ジオシンセティックス論文集
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31 巻
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論文
  • 常田 賢一
    2016 年 31 巻 p. 1-
    発行日: 2016年
    公開日: 2017/05/31
    ジャーナル フリー
     ジオシンセティックスの利活用方法は多様であるが,筆者は道路盛土の天端補強・強化,盛土の侵食限定化,アップサイクルブロックの一体化などの調査・研究・技術開発に取り組んできている。本文は,これらの研究の取り組みの経緯を示し,そこから得られる知見・教訓および今後の研究・開発を展望する。
  • 峯岸 邦夫, 山中 光一, 小野寺 貴史, 伊藤 陸夫, 柳沼 宏始
    2016 年 31 巻 p. 9-
    発行日: 2016年
    公開日: 2017/05/31
    ジャーナル フリー
    軟弱路床上に舗装を構築する際,軟弱路床で懸念される路盤材の路床への混入を防ぐため,ジオシンセティックス(以下,不織布と呼称)を敷設する場合がある.この場合における不織布は,目付量が300g/m2以上とされているが,不織布の目付量を低減することにより経済性,施工性の向上が図れることから,筆者らは目付量を低減し表面強化処理を施した不織布を開発した.本研究では,軟弱路床上に従来から用いられてきた目付量300g/m2と表面強化処理した不織布について,交通荷重のような繰返し荷重が作用した際の各不織布の耐久性を比較することを目的に,載荷試験後の試料に対して3項目の評価方法で耐久性評価を行った.また,用いた不織布の舗装下での通水性能を把握するために,通水性能試験を行い結果の考察を行った.
  • 辻 慎一朗, 塩田 崇, 長澤 正明, 稲垣 太浩
    2016 年 31 巻 p. 17-
    発行日: 2016年
    公開日: 2017/05/31
    ジャーナル フリー
    本論文では,高速道路のインターチェンジの盛土工事で適用された二重壁構造を持つジオテキスタイル補強土壁に対する施工中及び施工後の動態観測の結果を報告する.本補強土壁は,壁面材とジオテキスタイルによる補強領域の間に空間を設けて,施工時の盛土の変形に伴う土圧を壁面材に作用させずに,壁面近傍まで盛土材料を十分に締固めることができる構造で,構築にあたっては盛土材料に良質土を用いて十分な締固めを行い,構築後の補強土壁の健全性は補強土壁の圧縮沈下とジオテキスタイルのひずみに対する動態観測を行って評価した.その結果,本補強土壁の構築後の圧縮ひずみは十分に小さく,土中に敷設されたジオテキスタイルは健全であることを確認した.本論文では,動態観測に基づいた補強土壁の健全性評価の結果を報告する.
  • 原田 道幸, 矢崎 澄雄, 小島 謙一, 横田 弘一, 清川 伸夫, 田村 幸彦, 佐藤 武斗, 伊藤 正博
    2016 年 31 巻 p. 23-
    発行日: 2016年
    公開日: 2017/05/31
    ジャーナル フリー
    近年の大規模地震や記録的な豪雨により,既設盛土や切土のり面,自然斜面の崩壊が増加しており,これら土構造物の耐震・耐降雨補強は重要な課題となっている.既設土構造物の補強工事は,斜面上での施工となるため施工能率が悪く工事費が高価になることが多い.そこで著者らは,軽量で施工性がよく比較的安価であるジオセルによるのり面保護工と,斜面の耐震・耐降雨補強として近年適用が増加している地山補強材とを組み合わせた地山安定化工法(Reinforced Railroad/Road Slope Structures with Geocell and Reinforcing bar ,以下RRS工法と称する)を開発・実用化した.本論文では,開発に伴いこれまでに実施した施工試験・各性能確認試験,設計の考え方および施工事例について報告する.
  • 鍋島 康之
    2016 年 31 巻 p. 31-
    発行日: 2016年
    公開日: 2017/05/31
    ジャーナル フリー
    サンドパックとはジオテキスタイル製の袋材に現地の砂礫(浚渫土)などを充填した,大型の土嚢のようなものである.サンドパックを浸食後退している海岸線に埋設することにより,海岸を維持する工法が施工されている.その施工例の一つである宮崎県宮崎市佐土原町大炊田海岸に埋設されたサンドパックが平成26年の台風による高波浪によって,破損するという事例が起きた.国土交通省が実施した事故調査結果では,サンドパックの下に埋まっていたコンクリート片によって破損したと推定している.本研究では,サンドパックの模型供試体を作製し,縫製部の破断や損傷部の拡大などを実験的に確認し,その破壊モードに関して考察した.
