが分かった。その一方で、締め固めにより引き抜き強さの浸透の害を緩和することはできなかったが、引き抜き強さのピークは明らかに強めることができた。
  • グエン ホアン・ジャン, 桑野 二郎, 井澤 淳, 関 栄, 橘 伸也
    2009 年 24 巻 p. 69-74
    発行日: 2009年
    公開日: 2010/01/22
    ジャーナル フリー
    除荷-再載荷過程におけるジオグリッド周辺のせん断ひずみ分布と体積変化特性を求めるため、PIV(Particle Image Velocimetry)法による模型地盤内の粒子移動の計測と有限要素法で使わる手法を用いたひずみ計算を行い、模型ジオグリッドと周辺の土の相互作用を調べた。実験では、ピークの前、ピーク時、およびピーク後の残留状態において、地震時の挙動を模擬してジオグリッドを前後に動かして載荷-除荷を行った。その結果、ひずみは特に横方向部材の上側前部に集中していた。体積膨張特性が横方向部材前部に見られ、逆に後部では収縮傾向が見られた。また、ジオグリッドの長手方向で、横方向部材ごとにこのような膨張・収縮の傾向が認められた。
  • 清田 隆, 相馬 亮一, Munoz Henry, 黒田 哲也, 太田 準一郎, 原田 道幸, 龍岡 文夫
    2009 年 24 巻 p. 75-82
    発行日: 2009年
    公開日: 2010/01/22
    ジャーナル フリー
    これまで補強土構造物にアンカー力を生かした引張り補強材としてジオセルが採用された例はほとんどなく、また独特の構造的特徴があるジオセルが盛土内の引張り補強材としてどの程度効果的に機能するのか検討した研究もほとんどない。本研究では、引張り補強材としてのジオセルの機能を検討することを目的とした。ジオセルの高さと敷設長を変えた引抜き試験により、ジオセルの引き抜け抵抗はジオセルの高さよりも敷設長に依存することを確認した。また、ジオセルは引張り力を加えた先端から深部に向けて進行的に変形したが、その傾向は敷設長により異なった。これら一連の実験から、敷設されたジオセル全体の平均的引張り剛性が高くなり進行的変形が小さくなれば効果的に引抜け抵抗を増加できることが分かった。そのようにすれば、ジオセルは鉛直方向に強度・剛性を持ち大粒径の盛土材に適用できる引張り補強材として利用できる可能性がある。
  • 平川 大貴, 宮田 喜壽
    2009 年 24 巻 p. 83-90
    発行日: 2009年
    公開日: 2010/01/22
    ジャーナル フリー
    従来,高分子補強材の長期クリープ変形量の評価は,一定温度下でのクリープ試験で行われてきた。しかしながら,従来の方法では設計耐用年数と同等な長期試験を実施することは現実的に不可能である。本研究では熱-時間換算則に基づいた促進クリープ試験を実施し,短時間で設計耐用年数に相当する長期クリープ変形量を評価する方法を検討した。様々な材質・構造を持つ計4種類のジオグリッドを用い,a)促進クリープ試験とb)従来の一定温度下でのクリープ試験を実施して,両者を比較することで促進クリープ試験の適用性を検証した。この結果,材質・構造に関わらず,促進クリープ試験結果は従来の一定温度下でのクリープ試験結果と高い整合性があることが確認できた。
  • 河端 俊典, 花澤 貴文, 毛利 栄征, 泉 明良, 柏木 歩
    2009 年 24 巻 p. 91-96
    発行日: 2009年
    公開日: 2010/01/22
    ジャーナル フリー
    農業用パイプライン等の圧力管曲部には,その曲角度と内圧の大きさに応じてスラスト力が発生する.現行の設計基準では,大きなスラスト力が発生する場合,曲管部にコンクリートブロックを設けることでスラスト力を支持するが,コンクリートブロックは重量構造物であるため,地震時の位相差による継手離脱などの被災原因にもなっている.筆者らはスラスト力の対策工法として,ジオグリッドを用いた軽量なスラスト防護工法を提案し,検討を進めている.本研究では,スラスト防護工法として流動化処理土を用いる際の各種補強材の効果について,曲げ試験を行い,さらにPIV(Particle Image Velocimetry:粒子画像流速測定法)による画像解析を行うことにより検討を加えた.
