内因性Prostaglandinの虚血心臓における関与並びにその意義について不明の点が多い. 著者らは同一犬において, 急性冠閉塞[左前下行枝 (LAD)結紮]後のPGE
1, PGF
2α濃度の変動と虚血領域冠静脈血流量の変動さらに, lactate, glucose濃度の変動との関係について, 雑種成犬16頭を用い, PG合成阻害剤であるindomethacin(IND) 5mg/kgの投与群と非投与群との2群に分け検討を行った. PG濃度はradioimmunoassay法にて測定した. IND投与群では虚血領域冠血流はIND非投与群に比べLAD結紮15, 30分後に有意の低下を認めた(p<0.05). 同時にIND非投与群ではLAD結紮15分後に, PGE
1, PGF
2α, lactateの有意の遊出がみられたが, IND投与群ではIND非投与群に比べPGE
1, PGF
2αの遊出が抑制されるとともに, 虚血の指標としてのlactateの遊出も増強された. PGE
1には強力な冠血管拡張作用がPGF
2αにはほとんど冠血管作用がないことが知られており, 今回の成績より虚血部局所より生産遊出した内因性PGE
1が急性冠閉塞直後の局所の血流調節作用に関与し, 虚血領域の冠血流量を増加させ虚血心臓に有用な役割を演じていることが示唆された.
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