  • 陳 金賢, 平川 大貴
    2016 年 31 巻 p. 37-
    発行日: 2016年
    公開日: 2017/05/31
    ジャーナル フリー
    本研究では,掘削と埋戻しが可能な礫質土の新しい地盤補強技術として,セメント固化技術を用いない短繊維混合補強土に注目している.短繊維混合補強土技術の確立に対しては,使用する繊維の選択方法と繊維混合量の決定方法,繊維の混合方法,得られる補強効果と補強メカニズムを明らかにする必要がある.本論文では混合性が良好であった短繊維??直径,長さ,混合量??を用い,繊維混合の有無および締固め度Dcを変化させた一連の三軸圧縮試験結果から短繊維混合による補強効果と補強メカニズムについて考察した. この結果,短繊維混合によって礫質土の最大偏差応力は2倍程度増加し,補強効果はDcの増加によって効果的に得られる事を確認した.この要因は,短繊維が土粒子のせん断変位を抑制することによる土粒子のかみ合わせの向上にある.
  • AUNG AUNG SOE, 桑野 二郎, 橘 伸也, Ilyas AKRAM
    2016 年 31 巻 p. 45-
    発行日: 2016年
    公開日: 2017/05/31
    ジャーナル フリー
    ジオグリッド補強砂地盤の変形挙動と支持力特性を実験により検討した.100cm×100cm×80cmの土槽内に作製した模型砂地盤に繰返し載荷および単調載荷試験を実施した.砂地盤には四角形目合いの二軸ジオグリッドあるいは三角形目合いの三軸ジオグリッドを一層敷設し,載荷には長方形基礎を用いた.長方形基礎の設置方向を変え,ジオグリッドの拘束効果の方向性を調べた.残留変形や極限支持力において方向性の影響は顕著であった.しかし,硬いジオグリッドが使用されると,極限支持力の方向依存性は小さくなった.いずれの場合も,ジオグリッドで地盤が補強されると,残留変形や極限支持力について顕著な改善が見られた.
  • 荒井 克彦
    2016 年 31 巻 p. 53-
    発行日: 2016年
    公開日: 2017/05/31
    ジャーナル フリー
    補強土工法の設計実務は円弧すべり面法などの安定解析に基づいて行われる場合が大半である.安定解析では,地盤や補強材の変形や剛性を評価することが困難である.本報ではFEM に基づいて,変形や剛性を考慮したうえで,従来の安定解析と同様な破壊様式を得る方法を提案し,この方法を,補強土工法を用いた斜面・擁壁土圧・支持力の静的および動的な安定問題に適用した結果を示す.
  • 角田 晋相, 篠田 昌弘
    2016 年 31 巻 p. 61-
    発行日: 2016年
    公開日: 2017/05/31
    ジャーナル フリー
    軟弱地盤上に盛土を構築する場合,補強材の採用や圧密よる原地盤の強度増加を見込むことで盛土の安定性が確保できるように設計される.一方,施工においては,設計強度を満足する材料を選定するため,実際の安全率には幾らかの余裕が存在する.また,地盤内の土質にはばらつきがあるため,設計時には安全側の土質定数を用いることが多い.そこで,設計時の安全率に対する施工時の安全率の差を安全裕度と捉え,安全裕度の程度とその効果について検討した.本論文では,軟弱地盤対策として採用された敷網工の材料強度と原地盤の圧密による地盤特性に含まれる安全裕度を考慮して施工時における盛土の安定性を評価した事例について報告する.
  • 龍岡 文夫, 岡本 正広, 田村 幸彦, 小阪 拓哉
    2016 年 31 巻 p. 67-
    発行日: 2016年
    公開日: 2017/05/31
    ジャーナル フリー
    補強盛土の建設に伴う支持地盤と盛土の変形が十分に生じた後で、剛で一体の壁面工を補強盛土と一体になるように段階施工するGRS(Geosynthetic-Reinforced Soil)擁壁、GRS耐震性橋台、GRS一体橋梁は、広く用いられるようになってきた.これは、これらのGRS構造物は従来形式の擁壁等の構造物よりも性能と直接建設費及びライフサイクルコストで優れているためである.一方、剛一体壁面工の直接建設費はブロック式・分割パネル式等の簡易な壁面工よりも高い傾向にある.しかし、剛一体壁面工によって長期・地震豪雨時の安定性が向上し、壁面間際の天端面まで利用可能になり、遮音壁・防護柵・電柱等付帯設備を壁面工に設置でき、橋台として活用できるなどの利点が生まれることから、ライフサイクルでの費用便益比がより優れたGRS構造物になる.