  • グェン コン ザン, 木幡 行宏, 片桐 雅明, 大久保 達郎
    2009 年 24 巻 p. 97-104
    発行日: 2009年
    公開日: 2010/01/22
    ジャーナル フリー
    現在, ベトナム,ハノイ市では,交通渋滞の解決を目的とした地下鉄,地下駐車場,地下歩道,地下街の建設など多くの都市地下開発が計画されている.しかしながら,ハノイ市域における地下構造物の建設に伴う地盤の力学的性質は未解明な部分が多い.また,ハノイ市域は,軟弱な粘土地盤が厚く堆積していることが多く,圧密沈下が発生しやすいことから,より強固な地盤に改良する必要がある.そこで,本研究では,近年,埋戻し材としてよく用いられるようになってきた流動化処理土を繊維質材で補強し,その圧密・せん断特性を評価するために,一連の段階載荷による圧密試験,および圧密非排水三軸圧縮試験を実施した.その結果,流動化処理土に繊維質材を添加すると,1) 圧密降伏応力が増加すること, 2) 繊維質材の補強効果により脆性的な性質が改善され,沈下抑制効果が大きくなること,などの知見が得られた.
  • 三上 大道, 古関 潤一, 佐藤 剛司, 矢嶋 千浩
    2009 年 24 巻 p. 105-112
    発行日: 2009年
    公開日: 2010/01/22
    ジャーナル フリー
    廃ガラスを破砕した粗粒材料は砂や礫の代替材料としての有効利用が期待されているが,締固めを行うと粒子が側方へ流動してしまい,締固め効率が低いという問題点を持つ.そこで,ジオグリッドによる粒子の拘束効果に着目し,大型モールドを用いた室内締固め試験を行った.その結果,ジオグリッドを併用することで締固め効率が向上する結果が得られた.さらに,ジオグリッドを併用して締固めた廃ガラスリサイクル粗粒材料の三軸試験を実施した.後者の試験条件のもとでは,ジオグリッドの有無による締固め度の差は見られず,どちらも締固め度100%を超える密な状態となった.また,単調載荷時のピーク強度はジオグリッドを有する場合の方が高いが,繰返し載荷時の剛性には大きな違いは見られなかった.
  • 大村 寛和, 田中 祐二, 篠田 昌弘
    2009 年 24 巻 p. 113-118
    発行日: 2009年
    公開日: 2010/01/22
    ジャーナル フリー
    従来,土留め壁構造物における健全度診断法は目視が主体であり,定量的な評価は確立していない.そこで,小型起振器を用いた非破壊試験法を開発した.この試験法は軽量で小型の起振器を壁面工天端に設置し,強制振動を与えることで,壁面工を振動させ,壁面工の固有振動数を測定するものである.得られた固有振動数を用いて解析を実施し,逆解析により健全箇所と不健全箇所の地盤反力係数を比較することで,補強土壁構造物の健全度を定量的に把握することが可能かどうかを検討したので報告する.
  • 河合 勇人, 川村 國夫, 久保 哲也, 小林 喬
    2009 年 24 巻 p. 119-124
    発行日: 2009年
    公開日: 2010/01/22
    ジャーナル フリー
    2007年3月25日に能登半島沖40km付近,マグニチュード6.9(震度6強)の能登半島地震が発生した.この能登半島地震により,道路・空港・鉄道施設,斜面および地盤(液状化)など,能登半島の多くの箇所で甚大な被害が発生した.能登有料道路付近では,700~900galの地震加速度が計測され,徳田大津ICから穴水ICの区間の11箇所で盛土が大規模崩壊した.崩壊箇所は,暫定復旧により早期の復旧が図られ,その後,本復旧が施工された.本復旧は,強化復旧としてジオテキスタイルを用いた補強土工法で行われた.大規模崩壊した11箇所の一つである呼び名「縦-9現場」については,崩壊箇所の中でも延長250m,高さ25mと崩壊規模が大きいことから将来的に補強土の健全性が評価できるセンサー機能付補強土により復旧した.本論文は,「縦-9現場」での本復旧の施工時に実施した動態観測および施工後の計測結果について報告するものである.
