脳神経外科ジャーナル
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22 巻, 8 号
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特集 グリオーマ 新しい時代の到来
  • 園田 順彦, 冨永 悌二
    2013 年 22 巻 8 号 p. 582-589
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/08/25
    ジャーナル フリー
     The Cancer Genome Atlas (TCGA) はヒト癌の発生に関わる遺伝子異常を網羅的に解明するためのプロジェクトであるが, そのpilot studyの最初の対象疾患は膠芽腫 (GBM) である.
     本稿ではそれらのうち代表的な4つの成果, (1)膠芽腫において高頻度に認められる3つの経路の異常, (2)IDH1遺伝子, (3)分子プロファイルに基づいたGBMの分類, (4)glioma CpG island methylator phenotype (G-CIMP) についてその内容を紹介する. GBMはヘテロな疾患群であることが改めて証明され, 近い将来, 分子標的療法を施行するうえで重要な指標になると考えられる.
  • 神経膠芽腫に対する分子標的薬を中心に
    Shota Tanaka, Andrew S. Chi, Patrick Y. Wen, David N. Louis, A. John I ...
    2013 年 22 巻 8 号 p. 590-596
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/08/25
    ジャーナル フリー
     従来の放射線化学療法をもってしても予後不良である神経膠芽腫に対する新たな治療として, 分子標的薬が注目されている. 腫瘍発生・進展の分子生物学的メカニズムが明らかになるにつれ, さまざまな薬剤が開発され臨床治験が行われてきた. しかし腫瘍細胞内シグナル伝達異常の多様性などのため, 高い奏効率を示し認可に至った分子標的薬はいまだない. 神経膠芽腫という組織学的診断のみでなく, ターゲットシークエンスなどによる分子病理学的診断が実臨床に導入されつつあり, 個々の腫瘍の遺伝子異常に即した分子標的薬の選択, すなわちテーラーメイドな癌治療が有望視されている. 本稿では, アメリカにおける神経膠芽腫の治療戦略の現状を概説する.
  • 丸山 隆志, 村垣 善浩, 新田 雅之, 齋藤 太一, 田村 学, 伊関 洋, 岡田 芳和
    2013 年 22 巻 8 号 p. 597-604
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/08/25
    ジャーナル フリー
     覚醒下手術はグリオーマ手術の中でもeloquent領域近傍腫瘍の手術適応を広げる重要なテクニックである. 機能野の中でも特に言語野においてはマッピングにより皮質や皮質下の重要な脳機能の判別を可能とすることで, 摘出率の向上に貢献する. 摘出率が向上することにより, 脳腫瘍の治療成績の改善とともに術後合併症の軽減につながる. 本稿では覚醒下手術の現状と直面するであろう問題点として以下の項目を選定した. 1) 運動野近傍病変への適応, 2) Wada testは必要か, 3) functional mapping/monitoringにおけるタスクの選択, 4) negative mapping technique, 5) 偽陽性の種類と鑑別, 6) 摘出戦略, これらにつきわれわれの経験も含めて解説を行う.
  • 宮武 伸一
    2013 年 22 巻 8 号 p. 605-612
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/08/25
    ジャーナル フリー
     悪性腫瘍に対する新規放射線 (粒子線) 治療法として, ホウ素中性子捕捉療法 (boron neutron capture therapy : BNCT) が提唱されている. われわれは2002年より本治療法をのべ133例に及ぶ悪性神経膠腫と悪性髄膜腫に適応してきた. また最近, 症候性脳放射線壊死に対する抗血管新生療法を積極的に展開している. 本論文では, 第32回日本脳神経外科コングレス総会「グリオーマ 新しい時代の到来」において発表した上記内容に若干の加筆を行い, ここに発表した.
