脳神経外科ジャーナル
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22 巻, 2 号
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特集 良性腫瘍の診断と治療
  • 岡 秀宏, Arie Perry, Bernd W. Scheithauer
    2013 年 22 巻 2 号 p. 90-95
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/02/25
    ジャーナル フリー
     髄膜腫はくも膜細胞から発生し, 硬膜に付着し成長する腫瘍である. この腫瘍は大部分が良性 (WHO grade I) であるが, 時に組織学的に悪性傾向を示すWHO grade IIや悪性化を示すWHO grade IIIの腫瘍が発生することがあり, 再発率が上昇する. これら髄膜腫の治療方針は基本的に腫瘍の全摘出であるが, grade Iでの再発率は7∼25%, grade IIでは29∼52%, grade IIIでは50∼94%と報告されており, grade II, IIIでは手術摘出のみでは腫瘍コントロールが不十分であることがあり, これらの症例では放射線治療を考慮する必要がある.
  • 植木 敬介, 樋口 芙未, 河本 俊介, 金 彪
    2013 年 22 巻 2 号 p. 96-100
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/02/25
    ジャーナル フリー
     脳神経外科診療において最も遭遇する可能性が高い家族性腫瘍性疾患は, 神経線維腫症2型とvon Hippel-Lindau病である. ともに, 組織的には良性の腫瘍が神経系に多発し, 患者の多くは多数回の手術を受けることになるが, それぞれの手術が神経学的障害を起こすリスクがあり, かつ完全治癒がないことが特徴ともいえる. 治療介入の時期と方法の選択が適切な治療には必須で, そのためには疾患の分子メカニズムと, 自然経過の知識が重要である.
  • 現状と課題
    富永 篤, 木下 康之, 碓井 智, 栗栖 薫
    2013 年 22 巻 2 号 p. 101-108
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/02/25
    ジャーナル フリー
     非機能性下垂体腺腫に対する治療の第一選択は手術であるが, 機能性下垂体腺腫では有効な薬物療法があり, 手術が必ずしも第一選択ではない. プロラクチノーマではdopamine agonistによる治療がすでに第一選択となっている. ただ, プロラクチン正常化率は高いが治癒率は必ずしも高くない.
     先端巨大症ではsomatostatin analogやpegvisomantなど有効率が高い薬剤があるが, 根治できないことが課題である.
     クッシング病は高コルチゾール血症が生命に関わる疾患である. Mitotane, methyraponeといった薬剤で高コルチゾール血症はコントロールできるが腫瘍に対する有効な薬物療法がない.
     また, 異形成下垂体腺腫や下垂体癌などでは決定的な薬物療法はなく, temozolomideによる治療が試みられている.
  • 齋藤 清, 佐藤 拓, 市川 優寛, 岸田 悠吾, 田村 貴光, 織田 惠子, 松本 由香, 安藤 等, 佐久間 潤
    2013 年 22 巻 2 号 p. 109-116
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/02/25
    ジャーナル フリー
     頭蓋底腫瘍の治療には腫瘍制御と機能温存が求められるが, 達成は容易でない. 頭蓋底に進展した癌や肉腫などの悪性腫瘍に対する広範囲頭蓋底腫瘍一塊切除・再建術は60∼70%の治癒率が期待できる. 重粒子線や陽子線治療など新しい放射線治療により手術に匹敵する治癒を得ることができるか, 長期成績の解析が必要である. 脊索腫には摘出手術と高線量放射線治療が用いられるが, 5年生存率は60∼80%前後と不良である. 確実な摘出のために周辺骨まで削除することが重要であり, 拡大経鼻内視鏡手術が開頭頭蓋底手術に置き換わるか, 陽子線治療や重粒子線治療を用いて大きな腫瘍も制御ができるか, 長期治療成績の解析が待たれる. 頭蓋底髄膜腫には摘出術と定位放射線治療が必要であるが, 摘出困難例や臨床的悪性例が存在し治療は容易でない. 成績改善には摘出目標を明確にすることが重要である. 浸潤性, 成長が早い, 再発しやすい, 悪性転化するなど臨床的悪性髄膜腫の診断が可能となれば, より適切な治療方針が確定できる. 定位放射線治療については治療時期の決定 (摘出術直後vs. 腫瘍増大確認後) と, 超長期成績の解析による腫瘍悪性化や二次癌発生率の解明が必要である.
