第三脳室内腫瘍に対する手術は,腫瘍が深部にあり術野は深く狭い,周辺に温存しなければならない重要な神経組織,血管がある,などの理由で現在でも最も困難な手術の一つといえる.第三脳室前半部に発生する代表的な腫瘍は頭蓋咽頭腫で,後半部では松果体部に発生する腫瘍(特に胚細胞性腫瘍)である.それぞれの腫瘍に対してさまざまな手術アプローチがあるが,頭蓋咽頭腫に対しては,大脳半球間裂から経終板的に腫瘍を摘出する方法が一般的になりつつある.一方,後半部ではテント上からテントを切開して入る方法,あるいはテントと小脳の間からアプローチする方法があるが,近年神経内視鏡の技術が進歩し,内視鏡的に第三脳室開窓を行い水頭症を解除した後,腫瘍の生検を行って診断を得て,放射線/化学療法を行う治療法が,特に胚細胞性腫瘍では一般化しているため,顕微鏡下で手術的に腫瘍摘出を行う機会は減少している.困難な第三脳室内腫瘍に対する手術アプローチは,腫瘍の局在,大きさ,性状,術者の経験,熟練度によってさまざまな方法が採られるが,最も安全で経験のある手術アプローチで手術が行われるべきである.
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