  • 王 宗建, 竜田 尚希, 服部 浩崇, 辻 慎一朗, 太田 秀樹
    2009 年 24 巻 p. 125-130
    発行日: 2009年
    公開日: 2010/01/22
    ジャーナル フリー
    平成20年6月14日に発生した岩手・宮城内陸地震により,震央から北西約4.5kmの地点に位置する補強土壁の壁面が170mm程度前方へ変位し,一部の壁面材(コンクリートパネル)が損傷した。この補強土壁は、壁面材と補強盛土体の間に空間を設けており、締固めによる盛土の変形を十分に吸収し、壁面に荷重が伝らない二重構造である。補強盛土体の締固めが、壁面と独立して実施できるため、盛土の締固めを壁面近傍まで十分に行えることが特徴である。地震発生から約10ヶ月経過後も壁面変位の増加は見られず,補強土壁は安定した状態であると評価されたため,損傷の大きい箇所の壁面材のみを取替えることとなった。また,補強土壁の補強領域の健全性を検証するため,2次元表面波探査も実施された。本報告では、その補強土壁の変状の状況と,補修工事の状況を述べる。
  • 常田 賢一, 寺西 弘一, 野村 雄樹, 竜田 尚希
    2009 年 24 巻 p. 131-136
    発行日: 2009年
    公開日: 2010/01/22
    ジャーナル フリー
    地震に強い道路ネットワークを整備するためには,ネットワークを構成する道路盛土でも耐震補強が必要である.道路盛土での耐震補強の普及のためには,経済的な工法開発が前提となるが,筆者らは性能評価の視点から,すべり破壊制御の設計概念を提案している.本論文は,すべり破壊制御のための具体的な設計理念の一つとして提案している“天端補強構造”に加えて,“人工基盤構造”の設計理念を新たに提案する.そして,ジオテキスタイルを用いた天端補強,盛土材の改良による強化地盤および人工基盤およびそれらを組み合わせた耐震補強対策について,震度法による常時および地震時(レベル1相当地震動,レベル2相当地震動)に対する安定性の比較、検討を行い,ジオテキスタイルを用いた天端一体化工法の適用の多様性を考察している.
  • 福田 光治, 西浦 譲二, 西 英典, 山崎 智寛
    2009 年 24 巻 p. 137-142
    発行日: 2009年
    公開日: 2010/01/22
    ジャーナル フリー
    降雨に対する斜面崩壊防止対策工としてのジオシンセティックス補強法の役割を概略的・総合的に評価する方法を検討する.斜面崩壊防止方法を体系化することによって要求される性能や材料特性あるいは構造様式や組み合わせなどの意義づけを行い,ジオシンセティックス補強材による開発の方向性を定量的に明確にすることを目的とする.特に表層からの浸透効果を検討する.使用したモデルは斜面の3平行層モデルであり,表層からの浸潤化,滑り面からの地下水上昇の影響を組み入れるモデルを設定した.そして平行層モデルの一般化の範囲を明確にして,ジオシンセティックス材料の役割あるいは付与する性能の評価を行った.また進行性斜面崩壊現象を定義し,日常的な斜面の維持管理におけるジオシンセティックス材料や開発方向を明確にする試みを行う.
