薬剤耐性遺伝子の発現結果を基に化学療法を行い, 良好な結果が得られた中枢神経系原発性悪性リンパ腫(CNSL)の症例を報告した.症例は74歳, 女性で, 1999年11月10日より徐々に右片麻痺および言語障害が進行し, 当科入院となった.頭部CTおよびMRIにて, 左前頭葉および左視床から大脳脚に浮腫を伴い, 均一に増影される腫瘍が認められた.左前頭葉腫瘍の定位的生検術にてdiffuse large B-cell lymphomaと診断した.RT-PCR法にて種々の薬剤耐性遺伝子のmRNAの発現を検索した結果, MDR1, MRP1, MGMT, Topo IIαは発現を認めたが, cMOAT/MRP2, およびMXR1の発現はみられなかった.methotrexate(MTX)の大量(3.5g/m2)投与を1クール行ったが, 一度縮小した腫瘍が再増大したため, 2, 3クール目では, 薬剤耐性遺伝子の発現結果より, mitoxantrone, carboplatinをMTX大量療法と併用した.その後, 腫瘍は完全に消失した.神経学的に失語症は改善し, 右片麻痺は改善傾向にあり, 現在リハビリ訓練中である.このような, 一連の薬剤耐性遺伝子発現を参考した化学療法, いわゆる"テーラーメード"の治療が今後期待される.
抄録全体を表示