脳神経外科ジャーナル
Online ISSN : 2187-3100
Print ISSN : 0917-950X
ISSN-L : 0917-950X
22 巻, 11 号
選択された号の論文の9件中1~9を表示しています
特集 頭部外傷治療の基本とトピックス
  • 刈部 博, 中川 敦寛, 亀山 元信, 小沼 武英, 冨永 悌二
    2013 年 22 巻 11 号 p. 822-830
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/11/25
    ジャーナル フリー
     頭部外傷手術は頭蓋内血腫や脳浮腫等による頭蓋内圧亢進を制御することが主目的である. 急性硬膜外血腫では十分に血腫を覆う開頭を行い血腫除去と出血源の止血を行う. 急性硬膜下血腫では外減圧を想定した大開頭を行い, 迅速な減圧を要する場合には緊急穿頭で一時的減圧を得る等の工夫が有用である. 挫傷性出血を伴う脳挫傷では内減圧が有効な場合がある. 頭蓋内血腫が明らかでない重症頭部外傷では頭蓋内圧モニタリングを行い, 必要に応じ減圧術を行う.
     頭部外傷の手術手技はシンプルだが, 病態・程度・時期により, 種々の手技の組み合わせ, 連携により効果的な治療を行うことが肝要である.
  • 前田 剛, 吉野 篤緒, 片山 容一
    2013 年 22 巻 11 号 p. 831-836
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/11/25
    ジャーナル フリー
     ガイドラインの理念は, 医療の質を一定の水準に保ち診療に資すことであり, そのためには, 診療・治療・管理のminimal essentialが求められ, 新たなエビデンスに対応して常に改訂することが不可欠である. 本ガイドラインは2000年に初版が発刊され, 2006年の第2版に続く改訂であり, 常に変化する日本の医療環境と神経外傷学の発展に対応してきた. 本項では第3版においてアップデートされた項を解説するとともに, 日本脳神経外傷学会の日本頭部外傷データバンクの結果から, 本ガイドラインが重症頭部外傷の治療に及ぼした影響と重症頭部外傷の治療・管理の現状を解説する. 急激な病態の変化に対応しなければならない重症頭部外傷では, 治療の選択が脳神経外科医の裁量に委ねられることが多い. 高度な裁量を遂行するためには判断能力を高めることが必要であり, その1つの方法として本ガイドラインを活用していただければ幸いである.
  • 高山 泰広, 横田 裕行, 佐藤 秀貴, 直江 康孝, 荒木 尚
    2013 年 22 巻 11 号 p. 837-841
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/11/25
    ジャーナル フリー
     頭部外傷後の凝固・線溶系障害は, 脳損傷の重症度や重症化の指標であり予後因子であることは報告されている. 急性期の線溶亢進は一次脳損傷をした挫傷脳周囲の出血を惹起し血腫増大へ影響する. そのため急性期の病態解明が治療へ影響するものと考える. 本研究では頭部外傷直後からの時間単位・病日単位で凝固・線溶系分子マーカーの推移から脳損傷のメカニズムを解明することで, 新たな治療ストラテジーを構築できるものと考える. この急性期のメカニズムとして受傷直後から約3時間以内は凝固亢進もあるが線溶亢進が著しく, その後3∼6時間で線溶遮断となる. 6時間以降は線溶亢進が終息に向かっているが, 凝固亢進と線溶遮断は継続し, fibrinogenも上昇し始め血栓傾向に移行することが示された. 超急性期は出血による損傷で, その後は血栓傾向による虚血が関与している可能性がある. これらのダイナミックな変化を把握するためには凝固・線溶系のモニタリングが重要であり, これらを活用することで新たな治療ストラテジーを構築できるものと考える.
  • 特にびまん性脳損傷慢性期の画像について
    篠田 淳, 浅野 好孝
    2013 年 22 巻 11 号 p. 842-848
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/11/25
    ジャーナル フリー
     従来, 頭部外傷後に記憶・記銘力障害, 注意障害, 遂行機能障害, 社会的行動障害を後遺し社会に適応できない人たちの存在は十分理解されなかった. 国は彼らに「高次脳機能障害」という傷病名をつけ障害者として行政支援の対象とすることにした. 本障害診断基準では画像で脳の器質的疾患が確認されることが必要とされる. 近年, MRIの新しい撮像法, SPECTやPETは従来の画像では確認できなかった脳の損傷を捉えることを可能にした. これらの画像は従来「見えない障害」と呼ばれてきた高次脳機能障害を「見える障害」へ移行させつつある. びまん性脳損傷慢性期の画像診断と画像所見から推測できる本障害のメカニズムについて述べる.
