脳神経外科ジャーナル
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21 巻, 12 号
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特集 ステップアップの手術手技
  • 帯包 雄次郎, 波出石 弘
    2012 年 21 巻 12 号 p. 918-924
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/12/25
    ジャーナル フリー
     脳動脈瘤は大きくなると周辺組織との癒着が生じる. 適切なクリッピングのために周辺組織との癒着の解除は重要な手技である. 動脈瘤と癒着する組織として, 主幹動脈, 穿通枝, 静脈, 硬膜, 脳組織, 血腫がある. 特に問題なのは血管との線維性癒着である. この線維性癒着は辺縁で強く, 中心部で緩いという特徴をもつ. その特徴を最大限に生かして癒着の解除は行う. その他の組織との癒着でも周囲の血管, 脳神経の確認のために瘤の剥離が必要とされる. 吸引管や脳ベラで適切な牽引をし, 正しい面を剥離することが重要であるが, 場合により動脈瘤自体を牽引したり, 脳組織や血腫を破裂部位に付着させたままにすることで安全な剥離ができる.
  • 石川 達哉, 師井 淳太
    2012 年 21 巻 12 号 p. 925-930
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/12/25
    ジャーナル フリー
     脳動静脈奇形AVMの外科手術を成功裏に終わらせるために必要なものは綿密な戦略と高度な戦術である. この論文ではAVMを外科治療だけで根治させる状況での戦略と戦術を述べる. 手術適応の吟味と3次元的放射線情報に基づいた手術計画を行い, 手術可能と判断したら, よい手術器具と交替できる術者を準備する. AVMの手術は次の4段階から構成される. (1) 十分な開頭を行い, 脳溝を広く開放し, feederの近位を確保し, (2) feederをnidusの直前で凝固切断する. (3) nidusの血管ループを指標にしつつ周辺のgliosisの層で剥離を行い, 深部からのfeederを処理する. (4) nidusを1本のdrainerに収束させて切断し摘出する.
  • 田中 雄一郎, 神野 崇生, 内田 将司, 小野寺 英孝, 高砂 浩史, 伊藤 英道, 平本 準, 大塩 恒太郎, 榊原 陽太郎
    2012 年 21 巻 12 号 p. 931-936
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/12/25
    ジャーナル フリー
     髄膜腫手術の目標は, 合併症なしに腫瘍を全摘出し神経機能を改善させることである. 手術を成功させるには, 術前画像所見読影, 術前塞栓術, 術中モニタリング, 適切な体位・頭位・開頭の設定, そして手術アプローチと手術機器の選択など多段階のステップを着実に遂行する必要がある. 本稿では髄膜腫摘出の手技をステップアップさせることを目的に, 杉田式頭部固定枠と熊手型レトラクターをどのように利用するかを中心に解説する. 頭部固定枠は術中左右35度まで回旋可能で, 脳の自重を利用し脳損傷を軽減できる. 熊手型レトラクターは, 状況に応じたさまざまな使い分けで正常組織の損傷を最小限にとどめ迅速な摘出に寄与する.
  • 夏目 敦至, 藤井 正純, 百田 洋之, 大野 真佐輔, 本村 和也, 若林 俊彦
    2012 年 21 巻 12 号 p. 937-942
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/12/25
    ジャーナル フリー
     グリオーマの手術は, 神経機能を温存しつつ, 可能なかぎり腫瘍摘出することが重要である. 脳解剖を熟知し入念な計画が必要であるのはいうまでもない. グリオーマでは摘出範囲を解剖と画像—造影MRI, T2, FAIR image, PET—と照らし合わせ, アプローチはもちろん, 手術体位, そして, メルクマールとなる構造物は何であるかを十分に検討しておくことが第一歩である. 当院では, MRIとPETを統合したニューロナビゲーション, DTIによるtractography, 経皮質刺激でのSEP, MEPの手術支援法をルーチンとしている. 必要に応じて覚醒下開頭による言語マッピングを行っている. 一方, 開頭術での髄液流出によるブレインシフトや脳内減圧による術前画像とのずれが問題となる. 術野で白質に直接刺激を加えることで皮質脊髄路の白質線維に達するとMEPが記録される. 術野近傍の皮質脊髄路の存在と機能を確認することができる. また, 術中MRIは, 手術的摘出度, 合併症の有無, 術野周囲の解剖の再確認とともにナビゲーションの更新を行う. これにより腫瘍摘出度の向上と機能温存が期待できる.
