ジオシンセティックス論文集
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最新号
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研究開発論文
  • 篠田 昌弘, 加藤 哲志, 小嶋 星, 辻 慎一朗, 久保 哲也, 宮田 喜壽
    原稿種別: 研究開発論文
    2024 年 39 巻 p. 1-7
    発行日: 2024/10/18
    公開日: 2025/01/14
    ジャーナル 認証あり
    近年,記録的短時間大雨により土構造物に大きな被害が発生している.土構造物の一つである補強土壁にも大雨により変状が発生しており,その対策が急務となっている.本研究では,2011年5月に上陸した台風2号により崩壊した補強土壁を対象に,浸透流解析と安定解析を交互に実施することにより,補強土壁の時間的な安定性を評価した.さらに,大雨時の排水工からの溢水を模擬した浸透流解析と安定解析を実施することで,大雨時の補強土壁の崩壊メカニズムの解明を試みた.浸透流解析と安定解析の結果,2011年5月の台風により,補強土壁背面盛土の水位が上昇する一方,法面排水工からの溢水の影響で補強土壁の安定性が大きく低下して崩壊に至ったことを数値解析的に明らかにした.
  • 辻 慎一朗, 久保 哲也, 荒木 裕行
    原稿種別: 論文
    2024 年 39 巻 p. 8-15
    発行日: 2024/10/22
    公開日: 2025/01/14
    ジャーナル 認証あり
    壁面の形成に鋼製枠を用いるジオグリッド補強土壁の壁面工には,裏込め土の崩落や抜け出しを防ぎ,鋼製枠をジオグリッドと連結して盛土材を拘束する役割があるが,土圧の作用状態は明らかになっていない.そこで,著者らは,補強土壁の模型を構築した後に鋼製枠を開口させて裏込め土を漏出させたときの挙動から,鋼製枠に作用する土圧を推定することを試みた.その結果,鋼製枠を開口させると上下のジオグリッドに挟まれた領域の裏込め土がくさび状に抜け出し,通常の擁壁の設計で考慮する主働土圧に比べて小さい土圧が作用していることが確認された.本論文では,模型実験と数値解析の結果に基づいて,鋼製枠に作用する常時および地震時における土圧の作用状態をモデル化し,その妥当性を検証した結果を報告する.
  • 三鍋 佑季, 川口 貴之, 安達 謙二, 岩崎 凌子, 村上 太陽
    原稿種別: 論文
    2024 年 39 巻 p. 16-22
    発行日: 2024/10/17
    公開日: 2025/01/14
    ジャーナル 認証あり
    本研究では,壁表側で連結した補強材を活用した補強土壁における施工時の品質管理や竣工後の健全性評価手法について検討するため,幅の異なる引抜き試験用ジオグリッド片を設置した実大補強土壁を構築し,施工中や竣工後に壁表側からジオグリッド片の引抜き試験を実施した.なお,壁面材からジオグリッド片までの連結部材はシースに入れて設置した.その結果,壁面材と引抜き試験用のジオグリッド片とをつなぐ丸鋼や連結部をシースに入れることで,壁表側からの引抜き試験時にジオグリッド片の引抜き抵抗力を直接計測できるようになることが分かった.また,幅の小さな引抜き試験用ジオグリッド片を使用すると,同じ引抜き抵抗力を発揮するのに必要な引抜き変位を過少評価する可能性があることが分かった.
  • 荒木 裕行, 辻 慎一朗, 久保 哲也
    原稿種別: 論文
    2024 年 39 巻 p. 23-30
    発行日: 2024/11/01
    公開日: 2025/01/14
    ジャーナル 認証あり
    ジオグリッド補強土壁の壁面工は裏込め土の抜け出しを防ぎ,裏込め土を拘束する役割を果たす.鋼製枠形式壁面工の設計では,裏込め土が円弧状に抜け出すと仮定し,その土塊重量を常時の土圧合力とみなして安全性の照査が行われているが,計算モデルの検証が不十分である.本研究では鋼製枠に作用する常時土圧について,壁面工を開口させた際の裏込め土の挙動に着目した模型実験により検討した.実験の結果,開口により漏出した裏込め土はくさび状であり,漏出で形成された直線斜面の勾配は壁面勾配や土被りの影響を受けず,概ね裏込め土のせん断抵抗角を示すことが明らかとなった.くさび状土塊の滑動力の水平成分を土圧合力とすれば,得られた値は現行設計値と同様の傾向を示し,なおかつ,現行設計値よりやや小さい値となった.
