凝固術においては,最少の副作用で最大の効果が得られる最適の標的部位を限局性に特定することが,その基本的な戦略となる.しかし,脳深部刺激療法(deep brain stimulation : DBS)では,必要な範囲の刺激が行えるように電極を配置することが基本的な戦略である.この戦略では,最適な部位が限局性に存在するという前提は必要とならない.したがって,凝固術とDBSでは異なる工夫が必要となる.振戦に対する凝固術では,主として視床腹中間核の腹外側部が最適の標的部位とされてきた.これに対し,振戦に対するDBSでは,視床腹吻側核から腹中間核にわたる広い範囲の刺激ができるように電極を配置したほうが,良好な効果が得られる.そのためには(1)前後方向では,DBS電極をあまり垂直にしない,(2)内外方向では,DBS電極をあまり外方に傾けない,(3) dual-leadDBSを活用する,などの工夫をすることが重要である.
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