  • 高野 裕輔, 山崎 貴之, 小島 謙一, 西岡 英俊, 小林 克哉, 斉藤 雅充
    2016 年 31 巻 p. 75-
    発行日: 2016年
    公開日: 2017/05/31
    ジャーナル フリー
    ジオシンセティック補強土を用いた一体橋梁(GRS一体橋梁)は,桁と橋台(橋台壁)および補強盛土を一体化させる工法であり,補強盛土を含めた不静定構造物である.そのため,橋長が長い橋梁へ適用する場合は,桁の乾燥収縮や温度伸縮等による経時挙動の影響の増大が懸念される.そこで,橋長60mのGRS一体橋梁を対象とした動態挙動の把握を目的として,施工時より変位およびひずみ等の計測を実施している.本稿では,構造物の構築後,約2.5年にわたる計測結果を整理し,経時挙動における構造物の応答特性に関する考察を行った.
  • 阪田 暁, 山崎 貴之, 高野 裕輔, 菊地 圭介, 高嵜 太一
    2016 年 31 巻 p. 81-
    発行日: 2016年
    公開日: 2017/05/31
    ジャーナル フリー
    九州新幹線(西九州ルート)は,武雄温泉~長崎間の延長約66kmの路線で現在建設中である.その中の原種架道橋は,諫早市内(武雄温泉起点47km263m付近)における短いトンネルが連続した谷あい部に位置するPC桁を用いたGRS一体橋梁である.これまでのGRS一体橋梁においては,RC桁やSRC桁を用いた事例はあるが,PC桁は初めての採用となる.本論文では,鉄道構造物で初めての事例となるPC桁を用いたGRS一体橋梁の計画について報告する.
  • 乾 徹, LI Yuelei, 勝見 武, 高井 敦史, 佐藤 一貴
    2016 年 31 巻 p. 85-
    発行日: 2016年
    公開日: 2017/05/31
    ジャーナル フリー
    福島第一原子力発電所事故により発生した放射性セシウムを含有する廃棄物の焼却物のうち,放射性セシウムの含有量が一定量以下のものは既存の管理型処分場内に区画を設置して処分される計画である.本研究では,処分された焼却灰からの放射性セシウムを含む浸出水の発生や放射性セシウムの移動を抑制することを目的として,セシウム吸着能の高いゼオライトを中間層に添加したジオシンセティッククレイライナー(以下,GCL)の適用性を評価した.特に,浸出水に高濃度で含まれるNa+,Ca2+,K+イオンがセシウムの吸着性とGCLの透水係数に及ぼす影響をカラム浸透試験により検証した.ゼオライトを中間層に添加したGCLにおいては,一般的なGCLと比較して陽イオンによるセシウム吸着阻害の影響が小さく,特にCa2+イオンによる阻害が大幅に低減された.しかし,K+イオンによる吸着阻害はゼオライトを添加した場合にも比較的大きいものであった.
  • 嶋田 優香, 田中 紘一朗, 熊谷 幸博, 荒井 克彦
    2016 年 31 巻 p. 91-
    発行日: 2016年
    公開日: 2017/05/31
    ジャーナル フリー
    従来のネットタイプの防風柵ならびに鋼製折板タイプの防風柵の同等以上の効果として,眺望性・景観性を付加した防風シートを用いた防風柵を開発した.防風シートは,ポリエステル繊維製織物(4.8 mm目合い)にアクリル樹脂によりコーティングし,開口率40%(遮風率60%)である.開発した防風柵は,防風シートを特殊グリップを用いて展開・緊張させる構造となっており,少しずつ全国各地で実績を増やしている.本論文では,防風シートの眺望性,耐候性,減風効果などの基本特性と,防風柵が保有する独自の風荷重載荷後のたわみ復元性について報告する.
  • 石田 正利, 武田 文義, 山本 正人, 西村 正樹, 赤井 智幸, 遠藤 和人, 嘉門 雅史
    2016 年 31 巻 p. 99-
    発行日: 2016年
    公開日: 2017/05/31
    ジャーナル フリー
    除染廃棄物仮置場の上部シートに作用する外力(風力)とそれによる張力の関係を明らかにすべく,実際の仮置場の上部シートに計測装置を取り付け,風向・風速と上部シートに取り付けたケーブルを介して間接的な張力を測定した.その後,数値解析を行い測定値を説明しうる解析モデルを構築した.さらに,同解析モデルを用いて一般的な形状の除染廃棄物仮置場に対して,風速と張力の関係を検討した結果を報告する.
  • 宮原 哲也, 中山 裕文, 島岡 隆行, 古田 竜一, 日浦 一朗
    2016 年 31 巻 p. 105-
    発行日: 2016年
    公開日: 2017/05/31
    ジャーナル フリー
    本研究は,除染廃棄物仮置場の上部キャッピング工として用いられる通気性防水シートの破損部や破損するおそれの高い部位を明らかにし,その部位を検出するために,ドローンを用いた手法を検討したものである.実際の仮置場を模擬した小規模な仮置場を作成し,キャッピング上部に雨水溜まりを再現した.歪ゲージを用いてキャッピングシートの歪みを実測し,併せて気温,日射量等の気象観測を行うことによってその関係を解析した.その結果,法肩部において歪が大きく,また日射の影響により大きく歪の値が変動することを明らかにした.また,ドローンにより撮影した画像を用いて3Dモデルを作成し,仮置場に生成した雨水溜まりによる変形状況の把握や体積推定を行うことができた.更に,ドローンで撮影した写真の画像処理を行うことによって,キャッピングシート表面の傷の検出が容易になることを示した.