  • 坪郷 浩一, 荒木 功平, 福田 靖, 桑嶋 啓治, 片山 光亮, 上 俊二
    原稿種別: 論文
    2024 年 39 巻 p. 31-40
    発行日: 2024/10/26
    公開日: 2025/01/14
    ジャーナル 認証あり
    近年,地球温暖化による想定外の豪雨など,気候変動が原因で発生する土砂災害が年々増加し,人的・経済的な損失が拡大している.本論文では,山口県周南市徳山高専北側の土砂災害警戒区域において,現地観測の斜面に不織布フィルターを設置し,不織布フィルターを設置した区間と裸地区間で降雨量と体積含水率を測定した.その結果,降雨量と斜面崩壊の関係を明らかにした.さらに,坪郷らの提案した降雨浸透モデルを用いた数値解析を行ったところ,不織布フィルターを設置した場合,数値解の結果が観測値とよく一致することが確認できた.裸地区間では,崩壊前には数値解の結果が観測値と一致していたものの,崩壊後にはその一致性が低下する傾向が見られた.
報告
研究開発論文
  • 吉村 康平, 中山 裕文, 小宮 哲平, 島岡 隆行
    原稿種別: 研究開発論文
    2024 年 39 巻 p. 52-58
    発行日: 2024/11/01
    公開日: 2025/01/14
    ジャーナル 認証あり
    山岳トンネル工事では,トンネル掘削後に施工される吹付けコンクリート等の支保工と,覆工コンクリートの間に防水シートが敷設される.標準的な防水シートとして,厚さ0.8mmのエチレン酢酸ビニル樹脂系シート(以下,EVAシートと呼ぶ)が用いられる.シート接合部では,溶着接合時に接合不良が発生すると,漏水に起因する覆工コンクリートの劣化等の問題が懸念される.一般に,EVAシートの接合には熱溶着接合が用いられるため,温度を指標として接合の合否判定を行う熱画像リモートセンシング検査が有効と考えられる.熱画像リモートセンシング検査では,サーモカメラにより計測した接合部の温度が,合否判定の基準となる閾値温度よりも高い場合に合格,低い場合に不合格と判定される.閾値温度は, EVAシートの物性,溶着機の接合速度,トンネル内の環境温度等の条件によって変動するため,各種条件下での閾値温度をあらかじめ把握しておく必要があるが,実験のために時間と労力を要することが課題である.そこで本研究では,熱溶着接合における接合部断面の伝熱挙動をモデル化し,合否判定のための閾値温度を計算により求めることを試みた.
  • 天野 友貴, 松丸 貴樹, 佐藤 武斗
    原稿種別: 研究開発論文
    2024 年 39 巻 p. 59-66
    発行日: 2024/10/18
    公開日: 2025/01/14
    ジャーナル 認証あり
    降雨で鉄道盛土が被災した際には大型土のうを用いた応急復旧が多く採用されているが,列車運行再開時に実施する大型土のうの撤去,盛土の再構築が施工期間の長期化や工事費の増大の要因となる.そこで,本研究では,大型土のうの撤去を行わずに前面に覆土した構造について,その沈下・変形特性を評価することを目的に,縮小模型による散水・載荷実験を実施した.その結果から,提案構造が降雨に対して十分な安定性を有することや,覆土により列車荷重載荷時に土のうに発生する水平変位量と盛土天端の沈下量が低減されることがわかった.さらに,実験結果を再現しうる浸透流解析によって,盛土模型内の砕石層が,覆土内の水位や飽和度を減少させ,復旧盛土の安定性を向上させる効果を発揮することを確認した.
