脳神経外科ジャーナル
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21 巻, 10 号
選択された号の論文の8件中1~8を表示しています
特集 脳神経外科医が知っておくべき薬物療法の知識
  • 長谷川 一子
    2012 年 21 巻 10 号 p. 758-764
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/11/09
    ジャーナル フリー
     パーキンソン病に対するレボドパ治療が開始されてから50年が経過した. その間, ドパミンアゴニストをはじめとするさまざまな薬物が臨床で使用できるようになるとともに, パーキンソン病は固縮, 振戦, 無動, 姿勢制御障害の4徴で示されるような単なる運動疾患ではなく, さまざまなアミン系神経の変性に伴う症状—自律神経症状, 認知障害, 睡眠障害など—を示すことも明らかとなった. ここではパーキンソン病治療法の過去から現在までの変遷, パーキンソン病治療ガイドライン2011に基づくパーキンソン病の治療開始時期の問題, 初期治療の薬物選択の問題, パーキンソン病に伴う非運動症状の概略, 将来の治療法の展望について概説する.
  • 遠藤 英俊
    2012 年 21 巻 10 号 p. 765-770
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/11/09
    ジャーナル フリー
     アルツハイマー型認知症の治療薬は4種類存在し, 薬剤を適切に選択する時代となった. 重症度やBPSD, 患者背景に合わせて, 適切に選択する必要がある. 標準的な診療として認知症疾患治療ガイドラインコンパクト版2012が公表されており, ドネペジルやガランタミン, リバスチミン, メマンチンは認知機能の進行遅延のほか, ADLに関わる介護時間の短縮, 介護の見守り時間の短縮, 入所時期の遅延による医療費・介護費用の削減などの効果が報告されている. さらに認知症に対する良質なケアや環境, 脳リハビリが加われば, 治療効果も向上する. 医師は認知機能だけでなく, 本人の気持ちや尊厳, 家族の介護負担にも配慮して治療にあたる必要がある.
  • 間中 信也
    2012 年 21 巻 10 号 p. 771-778
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/11/09
    ジャーナル フリー
     頭痛の診療は, 国際頭痛分類第2版と, 慢性頭痛の診療ガイドラインを活用して行う. 片頭痛には多くの急性期治療と予防療法が存在する. トリプタン (セロトニン1B/1D受容体作動薬) は片頭痛の特異的治療薬であり, 現在 (2011年9月), スマトリプタン, ゾルミトリプタン, エレトリプタン, リザトリプタン, ナラトリプタンの5種類, 錠剤, 口腔錠, 点鼻液, 皮下注射液ののべ10製剤が使用可能である. 満足するトリプタンの効果を得るには, 的確な診断と, アロディニア出現前の早期服用が求められる. 頻回使用 (月10日以上) により薬物乱用頭痛を招くので, そのおそれがある場合は片頭痛予防療法を併用する.
  • 宮下 史生, 豊田 一則
    2012 年 21 巻 10 号 p. 779-790
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/11/09
    ジャーナル フリー
     アスピリンは, 脳梗塞患者の急性期抗血栓療法と再発予防目的で強く勧められている. クロピドグレルやシロスタゾールは, 脳梗塞再発予防目的でアスピリンと同等以上の効果を示す. 一般的な脳梗塞再発予防に, 抗血小板薬の併用療法は出血の危険性から勧められていない. 抗凝固療法については, non valvular atrial fibrillation (NVAF) 患者の脳梗塞予防において, ワルファリンに加えてダビガトランが認可され, その他の新規薬剤も臨床試験中である. 抗凝固療法を行う際には, CHADS2スコアやCHA2DS2-VAScスコア, HAS-BLEDスコアで塞栓症と出血の危険性を評価していくことが望まれる. BAT研究において, 日本人における抗血栓療法施行中の出血について報告されている.
温故創新
症例報告
  • 横須賀 公彦, 松原 俊二, 山口 真司, 戸井 宏行, 桑山 一行, 平野 一宏, 宇野 昌明
    2012 年 21 巻 10 号 p. 796-800
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/11/09
    ジャーナル フリー
     低髄液圧症候群に対する診断・治療については, 近年数多く報告されている. 意識障害を伴う症例報告はあるが重篤な経過をとる症例は少なく, 死亡例は1例のみ報告されている. われわれは, 急激に意識障害が進行し, 1度のドレナージ術と2度のEBPを行うも不幸な転機をとった症例を経験した. 意識障害を伴う症例は両側のCSDHを併発している症例が多く, 血腫量により治療方針を決定することが望ましい. また, 漏出部位の確定が困難でEBPの治療効果が不十分であれば早期に次の治療を行う必要がある. 腰椎部でのEBP, 硬膜外持続投与, 手術による閉鎖術などを積極的に行うべき症例が存在することを知っておく必要がある.
  • 梅村 武部, 山本 淳考, 高橋 麻由, 中野 良昭, 齋藤 健, 北川 雄大, 植田 邦裕, 宮岡 亮, 黒川 暢, 西澤 茂
    2012 年 21 巻 10 号 p. 801-807
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/11/09
    ジャーナル フリー
     髄膜腫は成人の原発性脳腫瘍として最も頻度が高いが, 頻度は少ないものの小児にも発生する. 一般的に良性で発育も緩徐な髄膜腫であるが, ごくまれに頭蓋内出血で発症する場合がある. 今回, 小児に発生し, 腫瘍内出血により急速に意識障害に至った悪性髄膜腫を経験したので報告する. 3歳4カ月の男児で, 感冒様症状で発症し, その後, 左上下肢麻痺が出現. 頭部MRIでは, 右前頭葉に腫瘍内出血を伴う不均一な信号を呈する巨大腫瘍性病変を認めた. 造影FIESTA法では, 腫瘍は, 大脳鎌に付着部を有し, 対側へ進展していた. 入院翌日に, 急速に症状が進行し, 翌々日に手術を施行. 腫瘍は, 硬膜付着部を含め全摘出した. 病理診断は, anaplastic meningioma (WHO grade III) の診断であった. しかしながら, 術後2カ月後の頭部MRIでは, 腫瘍再発所見を認めており, 再手術後, 放射線治療を導入した. 初回手術後より8カ月が経過したが, 明らかな神経脱落症状はなく, 頭部MRI上にても腫瘍再発は認めていない. 小児髄膜腫, 特に悪性髄膜腫においては, 腫瘍内出血で発症する場合があり, 正確な診断, 治療を含め時期を逸しない対応が必要である. 積極的な外科的治療後も, 厳重な頭部MRIによる経過観察を行い, 再発時には速やかに再手術あるいは放射線治療を行うことが重要である.
  • 青井 瑞穂, 永井 三保子, 中津 大輔, 清水 智久, 福原 徹, 難波 洋一郎
    2012 年 21 巻 10 号 p. 808-811
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/11/09
    ジャーナル フリー
     今回われわれは, 頭部外傷で神経症状が出現した脊髄係留症候群例を経験した. 症例は13歳女児. 生下時より脊髄脂肪腫があり, 3カ月時に脂肪腫の部分摘出と係留解除術を行った. その後のMRIでは再係留が疑われていたが, 神経症状なく成長していた. 13歳時に転倒して後頭部打撲後に下肢運動障害・感覚障害が出現した. 受傷3カ月後に脊髄係留解除術を行い, 術後に下肢の症状は改善した. 膀胱機能障害が一時的に増悪したが, 術後2カ月で改善した. 脊髄係留症候群は係留解除を繰り返すたびに手術は困難になり, 神経症状の改善率も低下する. 再係留に対する手術適応や手術法の選択には十分な検討が必要である.
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