Anterior oblique keyhole approachは固定を必要とせず, 頸椎椎間板症に対する低侵襲な方法であり, 多椎間病変にも有用である.しかし, 本手術の有用性を論じるためには長期の経過観察が必要と思われる.今回われわれは, 術後1年以上追跡できた症例に対し検討を加えたので報告する.対象症例は術後1年以上追跡できた52例で, 平均追跡期間は36カ月であった.平均年齢は58.1歳(33〜83歳)で, 男性30例, 女性22例であった.手術は頸椎不安定性のないもの, C3/4からC7/T1レベルのものに行った.病変は椎間板ヘルニアが41例, 頸椎症が10例, 後縦靭帯骨化症が1例であった.処置椎間数は1椎間32例, 2椎間17例, 3椎間3例であった.Radiculopathyのみ認めた例をgroup 1とし, radiculopathyとmyelopathyもしくはmyelopathyのみを呈したものをgroup 2とした.Group 1は34例で, group 2は18例であった.術後神経学的評価はNCSSを用い, 頸椎X線, 頸椎CT, MRIにてフォローアップした.平均改善率は1カ月後86.4%て, これは1年以降も保たれていた.Radiculopathyのみの群はexcellent, goodが88.9%を占め, myelopathyを認めた群は72.7%であった.術後軽度頸椎不安定性を呈した例はなかった.また, 椎間板の脊髄前方削開幅は, 平均8.7mm(6〜12mm)であった.平均入院日数は10日であった.合併症は1例に脊髄損傷をみた.神経症状は術後1カ月以内に良好な改善を認め, 長期的に保たれうることが示された.本手術は頸椎椎間板症に対する有用な治療法といえ, 多椎間病変にも施行可能で, 頸椎の可動域にもほとんど影響を与えない.また術翌日より歩行可能であり, 入院期間も短く, 低侵襲な手術といえ, 早期離床が望まれる高齢者にも適応されうると思われた.
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