  • 松岡 元, 野本 太
    2009 年 24 巻 p. 143-150
    発行日: 2009年
    公開日: 2010/01/22
    ジャーナル フリー
    D・BOX 工法とは、「土のう」を現代の地盤対策施工技術として活用出来るように開発された工法であり、もはや「土のう」と呼べないほど進化しているためD・BOX(Divided Box)と名付けた。ここでは、本工法を使って超軟弱地盤(沼地)上に国道の建設を行なった事例と、その道路脇の沼地でD・BOX 上の載荷試験を行なった結果を報告する。砕石入りのD・BOX が透水層としても働き、最も強度を必要とする直下の周辺軟弱地盤を局所的に圧密・強化して、支持力を短期間に増大させる。さらに、D・BOX が振動エネルギーを袋に包まれた土粒子間の摩擦熱エネルギーとして消散させる高減衰の防振(免震)装置としての機能を果し交通振動や地震動を低減させる効果について、振動実験結果と道路施工の計測事例を示す。
  • 小林 幹人, 関 雅樹, 渡邊 康人, 可知 隆, 古関 潤一, 高橋 大
    2009 年 24 巻 p. 151-156
    発行日: 2009年
    公開日: 2010/01/22
    ジャーナル フリー
    地震時のバラスト流出による軌道変位を抑制するため,ジオテキスタイル素材の網目袋(以下,ジオテキバッグと記す)にバラストを詰め,それを道床肩部に沿って積上げ積層体としたバラスト流出防止工が提案されている.本研究では,ジオテキバッグの基本性能を確認するための各種試験を行った.三軸圧縮試験では,ジオテキバッグに詰めたバラストは通常のバラストに比べ,バッグの張力に起因するみかけの粘着力が付加されることで強度が増し,主応力方向に対して一定の傾斜角までその効果があることを確認した.実施工を模擬した耐切創性試験では,高強度繊維を配合することでバラストを詰めてプレートコンパクターで転圧した際の袋の折損を抑えられることを確認した.耐紫外線性についてスーパーキセノンウェザーメータによる促進曝露試験を行った結果,長期間の紫外線照射を受けても必要強度に対して十分な耐久性があることが確認できた.
  • 水平および傾斜した土嚢積層構造の違いと耐震メカニズム
    松島 健一, 毛利 栄征, 龍岡 文夫
    2009 年 24 巻 p. 157-164
    発行日: 2009年
    公開日: 2010/01/22
    ジャーナル フリー
    ため池は築造年代が古いものが多く,現在の設計基準と比較して不適格なものがかなり存在する.その一方,近年では豪雨や地震による災害リスクへの対応が社会的な課題となっており,減災効果が期待できる強化復旧技術の開発が強く望まれている.そのため,本研究では地震に強い堤体構造を開発することを目的に,土嚢積層システムを適用した補強ため池堤体の実物大の振動実験を実施した.実験では,通常の水平積み(δ=0°)および石垣のように背面側に傾斜積み(δ=18°)した実物大模型(堤高2.7 m, 下流勾配1H:1V)を作成し,規則波による段階加震を行った.その結果,水平積みタイプは最大加速度500gal 時点で土嚢間に滑動破壊が生じたが,傾斜積みタイプでは1,000gal でも土嚢間には滑動破壊が生じず,耐震性が大幅に向上することがわかった.
  • 河端 俊典, 澤田 豊, 泉 明良, 柏木 歩, 花澤 貴文
    2009 年 24 巻 p. 165-170
    発行日: 2009年
    公開日: 2010/01/22
    ジャーナル フリー
    筆者らは,圧力管曲部に作用するスラスト力の対策工法として,ジオグリッドを用いた軽量なスラスト防護工法を提案し,これまでに模型実験,数値解析,大規模模型埋設実験験ならびに振動台実験などによって当提案工法がスラスト対策工法として有効であり,耐震性に優れていることを明らかにしてきた.本研究では,サイホン部緊急布設替えの施工に際して,当提案工法を採用し,管内水圧,周辺地盤の土圧,ジオグリッドの発生ひずみを計測した.計測結果から,現場においても当提案工法の有効性が実証された.