  • 宇野 昌明
    2012 年 21 巻 12 号 p. 943-948
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/12/25
    ジャーナル フリー
     頚動脈内膜剥離術 (以下CEA) は頚動脈狭窄症に対しての外科的脳梗塞予防手段として第1選択の治療法であり, 欧米でも本邦でも多くの手術がなされている. この論文はCEAをマスターし, さらなるステップアップをするためのポイントを概説する. 最も大切なこととして頚動脈周囲の解剖を熟知し, 狭窄が高位に伸展する際にどのように対処するかを解説した. またパッチを使用した縫合の方法も概説した.
  • 坂井 信幸, 今村 博敏, 坂井 千秋, 足立 秀光, 谷 正一, 石川 達也, 峰晴 陽平, 池田 宏之, 浅井 克則, 稲田 拓, 小倉 ...
    2012 年 21 巻 12 号 p. 949-958
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/12/25
    ジャーナル フリー
     現在の脳動脈瘤に対する血管内治療は離脱型コイルをできるだけタイトに瘤内に塞栓することにより出血を防ぐことが基本である. いわゆるシンプルテクニックでは十分な結果が期待できない場合は, アドバンスト手技を用いる. ダブル (マルチプル) カテーテル法は, 不規則な形状で, バルーンやステントが使いづらい血管構築やアクセスが困難な場合に選択する. バルーンアシスト法は, ハイパーコンプライアントバルーンによりネックをカバーしながらコイル塞栓する. ステントアシスト法は, 頭蓋内ステントを留置しコイル塞栓する. 血管内治療の適応拡大と長期成績の向上に寄与しているが, 複雑な手技や抗血栓療法に伴う合併症に留意しなければならない.
原著
  • 治療経験と短期手術成績
    武澤 正浩, 高橋 敏行, 花北 順哉, 倉石 慶太, 上坂 十四夫, 渡邊 水樹, 千原 英夫
    2012 年 21 巻 12 号 p. 959-966
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/12/25
    ジャーナル フリー
     2011年2月∼7月に当科で保存的治療が無効の有痛性骨粗鬆症性脊椎圧迫骨折 (osteoporotic VCF) に対してballoon kyphoplasty (BKP) を施行し, 3カ月以上フォローアップ可能であった7症例につき臨床成績, 放射線学的所見を検討しBKPの有効性, 安全性につき検証した. 全例で即時的な疼痛緩和, ADL改善を認めた. また椎体高回復, 局所後弯角改善も認め, 共に統計学的に有意であった. 合併症としては1例のみBKP施行1カ月後に隣接椎体に新規骨折を認めたが, 全例でセメント漏出は認めず神経学的, 全身性合併症も認めなかった. BKPはosteoporotic VCFの遷延する疼痛に対して, 有効かつ安全に施行可能な低侵襲治療であると考えられる.
症例報告
  • 以前の脳動静脈奇形切除術と同一開頭部位での腫瘍発生
    金子 陽一, 玉置 裕一郎, 外尾 要, 増田 勉
    2012 年 21 巻 12 号 p. 968-973
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/12/25
    ジャーナル フリー
     放射線誘発性髄膜腫についてはよく知られているが, 以前の開頭部位に一致して髄膜腫が発生したという報告は少ない. 今回われわれは頭部の放射線治療の9年後に脳動静脈奇形切除術を施行され, 開頭部位に一致して髄膜腫が発生した1例を経験した.
     患者は2歳時に急性リンパ性白血病の診断で, 化学療法と放射線頭蓋照射を受けた. 11歳時には左頭頂部の動静脈奇形を切除され, このときに人工硬膜を使用されている. 22歳時には, 以前の開頭手術と同一部位に発生した髄膜腫を発見され, 摘出術を受けた. 放射線照射に加え, surgical traumaや慢性炎症反応も腫瘍形成に関与したために, 以前の開頭手術と同一部位に髄膜腫が発生しやすい環境になったものと推測された.
神経放射線診断
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