  • 久保 哲也, 辻 慎一郎, 熊谷 幸弘
    2016 年 31 巻 p. 113-
    発行日: 2016年
    公開日: 2017/05/31
    ジャーナル フリー
    昨今,国土交通省社会資本整備審議会では道路構造物の長寿命化に向けて維持管理・更新を効率的且つ効果的に進めるための手段として「点検,診断,措置,記録」といったメンテナンスサイクル構築の重要性を示した.そこで,各研究機関等ではメンテナンスサイクルの構築に向け,ジオグリッド補強土壁の劣化シナリオの作成及び体系立った整理が進められている.筆者らは,過去に経験した凍上による鋼製枠を用いたジオグリッド補強土壁(以下,補強土壁と称す)の被災事例に対し,藤田らが提案したフォルトツリー等を参考に,補強土壁が崩壊に至る劣化シナリオの作成及び凍上調査の結果について整理したので報告する.
  • 川俣 さくら, 川口 貴之, 中村 大, 倉知 禎直, 林 啓二, 川尻 峻三, 山下 聡
    2016 年 31 巻 p. 119-
    発行日: 2016年
    公開日: 2017/05/31
    ジャーナル フリー
    積雪寒冷地では,凍上や凍結融解によるのり面の表層崩壊に対する応急処置や復旧対策として,ふとんかご工が数多く採用されている.また,このふとんかごを壁面とし,これと一体となった金網を補強材とした補強土壁(以下,ギャビオン補強土壁)が開発されている.ふとんかごは排水性や追従性を有しており,急勾配での施工も可能であることを考えると,寒冷地に適した補強土壁としての普及が期待できる.そこで本研究では,このギャビオン補強土壁を積雪寒冷地に施工し,この補強土壁の積雪寒冷環境における性能評価を試みた.
  • 石垣 幸整, 三上 登, 川口 貴之, 中村 大, 川内谷 勇真, 川尻 峻三, 山下 聡
    2016 年 31 巻 p. 127-
    発行日: 2016年
    公開日: 2017/05/31
    ジャーナル フリー
    地山補強土工はプレストレスを与えない補強材を斜面内に配置し,地山との相互作用によって切土斜面や自然斜面の補強を図る代表的な工法であり,一般にのり面工と併用される.のり面工には連続的な吹付のり枠が採用されることが多いが,環境負荷の低減や施工性の向上を目的として,リサイクルプラスチックを用いた独立型の受圧板も開発されている.この受圧板はコンクリートやモルタルに比べて剛性が低く,独立しているために受圧面積も小さいことから,寒冷地では連続的な吹付のり枠に比べて凍上による被害を軽減できる可能性がある.そこで本研究では,凍上性の高い平坦な地盤に対して,プラスチック製の独立受圧板を用いた地山補強土工を施工し,受圧板に作用する凍上力や凍上に伴う補強材や受圧板の変位を詳細に観察した.
  • 岸田 久德, 川尻 峻三, 川口 貴之, 中村 大, 山下 聡
    2016 年 31 巻 p. 135-
    発行日: 2016年
    公開日: 2017/05/31
    ジャーナル フリー
    谷を埋めた盛土では飽和度や地下水位が上昇していることから,地震時の被害が拡大することが報告されている.北海道のような積雪寒冷地では,盛土表層が凍結状態にあるような場合に地震が発生する可能性がある.しかし,地盤凍結が盛土の動的特性に及ぼす影響について,盛土の変状・崩壊に至るまでの実験的な研究や対策工に関する報告は少ない.本研究では積雪寒冷地における盛土の地震時挙動と地山補強土工法による耐震性向上を把握するため,模型盛土に対して振動台実験を行った.実験結果から,凍結状態では,盛土表層の凍結に伴う土要素の強度増加に伴い加振時の盛土の安定性は極めて高い状態にあった.しかし,融解に伴い安定性は低下することがわかった.また,凍結融解によって地山補強材が損傷を受けた場合には,加振後の盛土の鉛直変位はやや増加し,耐震性が低下することが確認された.