  • 河端 俊典, 柏木 歩, 毛利 栄征, 奥野 哲史
    2009 年 24 巻 p. 171-176
    発行日: 2009年
    公開日: 2010/01/22
    ジャーナル フリー
    近年,埋設パイプライン施工時の埋戻しに際して,流動化処理土を用いる事例が増加している.本論では,スラスト力が作用する曲管部の受働側地盤における埋戻し材に流動化処理土を使用するとともに,その中に補強材を敷設することにより,受働抵抗力増加を図る新たなスラスト防護工法を提案し,口径260mmの模型パイプを使用した水平載荷模型実験を実施した.計測項目は,パイプに作用する水平荷重,パイプの水平変位である.実験結果より,補強材が,流動化処理土の有する脆性的な性質を改善し,受働抵抗力増加に寄与することがわかった.また,補強材の種類が受働抵抗力の増減に影響を与えることが明らかとなった.
  • 渡辺 健治, 松丸 貴樹, 舘山 勝
    2009 年 24 巻 p. 177-182
    発行日: 2009年
    公開日: 2010/01/22
    ジャーナル フリー
    粒度調整砕石に少量のセメントを添付したセメント改良礫土は高い強度・変形特性を有することが知られている.このセメント改良礫土にジオグリッドを併用すると,セメント改良礫土が圧縮力,ジオグリッドが引張力を負担することにより、曲げ剛性を有する複合材料となる.この複合材料を軟弱地盤上の盛土構築に用いることにより,地盤改良を大幅に低減することができる.本論分では,この複合材料の曲げ特性に関する材料試験,模型実験について概括し,軟弱地盤上あるいは液状化地盤上の盛土構築方法の考え方,設計法,および施工事例を紹介する.
  • 多田 毅, 宮田 喜壽, 平川 大貴, 近藤 誠二, 今川 圭太郎, 寺田 泰昌
    2009 年 24 巻 p. 183-188
    発行日: 2009年
    公開日: 2010/01/22
    ジャーナル フリー
    多自然型の河川環境整備技術として,ジオシンセティックスを用いた侵食防止技術が注目されている.本研究は,より侵食防止効果の高いジオコンポジットの形状について検討するため,長さ16mの水路実験を行った.本論文では,その実験結果を報告し,ジオコンポジットの耐侵食効果の評価パラメータを提案する.
  • 辻 慎一朗, 原 隆史, 八嶋 厚, 吉田 眞輝
    2009 年 24 巻 p. 189-192
    発行日: 2009年
    公開日: 2010/01/22
    ジャーナル フリー
    山間部の多いわが国ではこれまで膨大な落石防護柵が構築されてきた.しかしながら,落石調査の際に,既設落石防護柵の可能吸収エネルギー以上の落石発生源が新たに発見されることも少なくなく,既設落石防護柵が機能不足となっている例も多い。これに対し,その都度新たな落石防護柵を再構築することは費用の観点から現実的ではないため,合理的な対策工の開発が急務となっている.本論文では,繊維製のエネルギー吸収ネットを用いて,既存の落石防護柵を有効に活用し,既設落石防護柵の不足する機能の向上をはかる合理的な対策を提案する.
  • 柴 錦春, Chin Yee ONG
    2009 年 24 巻 p. 193-200
    発行日: 2009年
    公開日: 2010/01/22
    ジャーナル フリー
    真空圧と載荷荷重(盛土)を組合せた場合の粘性土地盤の変形特性について室.大型モデル (長さ:1.50m、幅:~0.62m、高さ:0.85m) 試験及び有限要素法解析 (FEA)によって、検討した。試験及び解析結果から、真空圧と載荷荷重の併用により、地盤の側方変位が抑制できることが分った。載荷荷重と真空圧の比(LR)及び載荷荷重の載荷率(RL)の増加に伴い、地盤の側方変位量外向きは増加することが明らかになった。さらに、LRとRLの調整によって地盤の側方変位を最小にすることが可能であることを示した。
  • 佐藤 雄太, 立花 大地, 鈴木 久美子, 金子 賢治, 間 昭徳, 島田 優, 熊谷 浩二
    2009 年 24 巻 p. 201-204
    発行日: 2009年
    公開日: 2010/01/22
    ジャーナル フリー
    本研究は,軟弱地盤上に敷設したジオテキスタイルとジオセルを使用したマットレス状構造物に,繰り返し載荷荷重を与え地盤及びジオテキスタイル構造物の安定性能を確認することを目的としている.いくつかのパターンで補強した実験路盤を実験場内に連続して作製し,路面上に荷重車両(大型車両:20トン・ダンプトラック)を繰り返し走行させることで,各補強工法の安定性について相対的に比較・検討する.本文では,地盤の沈下量等を計測した結果について報告する.
