Pedialric Brain Tumor Foundation of The United States によれば,小児の脳腫瘍は,すべての小児がんのなかで最も死亡率が高く.34歳までのがん死のleading cause になりつつあるという.しかし,本邦においてはこの認識は低い. また成人例と異なり,小児の脳腫瘍の最大の特徴は.その組織型が多彩であることである.組織型の多彩さは,治衝去の複雑さと同義であり,予後を鑑みた個々の患児に至適な手術,放射線・化学療法の計画を立てることは容易ではない.化学療法が必須とされ有効と考えられる代表的小児脳腫瘍にIS. B芽膿,PNET,胚細胞腫瘤.乳幼児の毛様細胞性星細胞腫などがあるが,確立された化学療法の適応と実施手段はいまだ少ない. また,小児に対する化学療法を長期にわたって行うためには,施設内倫理委員会の認証,インフォームドコンセント,患者・家族教育と精神的支援,看護師教育,調剤の安全確保,無菌管理のための設備,家族のための宿泊施設斡旋,院内学級教育,小児慢性疾患の迅速な手続き,保険審査と医療費対策,病棟内での患児と母親のストレス解消の援助など、さまざまな治療以外のケアがなされなければならない.本邦における小児脳腫瘍治療施設のセンター化が望まれている時代であろう.
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