  • 有吉 充, 毛利 栄征, 工藤 章光
    2016 年 31 巻 p. 143-
    発行日: 2016年
    公開日: 2017/05/31
    ジャーナル フリー
    農業用パイプラインに適用される現場硬化管の多くには内水圧が作用する.しかしながら,既往の研究は外圧に対する現場硬化管の挙動を検討するものがほとんどであり,内水圧に対する詳細な挙動は明らかにされていない.そこで,農業用パイプラインの特徴である屈曲部,現場硬化管と既設管の隙間における充填材の有無,既設管の老朽化が現場硬化管の内水圧に対する挙動に与える影響を明らかにするため,φ1,000 mmの現場硬化管に内水圧を作用させる実験を行った.その結果,屈曲部の管軸方向のひずみは直線部よりも大幅に大きいこと,充填材により円周方向ひずみと屈曲部の管軸方向ひずみが減少すること,既設管の強度がない場合には現場硬化管のみで内水圧を受け持つことなどが分かった.
  • 河村 隆, 梅崎 健夫, 坪山 龍太
    2016 年 31 巻 p. 149-
    発行日: 2016年
    公開日: 2017/05/31
    ジャーナル フリー
    素材の異なる土木用不織布に対して保水性試験を実施し排水過程における水分特性曲線を求めた.その結果と既往研究から読み取った水分特性曲線にvan Genuchtenモデル(以下,VG式)を適用し,不織布の飽和透水係数を用いた排水過程における水分特性曲線の推定について検討した.その結果,不織布の水分特性曲線は,素材が異なる場合おいても土質材料と同様にS字型の形状となり,VG式によって評価することができることを示した.また,不織布の飽和透水係数から推定したVG係数を用いた水分特性曲線の予測式の誤差は0.5~2倍程度であり,不織布の飽和透水試験を実施するだけで,不織布の排水過程の水分特性曲線を推定できることが示唆されることを示した.
  • 清水 敬三, 大塔 泰正, 森本 唯之, 熊谷 浩二
    2016 年 31 巻 p. 155-
    発行日: 2016年
    公開日: 2017/05/31
    ジャーナル フリー
    ジオシンセティッククレイライナーは,ため池堤体や公園池などの漏水対策に利用されている.これらの施 設には水路や枡,ボックスカルバートなどのコンクリート構造物が併設され,大地震などの影響を受け沈下や 移動などで変形した場合,接続部にずれや隙間が発生し,構造物にクラックやひび割れからの漏水の原因にな る.ジオシンセティッククレイライナーの止水性の経時変化を把握するため,シートで止水したコンクリート 構造物接合部の間隔を人為的に開き,その時の漏水量を1 年にわたって測定した.その結果,コンクリート構 造物の変形やひび割れによる漏水防止対策として,粘土層と同等以上の止水性能があることを確認できた.
  • 小川 敦久, 楠戸 一正, 西里 亮, 矢口 直幸, 小島 謙一, 植木 茂夫, 青木 一二三
    2016 年 31 巻 p. 161-
    発行日: 2016年
    公開日: 2017/05/31
    ジャーナル フリー
    トンネル等の地下構造物の先防水において,覆工コンクリートとの化学的な接着性を有する防水シートを適用する場合,覆工コンクリートに発生するひび割れや打継ぎ目の開口部において,防水シートにはゼロスパン現象が生じる.その結果,シートに破け等の破損が発生し,防水性能を保持できなくなることが懸念される.そこで,化学接着性防水シートを施工したコンクリート供試体に対して人工的にひび割れを導入し,さらにひび割れ幅(開口幅)を拡張した際のシートの変形の観察と,開口幅拡張状態で最大1.5MPaまでの水圧を負荷した際の耐水圧性能評価を行った.その結果,開口幅を5mmまで拡張した場合,開口部のごく近傍ではシートとコンクリートとの間で最大3mm程度の剥離が観察され,ゼロスパン現象は発生していないことが確認された.さらに,5mmまでの開口幅に対して最大1.5MPaまでの水圧を負荷した結果,シートの破断等の損傷及び漏水は生じないことが確認された.
  • 澤田 豊, 中澤 博志, 片岡 沙都紀, 小林 成太, 小田 哲也, 古林 智宏, 澁谷 啓, 山下 拓三, 谷 和夫, 梶原 浩一, 河端 ...
    2016 年 31 巻 p. 167-
    発行日: 2016年
    公開日: 2017/05/31
    ジャーナル フリー
    本研究では,前刃金工法および遮水シートを用いて改修されたため池の耐震安全性を検証するため,堤高3mの実大規模ため池堤体を対象に加振実験を実施した.レベル1地震動を想定した最大177 Galの加振実験の結果,両ケースともに漏水は生じず,堤体の変形は極めて小さかった.さらに,レベル2地震動を想定した最大471 Galの加振実験の結果,決壊や漏水には至らなかったが,遮水シートを用いたケースでは,天端において幅10mm程度のクラックが堤体軸方向に複数発生した.また,両ケースともに天端で沈下,底部ではらみ出すような変形が確認された.上流側の変形量の方が下流側よりも大きくなり,湛水部が堤体の動的挙動に及ぼす影響が示唆された.