  • 龍岡 文夫, 舘山 勝, 平川 大貴, 渡辺 健治, 清田 隆
    2009 年 24 巻 p. 205-210
    発行日: 2009年
    公開日: 2010/01/22
    ジャーナル フリー
    GRS一体橋梁は、従来形式の橋梁を「構造工学の立場から改良した一体橋梁は連続桁とRC竪壁(壁面工)が一体の一体橋梁(Integral bridge)」と「地盤工学の立場から改良したGRS擁壁を橋台とした橋梁」を合体させたものである。GRSは、Geosynthetic-Reinforced Soil(ジオシンセティックス補強土)を意味する。GRS一体橋梁の構造的特徴は、連続桁・壁面工と壁面工背面に定着したジオシンセティックスで補強した盛土の一体化である。支沓の省略と連続桁の使用により建設・維持費が削減される一方、構造的に安定化している。すなわち、竪壁は多層補強材で支持された小支点間距離多支点支持の連続梁であるため構造が簡略化できる。盛土補強により、橋桁の温度収縮膨張に伴う水平繰返し変位による盛土の主働崩壊を防げ残留沈下を極小化し、常時の交通荷重による壁面工背後の盛土の沈下を防ぎ、壁面工は上昇した受働土圧に対して安定を保つ。橋桁・竪壁・補強盛土の全体系が一体構造であるため、耐震性も高い。施工上の特徴は、補強盛土の建設による盛土・支持層の変形が終了した後、剛で一体のRC壁面工を補強盛土と一体化になるように建設し、次に橋桁を壁面工と一体化するようにして建設する、と言う段階施工である。段階施工により、壁面近くの盛土は良く締固まり、壁面工と補強材の相対沈下による損傷を防ぎ、杭基礎の必要性が減じる。
  • 相馬 亮一, 龍岡 文夫, 平川 大貴, 野尻 峯広, 相澤 宏幸, 錦織 大樹, 渡辺 健治, 清田 隆
    2009 年 24 巻 p. 211-218
    発行日: 2009年
    公開日: 2010/01/22
    ジャーナル フリー
    剛な一体壁面工に定着したジオシンセティックス補強材で盛土を補強した補強土擁壁は、費用便益比と安定性が高いことが確認されている。この技術では、壁面工を盛土完成後に建設することが重要である。筆者らは一対のジオシンセティックス補強土(GRS)擁壁の壁面工(竪壁)の上端に連続桁を定着した新形式の橋梁(GRS一体橋梁)を提案し、室内模型実験により常時と地震時の安定性を確認してきた。盛土・竪壁・橋桁の一体化により、気温の季節変動による盛土主働崩壊と受働土圧増加による被害を防ぐことができ、地震時安定性が向上する。常時と地震時安定性は、竪壁の杭基礎と盛土のセメント改良によって更に向上する。本論文では、これら模型実験の結果を総括し、常時と地震時の挙動に及ぼす各種構造条件の影響を考察する。
  • 永谷 達也, 田村 幸彦, 飯島 正敏, 舘山 勝, 小島 謙一, 渡辺 健治
    2009 年 24 巻 p. 219-226
    発行日: 2009年
    公開日: 2010/01/22
    ジャーナル フリー
    ジオシンセティックスで補強した橋台と橋桁を一体化したGRS(Geosynthetic-Reinforced Soil)一体橋梁の実用化に向けて,実物大規模の試験橋梁を構築した.施工は橋台背面の補強盛土部分を先行構築し,その後,橋台と橋桁を一体化したRC橋梁を構築した(幅3m,高さ5.55m,橋長14.75m).
