先天性水頭症の臨床上の未解決の問題点として,胎児期水頭症の診断と治療,および成人期にキャリーオーバーした先天性水頭症患者の問題を取り上げた.胎児超音波検査が産科検診で一般的に行われるようになり,現在では先天性水頭症の55%は出生前に診断される.全国疫学調査の結果では,胎児期脳室拡大として診断される疾患は,単純性水頭症と脊髄髄膜瘤, Dandy-Walker症候群,全前脳胞症,二分頭蓋などに合併する水頭症など多岐に渡り,その転帰も後遺症なく健康,軽度障害,中等度障害,重度障害,死亡が,それぞれ19%, 22%, 25%,28.5%, 5.5%とさまざまであった.予後を決定する最も重要な因子は,基礎疾患と合併病態であると考えられる.基礎疾患をもとにした病態分析を行い,胎児期水頭症の診断と治療に関するガイドラインを作成することが急務である.先天性水頭症の生命予後は改善し,成人期に遺した患者も少なくない.そのため,疾病のことや仕事,生活,経済的問題,将来の介護の問題,結婚や出産のことなど,新たな問題に直面している.
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