  • 小田 哲也, 澤田 豊, 中澤 博志, 小林 成太, 澁谷 啓, 河端 俊典
    2016 年 31 巻 p. 175-
    発行日: 2016年
    公開日: 2017/05/31
    ジャーナル フリー
    本研究では,ベントナイト系の遮水シート工法により改修されたため池の耐震性能を検証するため,堤高3mの実大規模ため池堤体を対象に加振実験を実施した.ベントナイト系遮水シート(以下,遮水シートという)は,堤体内部に階段状になるよう設置した.レベル1地震動を想定した最大177Galの加振実験の結果,漏水は発生せず,堤体の変形は極めて小さかった.さらに,レベル2地震動を想定した最大471Galの加振実験の結果,決壊や漏水発生には至らなかったが,堤体天端にクラックが発生した.発生クラックの深度調査から,遮水シートは堤体の地震時挙動に影響を与えることがわかった.さらに,堤体の応答加速度から,遮水シートを境界として上流側堤体と下流側堤体の振動特性が異なることが示唆された.
  • 中島 典昭, 佐藤 研一, 加藤 俊二, 土橋 聖賢, 折敷 秀雄
    2016 年 31 巻 p. 183-
    発行日: 2016年
    公開日: 2017/05/31
    ジャーナル フリー
    短繊維混合補強土とは,建設発生土や安定処理土などに長さ20~100 mm程度,太さ2.3~230 μmの短繊維を混合して,1)強度や靭性,降雨や流水に対する耐侵食性の向上,2)植生基盤への適用も期待される建設発生土の有効利用の促進を目的として開発されたものである. 本報は,侵食されやすくかつ土壌養分の少ない植物の活着繁茂に劣るとされるしらすに,短繊維と少量のセメントを添加した短繊維混合補強土を河川堤防川裏法面の土羽土に利用した試験施工の結果と,施工後6年経過した短繊維混合補強土の状態を追跡調査した結果について報告するものである.
  • 倉上 由貴, 二瓶 泰雄, 森田 麻友, 菊池 喜昭
    2016 年 31 巻 p. 191-
    発行日: 2016年
    公開日: 2017/05/31
    ジャーナル フリー
    本研究では,ドレーン工法とGRS工法の長所を組み合わせた耐越水・耐浸透堤防として,裏のり面に層状のドレーン工を敷設しつつ,堤体表面をカバーする被覆工とドレーン工を,ジオグリッドを介して堤体土と一体化する,という薄層ドレーン強化堤防(Laminar Drain Reinforced Levee,LDR堤防)を提案する.LDR堤防の耐越水性を調べるべく大型水路の越水実験を行い(堤防高さ1 m,越流水深最大0.25 m),土堤(天端舗装有,無)やアーマ・レビーと共に検討した.その結果,LDR堤防は越水開始2時間半後でも初期状態を維持でき,耐越水性が極めて高いことが示された.また,洗掘防止工の無い状況で同様の実験を行った結果,アーマ・レビーでは被覆工間の僅かな隙間(1 cm以下)で被覆工は流出したが,LDR堤防では被覆工間の隙間が5 cmを越えてもドレーン層の効果で被覆工の流出が抑制され,越水に対して極めて粘り強い構造であることが示された.
  • 小林 貴瑠, 菊池 喜昭, 兵動 太一, 二瓶 泰雄, 倉上 由貴, 龍岡 文夫
    2016 年 31 巻 p. 199-
    発行日: 2016年
    公開日: 2017/05/31
    ジャーナル フリー
    2011 年東北地方太平洋沖地震では, 防潮堤よりも高い津波が越流することで多くの防潮堤が崩壊した. 2011 年以降,防潮堤の越流津波に対する安定性と安定化構造に関する研究が進められてきている. 深津らは, 補強材を敷設した防潮堤模型を作製し越流実験を行った. その結果, 海側2 割勾配・陸側5 分勾配のGRS 防潮堤の耐津波性能が高いことが分かった. 本研究では, 海側2 割勾配・陸側5 分勾配のGRS 防潮堤を基本構造として模型実験を行った. 越流時における堤体の浸透流の影響を評価するために, パネル間には隙間を設けて実験を行い, 堤体内の砂の移動状況と, それに伴う天端高さの変化など, 堤体の変形の考察を行った.