  • 伊藤 元一, 藤堂 具紀
    2013 年 22 巻 8 号 p. 613-618
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/08/25
    ジャーナル フリー
     腫瘍細胞のみで増殖し, 腫瘍細胞のみを死滅させる単純ヘルペスウイルスI型 (herpes simplex virus type 1 : HSV-1) を用いたウイルス療法は, 次世代のがん治療法として期待される. 第二世代がん治療用ウイルス (G207) は, 米国で悪性グリオーマを対象に第I相臨床試験が行われ, 脳腫瘍内投与の安全性が確認された. G207の安全性を維持しつつ, 腫瘍細胞におけるウイルス複製能を高め, 抗腫瘍免疫が増強するように開発された第三世代がん治療用ウイルス (G47Δ) は, 既存の治療では根治が得られない悪性グリオーマにとって有望な治療法として期待され, 本邦での開発が進んでいる.
  • 橋本 直哉, 千葉 泰良, 木下 学, 香川 尚己, 坪井 昭博, 岡 芳弘, 尾路 祐介, 杉山 治夫, 吉峰 俊樹
    2013 年 22 巻 8 号 p. 619-624
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/08/25
    ジャーナル フリー
     本稿では癌に対する免疫療法のうち, 最近注目されているペプチドワクチン療法についてその原理や開発経緯を解説するとともに, グリオーマに対して安全性と有効性が確認されつつあるWT1遺伝子産物を標的としたペプチドワクチン療法の臨床成績と研究発展状況について述べた. 再発膠芽腫を対象としたWT1ペプチドワクチン療法臨床第II相試験では, disease control rate : 57.1%, 無増大生存期間中央値 : 20.0週, 生存期間中央値は36.7週の結果が得られ, これまでの治療法と比しても本療法は有効であると考えられた. 臨床試験から得られた課題や今後の方向性を, 文献を渉猟しながら, 概説した.
原著
  • 對馬 州一, 古明地 孝宏, 丹羽 潤
    2013 年 22 巻 8 号 p. 625-630
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/08/25
    ジャーナル フリー
     82例の慢性硬膜下血腫に対し, 術中血腫腔を洗浄するirrigation drainage (ID) 法 (n=46) と洗浄しないsimple drainage (SD) 法 (n=36) の2種類の治療を行った. 2つの治療群において術後抗血栓療法再開の有無に着目して再発率を比較した. ID法の再発率は25.9%, SD法は12.8%で, SD法で再発率は低い傾向を示したが統計学的有意差はなかった. ID法では術後2週間以内に抗凝固薬を再開した場合, 再開しない場合に比較し統計学的に有意に再発が多かった. SD法では抗凝固療法の早期再開による再発率の増加はみられなかった. SD法はID法より術後抗血栓療法の影響が少ない可能性が考えられた. 抗血栓療法中の慢性硬膜下血腫では, 服薬中断のリスクと服薬継続によるリスクをともに避ける方法としてSD法が有用な可能性がある.
症例報告
  • 外科的治療方法と時期, 待機中の内科的治療
    藤森 健司, 中戸川 裕一, 鈴木 智, 釼持 博昭, 藤本 礼尚, 稲永 親憲, 山本 貴道, 嘉鳥 信忠, 杉浦 康仁, 平松 久弥, ...
    2013 年 22 巻 8 号 p. 632-636
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/08/25
    ジャーナル フリー
     6カ月女児. 胎児期に眼球とともに右眼窩外に脱出する血管腫を指摘され帝王切開で分娩. 生下時体重は2,400g. 画像的には右海綿静脈洞から連続する3×3.4×5.1cmの血管腫が眼窩外に突出. 日齢7より腫瘍の増大抑制の目的でpropranololを投与. 4カ月で体重が2.7倍時の腫瘍体積は2.1倍であった. 発達に伴う運動で出血の危険が高くなり6カ月, 体重7,430g時に外科的根治術. 腫瘍塞栓後に右前頭側頭開頭, 硬膜外から眼窩先端部で海綿静脈洞との間で腫瘍を結紮切断し眼窩内容全摘術を行い, 血管柄付き広背筋皮弁を浅側頭動静脈と吻合し義眼床とした. Propranololは先天性血管腫の増大抑制に一定の効果があり, 動静脈吻合を要す眼窩再建術に6カ月の待機期間は十分と考えられた.
神経放射線診断
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