  • 平川 大貴, 荒木 裕行, 倉島 大芽, 早瀬 たま枝
    原稿種別: 研究開発論文
    2024 年 39 巻 p. 67-75
    発行日: 2024/10/18
    公開日: 2025/01/14
    ジャーナル 認証あり
    液状化地盤上にある既存の河川堤防の地震時安定性の向上に向けて,河道掘削で発生した掘削土をジオグリッド補強して押え盛土として堤防の堤内地側法面上に配置する方法を提案している.押え盛土による既存堤防の液状化対策効果に関して,押え盛土の配置とその形状が既存堤防の地震時安定性に及ぼす影響,さらに地層条件との関係性について検討した結果,押え盛土の配置は液状化対策となり,液状化層厚が薄い地層条件で効果的であることを確認した.押え盛土は同じ体積であってもその形状によって得られる対策効果は異なり,水平方向よりも鉛直方向に配置した方が高い効果が得られる.
報告
  • 澁谷 啓, 中西 典明, 李 俊憲, 川尻 峻三
    原稿種別: 研究開発論文
    2024 年 39 巻 p. 76-80
    発行日: 2024/11/12
    公開日: 2025/01/14
    ジャーナル 認証あり
    建屋周囲の緑化による修景を主目的としたかご枠工擁壁による覆土設置工事が実施され,2023年3月末に完成した.完成直後の連続降雨により,覆土天端の沈下や亀裂およびかご枠の大変状が見つかった.別途実施した平板載荷試験結果から,基礎の盛土地盤は,かご枠の基礎部荷重およびかご枠擁壁背面盛土の静的荷重に対し,所定の支持力を有していることが確認できた。そこで筆者らは,大型かご枠の中詰め材に用いられた「まさ土」の締固め試験,水浸沈下試験等を実施し,「まさ土」を用いた2段目かご枠内の中詰め材の飽和化に伴う水浸沈下ならびにせん断剛性・強度低下により大型かご枠擁壁が大変形し,背面盛土が主働破壊に至ったと推定した.
研究開発論文
  • 関谷 勇太, 島津 繁之, 石川 祐介, 小林 薫, 根本 嵩也, 松元 和伸
    原稿種別: 研究開発論文
    2024 年 39 巻 p. 81-88
    発行日: 2024/10/25
    公開日: 2025/01/14
    ジャーナル 認証あり
    近年,多発する豪雨災害の激甚化・頻発化を受けて,越水に対して粘り強い河川堤防が求められている.筆者らは河川堤防裏法面に副産物である破砕貝殻層を敷設し,キャピラリーバリア(CB)土層を構築することで裏法面への雨水浸透抑制と,越水時の侵食抑制が可能なシェルネット型侵食抑制工(表面被覆型)を提案している.本研究は実規模大堤防の裏法面を模擬した傾斜水路内にシェルネット型侵食抑制工を敷設し,越流水深0.3 mで越流時間3時間後の貝殻充填ネットの引張強さ残存率を把握した.また,気象要因と砂摩耗による促進劣化試験も行った.その結果,所定条件下での越水後,気象要因および砂摩耗による劣化後の貝殻充填ネットの引張強さ残存率は,初期引張強さの30%以上であることを確認でき,その実用性を実験的に明らかにした.
  • 小幡 倫之, 久保 幹男, 川崎 始, 余川 弘至, Hla AUNG
    原稿種別: 研究開発論文
    2024 年 39 巻 p. 89-100
    発行日: 2024/10/27
    公開日: 2025/01/14
    ジャーナル 認証あり
    筆者らは,液状化時の主に道路盛土の変形抑制効果の確認を目的に,砕石とジオシンセティックスを盛土直下浅層に配置した対策工法による実験及び解析的研究を行ってきた.今までの対策工法の実験では盛土高さが4mまでであったため,盛土高さを6mとした50G遠心場での無対策・対策の実験を追加実施した.実験結果から,無対策と対策工法における盛土形状を比較し,対策工法に変形抑制効果があることを確認した.また,実験結果の動的有効応力再現解析を行うとともに,その解析モデルを使って盛土高さ6m以上についても変形抑制効果を検討した.