  • 竹内 啓哉, 井坂 慎吾, 島田 美里
    2016 年 31 巻 p. 207-
    発行日: 2016年
    公開日: 2017/05/31
    ジャーナル フリー
    常願寺川では,コンクリート護岸前面の河床洗堀対策として,流路の制御機能および砂州の保全・回復機能をもった「巨石付き盛土砂州を用いた河岸防護工」が施され, その効果が確認されている.この工法は河岸沿いの砂州上流端の水衝部に河道で生産される巨石を配し一体化させるものであるが,近年では大型の石材が入手困難である.そこで,袋型根固め工法用袋材を用いて小中粒径の石材複数個を一体化することで大型石材の代替として適用が可能か現地暴露試験を行った.常願寺川は流木や転石が多く,袋材に対し外部からの衝撃が予想されるため,網地を太くした袋材を設置し試験を行った.その結果,袋材の耐久性と常願寺川における河岸防護工への適用が可能であることを確認した.
  • 山本 浩二, 石田 正利, 杉山 公一
    2016 年 31 巻 p. 213-
    発行日: 2016年
    公開日: 2017/05/31
    ジャーナル フリー
    河川工事の仮締切工では,その施工性や経済性から大型土のうが多く使用されている.しかし,増水時に大型土のうの転倒・流失などが発生し,工事現場やその後背地への影響が問題となる事も少なくない.通常,大型土のうは布積みで施工され自重により構造体の安定性を確保しているが,大型土のう同士は連結されておらず一体性がないことから,増水時の流勢(流体力)により不安定な状態になりやすい. 本論文では,一体性の高い構造体を構築することが可能な連続箱型鋼製枠を急流河川の仮締切護岸に初めて適用した施工事例において,台風による増水時の流勢に対し補強対策することで,連続箱型鋼製枠が破損・流失することなく護岸として機能した結果を示す共に,耐えうる増水時の流速等を流況解析により確認した.
  • 澁谷 啓, 中西 典明, 小阪 拓哉, 鈴木 聡, 龍岡 文夫, 歳藤 修一
    2016 年 31 巻 p. 219-
    発行日: 2016年
    公開日: 2017/05/31
    ジャーナル フリー
    神戸市須磨区東落合にある神戸市道垂水妙法寺線玉坂トンネルは4車線道路のボックスカルバートトンネルであり,トンネル坑口上部のパラペットのひび割れ,盛土変状,排水施設の破損など多くの異常が見られた.このため2012年8月よりパラペットの変状計測を開始し,変形が8ヶ月で3㎜と累加的に増加していることから早急な対応が必要であると判断された.盛土直下は神戸市の幹線道路であり,盛土やパラペットの崩壊等は第三者および交通機能に重大な影響を与えるため,この危険な状況を解消するにあたり,影響の大きさを勘案して常時およびレベル2地震動に対応可能な盛土安定対策を実施した.本論文では,この既設道路盛土の耐震化対策における一連の調査,解析,設計そして対策工の施工について述べている.
  • 伊藤 修二, 辻 慎一朗, 久保 哲也, 廣田 慎司
    2016 年 31 巻 p. 227-
    発行日: 2016年
    公開日: 2017/05/31
    ジャーナル フリー
    2016年4月14日21時26分に熊本県熊本地方を震央とする,震源の深さ11km,マグニチュード6.5,地震(前震)が発生し,その28時間後の4月16日1時25分には,同じく熊本県熊本地方を震央とする,震源の深さ12km,マグニチュード7.3の地震(本震)が発生した(名称:熊本地震).この地震では,震度5強以上の地震が19回以上発生しており,ジオテキスタイル補強土壁も繰返し大きな地震動を受けた.本震発生後,著者らは,震度5程度以上の地震動を受けた271 箇所のジオテキスタイル補強土壁を対象に目視調査に基づく被災状況及び健全性の調査を行った.本論文では熊本地震によって繰返し地震動を受けた補強土壁の被災調査の結果と,太田らが提案した補強土カルテを用いた補強土壁の健全性の評価結果について報告する.
  • 佐藤 研一, 堀 哲巳, 藤川 拓朗, 古賀 千佳嗣
    2016 年 31 巻 p. 235-
    発行日: 2016年
    公開日: 2017/05/31
    ジャーナル フリー
    2011年の東北地方太平洋沖地震において大きな被害を受けた千葉県浦安市では,長い地震動継続時間により埋立地に造成された住宅地に液状化被害が集中した.また,液状化を生じた地点における噴砂の粒径分布を見ると多くのシルト分を含む砂であることが明らかになっている.そこで本研究では,短繊維材料混合に伴う液状化抑制効果向上を検討するにあたり,砂質土に含まれるシルト分に着目した.検討では,シルト分の含有率を変化させた短繊維混合まさ土試料を用い,非排水繰返しせん断試験により液状化挙動に及ぼすシルト分の影響について検討を行った.その結果,低塑性シルト分を含有する短繊維混合まさ土はシルト分の含有量にともなう骨格間隙比の変化に大きく依存し,液状化強度は骨格間隙比esが,まさ土の最大間隙比emaxより大きくなる細粒分含有率で最小値を取ることが明らかとなった.