    気温の季節変動および将来実施予定の L2 地震を模擬した水平載荷試験を想定して計測器を配置し動態計測を開始した.計測項目は,ジオシンセティックスの補強材力(ひずみ),一体橋梁と背面盛土の相対変位,フーチング底面の鉛直土圧・橋台背面土圧,橋台躯体の傾斜,温度,鉄筋応力などである.短期間(約4ヶ月)の動態計測結果ではあるが,温度の季節変動に伴いGRS 橋梁も変動しているが,その値は極めて小さく,橋長15m程度のGRS 一体橋梁は極めて安定していることがわかった.
  • 白仁田 和久, 舘山 勝, 小島 謙一, 神田 政幸, 渡辺 健治
    2009 年 24 巻 p. 227-232
    発行日: 2009年
    公開日: 2010/01/22
    ジャーナル フリー
    現在,模型実験等により高性能化が確認されたGRS一体橋梁の実用化に向け,試験橋梁を構築し,動態観測を行っている.実用展開するにあたっては,設計手法の確立が必要不可欠となるが,現時点では確立されていない.しかし,本構造の挙動のメカニズムから,補強土工法およびラーメン高架橋の設計手法が適用できると考えられる.そこで,本検討では,これらの設計手法を基に,本橋梁に対する試設計を行い,設計に関する特徴を整理することとした.
  • 藤井 俊逸, 間 昭徳, 松岡 元
    2009 年 24 巻 p. 233-238
    発行日: 2009年
    公開日: 2010/01/22
    ジャーナル フリー
    道路盛土などで用いられるジオテキスタイル補強土壁は、壁面の反対側が開放されている。土は土のうのように完全に巻き込むことで、大きな支持力を得られることが証明されているため、土をジオテキスタイルで包み込む工法を考案した。本文ではその場合のジオテキスタイルに作用する張力の算出方法を示すと共に、その際必要となる構造細目について整理した。また、決定した構造細目で載荷実験を行い、安全性を実証した。載荷実験は、盛土高さ1.8m、天端幅1.5mで、天端に300kN/2を載荷し、ジオテキスタイル張力・壁面変形挙動・土圧を測定した。その結果、計算結果の妥当性や、巻き込むことで変形量が小さくなることを確認した。
  • 鈴木 利和, 熊谷 浩二, 金子 賢治, 堀江 征信, 立花 大地, 佐藤 雄太
    2009 年 24 巻 p. 239-242
    発行日: 2009年
    公開日: 2010/01/22
    ジャーナル フリー
    建物用地内で斜面の改修等の土工事を行う場合,コンクリート擁壁を大規模な掘削を行って設置し,その養生後に裏面を埋め戻して原形復旧することが一般的である.また,費用を抑えるため,斜面の安定性よりも美観や施工しやすさを優先する例もある.ジオシンセティックス材料のひとつであるジオセルを用いる工法1)は,大型重機を使用しない・緑化をする事が出来る・施工が簡易で工事期間も短縮可能である事や安定性が高いなどの特長を生かし,宅地への適用も期待できる.本報では,景観が重視される建物用地内で実証施工したジオセル補強土壁の施工報告を行う.