  • 中村 努, 白幡 翔, 德家 響, 所 哲也
    原稿種別: 研究開発論文
    2024 年 39 巻 p. 101-106
    発行日: 2024/10/27
    公開日: 2025/01/14
    ジャーナル 認証あり
    本研究では積雪寒冷地における短繊維混合補強土の適用を目指し,凍結融解履歴を受けた短繊維混合補強土のせん断特性を明らかにすることを目的とする.乾燥土試料に対して短繊維混合率を0, 0.1, 0.3 %の3種類に変えた締固め試験を実施し,短繊維混合率が0 %(無補強)と比較し,混合率を増やすほど最大乾燥密度が小さくなり,最適含水比は短繊維の混合率によらずほぼ同程度となった.また,一面せん断試験装置を用いた凍上過程では供試体中にアイスレンズを確認することができた.さらに,各混合率で締固めた試料に凍結融解履歴を与えた一面せん断試験結果から,凍結融解履歴を受けた後でも短繊維混合率が大きくなるほど,せん断強度が保持された.
  • 永田 亘, 大山 亮貴, 明永 卓也, 村田 佳久, 栗橋 祐介
    原稿種別: 研究開発論文
    2024 年 39 巻 p. 107-114
    発行日: 2024/10/18
    公開日: 2025/01/14
    ジャーナル 認証あり
    脱炭素化社会に向けて,国内外において様々な取組みがされている.土木技術者もカーボンニュートラルの実現に向けて,温室効果ガス排出量をできるだけ削減できる材料の選定や流通に積極的に目を向けるべきである.本研究では,落石防護補強土壁について壁面材を鋼製枠から高密度ポリエチレン素材を用いたジオセルに仕様変更した場合の,環境負荷低減効果と衝撃吸収能力について検証を行った.検証の結果,壁面材鋼製枠から単粒度砕石充填ジオセルに変更することによりCO2排出量を低減でき,衝撃吸収能力においても性能を維持できることが確認できた
  • 飯塚 一成, 大山 亮貴, 明永 卓也, 村田 佳久, 栗橋 祐介
    原稿種別: 研究開発論文
    2024 年 39 巻 p. 115-120
    発行日: 2024/10/25
    公開日: 2025/01/14
    ジャーナル 認証あり
    落石防護補強土壁は,落石から道路交通を防護するための構造物として近年広く建設されている.本構造物は補強土壁形状保持のための壁面材として鋼製型枠が用いられているが,環境負荷低減を目的として鋼製型枠から高密度ポリエチレン素材を用いたジオセルに仕様変更した場合を想定して,ジオセルとジオグリッド連結部の引抜き強度の確認実験を行った.連結部については,ジオグリッドをジオセルで挟み込むだけの構造や,固定杭を挿入する構造などを試行した.本論文では,実験の概要や連結部の構造を詳述するほか,実験で得られた連結部引抜き強度について報告する.
  • 宮本 慎太郎, 宮田 喜壽
    原稿種別: 研究開発論文
    2024 年 39 巻 p. 121-127
    発行日: 2024/10/19
    公開日: 2025/01/14
    ジャーナル 認証あり
    著者らは災害時の緊急輸送道路および復旧道路構築のためのジオシンセティックス地盤補強技術について検討している.本稿は,水理作用によって変状した盛土をセル補強土で復旧する技術について論じる.のり尻部およびのり面部をセル補強土と排水パイプとの併用によって復旧する技術の基本的考えを提案する.無補強盛土の浸透模型実験を示し,セル補強土の配置方法を検討した.提案技術の妥当性を検証するために実施した浸透模型実験の結果を示す.提案技術で構築した模型盛土は,無対策の盛土が変状を示した条件より厳しい水理作用に対しても十分な安定性を発揮した.
  • 平野 皓大, 峯岸 邦夫, 山中 光一
    原稿種別: 研究開発論文
    2024 年 39 巻 p. 128-134
    発行日: 2024/10/18
    公開日: 2025/01/14
    ジャーナル 認証あり
    ジオセルは,帯状材料を格子状に形成し地盤内に敷設することで補強効果を発揮する補強材であり,一般的に軟弱地盤対策や斜面の補強などの地盤補強に用いられるものである.近年では,路盤補強への転用が期待されており,ジオセルを路盤内に敷設することで交通荷重を広範囲に分散し,路床表面に作用する応力を低減することで,路盤厚を減少させることが可能とされている.しかし,ジオセルを路盤内に敷設した場合の国内における設計方法の検討が行われていないのが現状であり,ジオセルを用いて路盤を補強するためには,路盤厚算定手法の検討は重要な課題である.そこで本研究では,室内試験より得られた結果を基にジオセルを用いた際の路盤厚算定式の検討を行った.
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