  • 森 芳徳, 宮武 裕昭, 井上 玄己, 澤松 俊寿, 久保 哲也
    2016 年 31 巻 p. 241-
    発行日: 2016年
    公開日: 2017/05/31
    ジャーナル フリー
    平成23年3月の東日本大震災から5年が経過し,被災地での復興に向けた諸事業が進捗する状況において,昨年(H27)9月の関東・東北豪雨,今年(H28)4月の熊本地震と大規模な自然災害が相次いで発生している.被災によって遮断された交通機能は早期に回復することが求められ,復旧には被災現場の状況に応じて交通機能を効率よく且つ迅速に回復できる工法の選定が必要とされる.道路の被災現場では,土のうを用いた盛土の応急復旧や段差復旧の採用が多く見られる.しかし,従来の土のうは仮設構造物であるため,盛土本復旧の際には撤去作業が必要となったり,段差復旧箇所では交通荷重の影響等により破損してしまうケースが多い.本研究では,大型土のうを用いた復旧盛土の本設構造物及び格子状補強材を用いた段差復旧対策について,実大実験を実施し,変形挙動や施工性等を確認するとともに現場への適用性について検証した.
  • Ho Manh Hung, 桑野 二郎, 橘 伸也, Ulenge Mwanaisha Ng’anzi
    2016 年 31 巻 p. 249-
    発行日: 2016年
    公開日: 2017/05/31
    ジャーナル フリー
    橋やカルバートと取り付け道路の段差を軽減するため路床部にCRE工法を適用することが提 案されている。CRE工法は粒状材に層状のジオグリッドと鋼製拘束タイロッドからなる。CRE工法におけるジオグリッド敷設長さの影響を見るため、長敷設長に相当する端部水平変位拘束条件と短敷設長に相当する端部水平変位自由条件で実験を行ったところ、端部水平変位を許さない条件においては、端部水平変位自由条件と比べ、段差が顕著に抑制される結果となった。
  • 橋本 涼, 吉田 雅穂, 橋本 芹菜, 倉知 禎直
    2016 年 31 巻 p. 255-
    発行日: 2016年
    公開日: 2017/05/31
    ジャーナル フリー
    地震時の液状化に起因する道路盛土の沈下や側方流動は路面の亀裂や段差などを発生させ,地震後の車両通行に障害をもたらし,救急救命活動や応急復旧作業に多大な影響を与える.本研究は液状化時の盛土の変形抑制を目的として,高強度のジオシンセティックスを透水性の高い砕石で挟み込んだ改良層を盛土直下に敷設する工法について,その有効性を1G場模型振動実験で検討した.その結果,砕石の過剰間隙水圧消散効果を確認し,盛土直下の改良層が剛な盤状構造物となることで盛土の沈下が抑制され,天端の平坦性が保たれることを明らかにした.
  • 小野 耕平, 横田 木綿, 澤田 豊, 河端 俊典
    2016 年 31 巻 p. 261-
    発行日: 2016年
    公開日: 2017/05/31
    ジャーナル フリー
    農業用圧力管路の屈曲部では,内水圧により作用するスラスト力に対して,背後地盤の受働抵抗によって支持されるよう構造設計されている.しかしながら,液状化に伴う地盤せん断抵抗力の低下に関する検討は十分でなく,実問題を考慮した耐震設計手法の確立には至っていない.本研究では,異なる動水勾配下の地盤内において模型管の水平載荷実験を実施し,砕石およびジオグリッドを用いたスラスト防護工法における液状化時の挙動特性について検討した.管近傍の埋戻し条件を変えた種々の実験から,砂質地盤が液状化することにより砕石基礎の抵抗力は十分に発揮されないことが明らかとなった.一方,ジオグリッドで砕石と管を一体化した際,ジオグリッドの引張力が働くことが確認され,液状化時においても有効な手法であることがわかった.
  • 篠田 昌弘, 林 豪人, 弘中 淳市, 久保 哲也
    2016 年 31 巻 p. 269-
    発行日: 2016年
    公開日: 2017/05/31
    ジャーナル フリー
    地球温暖化に伴う気候変動や地震の多発により,我が国の社会資本の自然災害による被災リスクが増加している.補強土壁・補強盛土は高い耐震性と耐降雨性を有しており,国内外において施工実績が多い.しかしながら,昨今の豪雨や地震の多発により変状が生じた補強土壁・補強盛土も存在する.本論文では,変状が生じた補強土壁・補強盛土に着目し,発生した変状,変状発生原因,変状に対する措置について取りまとめた.最後にこれまで収集した事例から,豪雨や地震を起因とした補強土壁や補強盛土の変状が発生しやすい条件を,地形条件,地層条件,人為的条件に分けて整理した.
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