  • 石井 健嗣, 菊本 統, Hossain Md. SHAHIN, 中井 照夫, 渡邊 麻美
    2009 年 24 巻 p. 243-250
    発行日: 2009年
    公開日: 2010/01/22
    ジャーナル フリー
    ジオシンセティックスは土構造物の変位抑制や作用土圧の軽減、基礎構造物の支持力増加を目的としてしばしば用いられているが、その補強メカニズムは複雑であり完全には解明されていない。本研究では、鉛直荷重を受ける垂直補強土擁壁について2次元モデル実験と数値解析を実施し、ジオシンセティックスによる補強メカニズムを基礎的な立場から検討した。補強材の配置・長さ・敷設間隔を変化させた一連の検討の結果、補強材地盤の内的安定性(補強材設置領域内の局所的安定性)と外的安定性(補強材設置領域外の周辺地盤の安定性)が共に確保されるような補強材の敷設パターンが有効であるとわかった。また、解析は実験における定性的な傾向をよく捉えていることから、地盤の応力ひずみ特性や地盤‐補強材間の摩擦特性を適切に考慮した非線形数値解析は、補強土地盤の変形・破壊挙動を予測する有効なツールとなる可能性が示された。
  • 佐藤 厚子, 西本 聡, 鈴木 輝之, 吉田 浩一, 竜田 尚希
    2009 年 24 巻 p. 251-256
    発行日: 2009年
    公開日: 2010/01/22
    ジャーナル フリー
    近年,ジオテキスタイルを用いた補強土壁が数多く施工されている.寒冷地では,ジオテキスタイルを用いた補強土壁が凍上により変形する例が報告されているが,その対策についてほとんど検討されていない.そこで,ジオテキスタイルを用いた補強土壁における凍上対策の確立を目的に,置換,排水,断熱に着目した5種類の実物大模型を構築し,盛土材料が凍結する冬期間,壁面変位,ジオテキスタイルのひずみ,土中温度,盛土の凍結状態などを測定し,標準的工法と比較した.その結果,置換,断熱対策により,凍上による変形を抑制できる可能性を見いだした.
  • 原 隆史, 辻 慎一朗, 八嶋 厚, 竜田 尚希
    2009 年 24 巻 p. 257-262
    発行日: 2009年
    公開日: 2010/01/22
    ジャーナル フリー
    これまで補強土は直接基礎で構築され,補強土の水平抵抗は直接基礎底面で負担しており,杭基礎の適用は検討されてこなかった.このため,地震力や土圧などの大きな水平力を受ける補強土擁壁の底面は大きな幅が必要となり,その適用は構築スペースの確保が可能な現場に限定され,特に斜面上など,構築スペースの確保が困難な場合には,合理的な補強土が適用できずにいた.そこで本論文では,大きな靭性を持つ補強土とたわみ性に富む鋼杭を一体化させた,杭を有する補強土の適用を提案する.ここでは,動的遠心模型実験と数値解析により杭と補強土の動的相互作用を解明し,斜面上の盛土の耐震対策への適用性を検討する.
  • 竜田 尚希, 吉田 浩一, 辻 慎一朗, 白鳥 みなみ, 荒井 克彦, 町原 秀夫
    2009 年 24 巻 p. 263-268
    発行日: 2009年
    公開日: 2010/01/22
    ジャーナル フリー
    壁面材(コンクリートパネル)と補強盛土体の間に変形吸収層を設けた二重壁構造をもつ補強土擁壁の地震時安定性を検討した結果を報告する.この補強土擁壁の1/10サイズの模型で室内振動実験を行ったところ,壁面材と補強盛土体は一体となって挙動することを確認した.この実験結果に対して数値解析を行って,実験結果の再現を試みた.数値解析では,地盤にMohr-Coulomb降伏基準と簡単な非関連流れ則を用い,Newmarkのβ法による直接積分を行った.できるだけ実際に近いモデル化を行った数値解析により,実際の振動実験結果を,ある程度表現できることを示す.
  • 宮田 喜壽, 篠田 昌弘
    2009 年 24 巻 p. 269-274
    発行日: 2009年
    公開日: 2010/01/22
    ジャーナル フリー
    ジオシンセティックス補強土壁は冗長性の高い並列構造システムを有する.この種の構造システムでは,ひとつの構造要素の破壊が構造物の全体破壊に容易につながらない.本論文は,ジオシンセティックス補強土壁のシステム冗長性を考慮した信頼性解析法を提案する.提案する解析法は,1層のジオシンセティックスが分担する補強領域を構造要素と定義し,各構造要素の複合的な破壊が全体破壊につながるという考えに基づく.本論文では,提案する解析法の特徴ならびに部分係数の決定法への応用について考察する.
feedback
Top