脳神経外科ジャーナル
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22 巻, 5 号
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特集 神経内視鏡手術に必要な脳神経外科微小解剖
  • 渡邉 督, 永谷 哲也, 齋藤 清
    2013 年 22 巻 5 号 p. 340-348
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/05/25
    ジャーナル フリー
     脳室内腫瘍に対する内視鏡下腫瘍摘出術, 脳室の内視鏡解剖について解説する. 明るく広い視野角で深部病変を近接して観察できる点, wet fieldで観察できる点が内視鏡手術の利点である. また, 視点の動きにより立体的な把握が比較的しやすい. シースを介して専用の器具を用い, 内視鏡単独手術による腫瘍摘出が可能である. 脳室は腫瘍によりしばしばひずみが生じオリエンテーションが難しくなるが, 側脳室の構造を理解し, モンロー孔, 脈絡叢, thalamostriate veinなどの限られたランドマークを基準に注意深く観察すれば解剖を把握できる. 脳室は温存すべき重要構造物に囲まれており, わずかな損傷でも症状を呈するため慎重な手術操作を要する.
  • 西山 健一, 藤井 幸彦
    2013 年 22 巻 5 号 p. 349-356
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/05/25
    ジャーナル フリー
     本稿では, 水頭症および関連する嚢胞性疾患に対して髄液路を作成する脳室鏡手術を提示し, 必要な解剖と知識を概説した. ここで術式は “脳室-脳槽短絡術” と “脳室内閉塞機転の解除” に大別される. 鏡視下で目印となる脳室内構造の把握に加えて, 前者では脳槽の構築と内部血管の, 後者では脳室壁直下の神経路と神経核の理解が必須である. “Third ventriculostomy” では, 両側乳頭体と漏斗陥凹とを結ぶ三角形の中心を目印に, 脳底動脈および同頂部から中脳に向かう動脈群の損傷を避けて, 脚間槽に穿孔する. この際, 脚間槽を縁取る二葉のLiliequist's membraneの確認が重要である. “Temporal ventriculostomy” では脈絡裂の仮想延長線を目印に, 前脈絡動脈の損傷を避けるようにcarotid cisternの後方からcrural cisternに穿孔する. “Aqueductoplasty” では, 動眼神経核, 内側縦束, 滑車神経路の損傷を避ける. なお, 水頭症関連疾患では正常構造を留めていない症例があり, 術前画像の詳細な検討が肝要である.
  • 中川 隆之
    2013 年 22 巻 5 号 p. 357-361
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/05/25
    ジャーナル フリー
     内視鏡下経鼻頭蓋底手術では, 標的とする病変の拡がりに応じ, 鼻副鼻腔の処理を行い, 適切な術野を確保する. Mid-lineアプローチでは, 中鼻甲介を温存しても, 十分な術野を得ることができる. 内頚動脈隆起や視神経管周辺での手術操作が必要な場合, 経中鼻道的にも蝶形骨洞の操作が行えるよう, 篩骨洞開放が必要となる. 最後部篩骨洞のバリエーションであるOnodi cellに注意が必要である. 蝶形骨洞外側にアプローチする場合, 上顎洞後壁削除が必要となる. Vidian神経管と上顎神経管が有用な目印になる. また, 頭蓋底再建においては, 嗅上皮と蝶口蓋動脈鼻中隔枝の位置を考慮した有茎鼻中隔粘膜弁を作製する.
  • 永谷 哲也, 若林 俊彦
    2013 年 22 巻 5 号 p. 362-369
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/05/25
    ジャーナル フリー
     近年, 内視鏡技術の進歩により内視鏡単独での経蝶形骨洞手術が広く認知されるようになってきた. しかし, 内視鏡の低侵襲性と広い視認性を生かした安全かつ効果的な手術のためには正確かつ系統的な解剖構造の理解が必要である. 本稿では下垂体腺腫の摘出を想定し, 内視鏡下経蝶形骨洞手術の手技手順に沿って有用と考えられる局所解剖の形態的特徴に関して文献的考察を加え提示する.