温故創新
原著
  • 新しい考え方における手術成績と術中血管所見
    清水 暢裕, 貫井 英明, 清水 庸夫
    2013 年 22 巻 11 号 p. 851-859
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/11/25
    ジャーナル フリー
     特発性三叉神経痛に対し神経を圧迫・接触しているすべての血管を神経から移動することを基本にして神経血管減圧術を行った症例において, 術中に観察した圧迫・接触血管の種類, 本数および接触様式が合併症発生率, 治癒率, 再発率に与える影響を検討した. さらに, 本術式による成績をこれまでの報告と比較し, 本術式の妥当性を検証した. 症例は連続116例で, 1∼8年 (平均3.6年) の追跡調査を行った. 術後合併症に関しては, 一時的合併症が20例17%, 持続的合併症が1%に認められ, 合併症発生率は圧迫・接触血管が3本以上の例および上小脳動脈が圧迫・接触血管でない例で高かった. 13例で術後症状残存・再発を認めたが, 術中血管所見との相関はなかった. 本術式による持続的合併症発生率は1%, 再発率は9%, 治癒率は術直後97%, 術後1∼3年では91∼88%であった. 以上から, 複数の圧迫血管の見落としをなくすことと術後の血管位置の変化による再発を予防することを目的とした本術式では, 血管構築の複雑な例で一時的合併症の発生が増加するが, 持続的合併症発生率, 再発率は低く, 治癒率は高いことから, 本術式は有用で採用すべき方法であるといえる.
症例報告
  • 渡邊 陽祐, 山崎 文之, 梶原 佳則, 高安 武志, 廣瀬 隆則, 武島 幸男, アマティア VJ, 杉山 一彦, 栗栖 薫
    2013 年 22 巻 11 号 p. 860-865
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/11/25
    ジャーナル フリー
     Papillary glioneuronal tumor (PGNT) はWHO 2007分類に新たに登録された非常にまれな腫瘍である. 今回われわれは偶然発見されたPGNTの1例を経験した. 症例は17歳女性である. 頭部打撲時の画像診断で異常陰影を認め, 当院紹介となった. 右側頭葉深部白質に境界明瞭で一部石灰化を伴い, わずかに造影される30mmの腫瘤性病変を認め, 開頭腫瘍摘出術にて全摘した. 腫瘍は暗褐色で, 比較的軟らかく, 易出血性であった. 組織学的にはクロマチンに富んだ小型の星細胞系腫瘍細胞が, 硝子化した血管周囲を1層から重層性に取り囲み, 偽乳頭状の構造を呈していた. この偽乳頭状の構造間に, 円形の核を有する小型神経細胞が結節状, 胞巣状に増殖していた. これらよりPGNTと診断した. 現在, 補助療法を行わず外来経過観察中である.
  • 高井 洋樹, 平井 聡, 山口 真司, 横須賀 公彦, 戸井 宏行, 桑山 一行, 松原 俊二, 平野 一宏, 西村 広健, 宇野 昌明
    2013 年 22 巻 11 号 p. 867-871
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/11/25
    ジャーナル フリー
     われわれは海綿静脈洞外側壁に発生した奇形腫の1手術例を経験したので報告する. 症例は21歳の男性. 1カ月前から右眼痛と2週間前から進行する動眼神経麻痺を認めた. 頭部MRIのT1, T2強調画像で海綿静脈洞にmixed intesityの腫瘍を認めたので手術で摘出した. 腫瘍は海綿静脈洞外側壁に存在し, 病理診断はmature teratomaであった.
     海綿静脈洞部奇形腫の報告は過去に5例のみであり, 非常にまれである. 海綿静脈洞部に特異なCT, MRI像を呈するこの腫瘍の鑑別や文献的考察を加えて報告する.
神経放射線診断
feedback
Top