閉塞性頭蓋内椎骨脳底動脈病変に対するEC-IC bypassの効果を検討するため,STA-SCA bypass施行30例の臨床経過について検討し,本手術の脳循環代謝からみた効果について検討した.術後の血管写では全例に吻合血管の開存が認められ,patency rateは100%であった.重篤な手術合併症はなく,一過性の滑車神経麻癖,髄液耳漏,吻合部に限局したくも膜下出血などが認められたが,症状増悪例は認めなかった.退院時転帰は,morbidityはなく,mortalityは1例に認められた.mortalityの1例は心筋梗塞によるものであった.遠隔予後調査では,虚血症状は4例に認められた. TIAは2例で,Completed Strokeが2例であった.Completed Strokeの2例は脳幹の小梗塞が1例,内頸動脈閉塞症が1例であった.また,死亡が2例に認められ,心筋梗塞および糖尿病性皆睡によるものであった.他の23例は経過良好であった.このように,STA-SCA bypassは,手術合併症や全身合併症を抑え,より安全に手術を施行することが可能であり,椎骨脳底動脈系の脳虚血に対する有力な治療法であると考えられた.
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