  • 矢野 茂敏, 秀 拓一郎, 河野 隆幸, 倉津 純一
    2013 年 22 巻 5 号 p. 370-378
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/05/25
    ジャーナル フリー
     下垂体腺腫に対する内視鏡下経蝶形骨洞手術は多くの施設で行われるようになってきたが, トルコ鞍外の頭蓋底病変に対して内視鏡手術を行うためには周辺の解剖を熟知することが必須である. アプローチでは両側鼻腔を利用して蝶形骨洞前壁を可及的に広く開放することが基本となる. 頭蓋底修復のための大きな有茎粘膜弁作成に際しては, 蝶形口蓋動脈の走行を理解しておくことが重要である. 蝶形骨洞の解剖学的指標をもとに, 前方, 側方, 斜台部に骨削除を拡大して病変に到達するが, 骨の奥に正常構造が内視鏡画像としてイメージできるようになることがポイントと考えている. 本稿ではわれわれの経験した症例をもとに, 内視鏡単独拡大経蝶形骨洞手術の要点を各方向別にまとめている. 正常解剖との対比を行いながら理解する必要がある.
  • 荻原 雅和, 木内 博之, 西山 義久
    2013 年 22 巻 5 号 p. 379-387
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/05/25
    ジャーナル フリー
     脳深部に位置し, 脳神経が密に走行する後頭蓋窩病変の手術は, 手術用顕微鏡では十分な視野確保が困難であるが, 内視鏡の併用により全体像の観察が可能となることが少なくない. 椎骨脳底動脈瘤のクリッピング術では, ネックや壁の性状に加えて穿通枝の走行が, 微小血管減圧術では, 小脳の圧排を最小限にした血管圧迫部位の観察が, さらに, 脳腫瘍摘出術では, 早い段階で背後の脳神経の走行が確認できるという利点を有す. 内視鏡は, 直線的視軸を持つ顕微鏡と相補的であり, 両者の併用は, より安全で確実な手術に寄与するものと考えられる.
  • 出沢 明
    2013 年 22 巻 5 号 p. 388-393
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/05/25
    ジャーナル フリー
     PED (経皮的内視鏡椎間板切除術) は神経根の椎間板の機械的圧迫に対していかに最小侵襲で除圧を行うかという手技である. この手技はさらに発展して後方より神経根を除圧する椎間孔除圧または側方より椎間関節の内側外側をピンポイントに切除する手技へと進化した. そして最近は脊柱管狭窄症に対しても椎弓切除を行って硬膜管神経根の除圧が可能になりつつある. したがって神経根のマクロの解剖とミクロの解剖を十分に理解した除圧手術が必要であることはいうまでもない. PEDはMED (内視鏡椎間板ヘルニア摘出術) より4倍ほど拡大され, また出血がないきれいな視野のために従来特定困難だったsinuvertebral nerveなどが観察される. さらに神経根の伴走するradicular vesselをも確認できる.
     外側陥凹から椎間孔を出る間に神経根も前根後根, spinal nerve, 末梢神経と3段階に名称を変えて構造を変化させている. また神経根から硬膜管に移行する際の微小循環動態も他の器官と異なり独特な特徴をもっている. まず脊柱管内の組織の静脈には弁が存在しないこと. また腰部の馬尾神経はちょうど頭側より血流が尾側に流れまた尾側より血行が上行するために血流分水嶺の位置にあたる. そこで立位や姿勢によって血行動態が影響を強く受けることが示唆される. そこに間欠性跛行の病態が潜んでいると考える.
症例報告
  • 病理所見に関する考察と文献review
    高沢 弘樹, 川口 奉洋, 成澤 あゆみ, 森田 隆弘, 黒滝 日出一, 佐々木 達也, 西嶌 美知春
    2013 年 22 巻 5 号 p. 394-399
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/05/25
    ジャーナル フリー
     浅側頭動脈-中大脳動脈吻合部に出現, 増大した脳動脈瘤の手術を経験したので報告する. 症例は58歳, 男性. 8年前に右浅側頭動脈-中大脳動脈吻合術を施行され, 以後毎年MRI, MRAのfollowをされていた. 8年後のMRAにてpatencyは保たれているものの吻合部の動脈瘤が疑われた. 過去のMRAを見直してみると, 動脈瘤は以前から存在し, 徐々に増大していることが判明した. DSAでは吻合部に最大径8mmの動脈瘤を認めた. 開頭clipping術を施行し, clipping後に動脈瘤壁を一部切除し, 病理学的に検討した. 結果は真性動脈瘤であった. 吻合部動脈瘤の病理所見に関する考察と文献reviewを加え報告する.
神経放射線診断
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