  • 石内 勝吾
    2013 年 22 巻 2 号 p. 117-124
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/02/25
    ジャーナル フリー
     陽子線や炭素線を用いた粒子線治療が, X線治療抵抗性の悪性脳腫瘍ばかりでなく, 脊索腫, 軟骨肉腫, 髄膜腫などの頭蓋底腫瘍にも応用されている. 粒子線はブラッグピークをもち, 正常脳への保護, 腫瘍への線量の集中性がX線に比較して優れており, より良好な治療効果が期待できる. さらに粒子線の収束性を高め病巣に精密度に照射かつ正常細胞への被曝を回避するための小スポットビーム照射法やスキャニング照射法などの技術革新は目覚ましい勢いで発展している. 今後粒子線治療をより安全で治療効果の高い確実なものにするためには, 局所腫瘍再発, 遠隔転移, 脳壊死, 脳萎縮などの晩発性障害の分子機構の解明が必要である.
原著
  • 山田 哲久, 名取 良弘
    2013 年 22 巻 2 号 p. 125-132
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/02/25
    ジャーナル フリー
     慢性硬膜下血腫は脳神経外科ではよく遭遇する疾患であるが, 穿頭術後の再発の要因は明確にされていない. 2000年1月∼2010年12月までに当院脳神経外科で経験した成人慢性硬膜下血腫の初回穿頭術622患者 (769手術例) を対象に, 再発危険因子を検討した. 再発例は78例 (10.1%) で, 再発危険因子は年齢 (70歳以上), 外傷から手術までの期間 (70日以上), 両側血腫・両側手術, 術前血腫吸収値 (鏡面形成), 術前血腫量 (80ml以上), 血腫腔縮小率であった. 再発を防止するためには手術で可能なかぎり血腫を除去して空気の混入を防ぐことが必要であると考えられた.
症例報告
  • 伊藤 誠康, 大村 武久, 三宅 裕治, 辻 雅夫, 浮田 透, 英 賢一郎, 山田 佳孝, Tucker Adam, 上杉 哲平, 中内 ...
    2013 年 22 巻 2 号 p. 134-140
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/02/25
    ジャーナル フリー
     症例は20歳, 女性. 自転車走行中に転倒し左顔面を打撲. 頭部CTにて頭蓋内異常所見を認めなかったが, 嘔気嘔吐症状を呈したため経過観察入院となった. 意識清明で神経学的異常を認めなかったが, 受傷3日目に急激に著明な左眼視障害 (矯正視力0.08, 中心性視野狭窄) が出現した. 外傷性視神経障害と診断されステロイドパルス療法にて症状は改善傾向となった. 頭部CT, 脳MRIにて視神経管骨折所見を含めて責任病巣を認めなかったが, 左眼窩後外側壁の小骨折所見のみを認めた. 眼底検査および蛍光眼底造影は正常所見であり, 後部視神経障害と判断された. 遅発性に発症する外傷性視神経障害はまれな病態であり, その発症機序に関して解剖学的検討および文献的考察を加えた. また, 推測された発症機序より, 視神経管近傍の骨折所見はこのような想定外で急な眼科的重症化を伴う変化を警告しうるものとして, 念頭に置く意義があるものと思われた.
  • 前田 昌宏, 久保 篤彦, 渡辺 正英, 坂本 雄大, 綾部 純一, 田中 良英
    2013 年 22 巻 2 号 p. 141-145
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/02/25
    ジャーナル フリー
     気管切開術後に約1%の頻度で起こるとされる致死的合併症である気管腕頭動脈瘻の1例を経験した. 予後はきわめて不良であり治療には大がかりな血管形成術などを必要とする. 治療がなされなければ救命されることはない. 気管腕頭動脈瘻は気管切開チューブやカフによる圧迫が気管と腕頭動脈壁の損傷をきたし, 瘻孔を形成し発生する. 脈管系の解剖学的変位などの要素も関与するため完全な予防は不可能であり, 気管切開術後は常に発生の危険が伴う. 発生頻度を低下させるには, 下位気管切開の回避, 気管切開チューブの適正なカフ圧管理, 腕頭動脈の走行確認などが肝要と思われた.
神経放射線診断
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