脳神経外科ジャーナル
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23 巻, 11 号
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特集 脳神経外科医療における可視化
  • 藤井 正純, 前澤 聡, 林 雄一郎, 森 健策, 津坂 昌利, 若林 俊彦
    2014 年 23 巻 11 号 p. 854-861
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/11/25
    ジャーナル フリー
     術中MRIは, ブレインシフトを克服した正確なナビゲーションの実現, 脳腫瘍の摘出コントロール, 術中の合併症の早期発見に役立つ. その役割は, 術中の脳構造の可視化であり, 脳神経外科手術のquality assuranceといえる. 錐体路の可視化には, トラクトグラフィーが有用である. われわれは変形フュージョンと呼ばれる技術を開発し, 術前画像を術中画像へ適切に変形して重畳した. 術中の錐体路の内外側への偏移の推定が可能であった. 術中の出血性合併症について擬似血液を用いて血液の濃度と信号値の関係について評価した. Fast FLAIR法における信号値は良好な直線関係を認めた. 今後の普及が期待される.
  • 鎌田 恭輔, 小川 博司, 田村 有希恵, 広島 覚, 斉藤 仁十, 安栄 良悟
    2014 年 23 巻 11 号 p. 862-870
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/11/25
    ジャーナル フリー
     脳皮質電位 (ECoG) 計測による脳機能マッピング法が近年注目を集めている. そのなかでも高周波脳律動 (high frequency oscillation : HFO) は脳機能局在に有用であると期待を集めている. 本稿ではECoGをベッドサイド, 手術室における覚醒下手術の際の脳機能マッピングとして応用した. さらに計測結果をリアルタイムに表示することで, 新たな術中モニタリング法としての可能性を提示した. リアルタイムHFOマッピングの結果は脳皮質電気刺激の結果と比較して, きわめて信頼性が高く, 検査時間が短いために, 今後脳神経外科領域での新たなマッピング手法として確立することが期待される.
  • 上羽 哲也
    2014 年 23 巻 11 号 p. 871-875
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/11/25
    ジャーナル フリー
     脳神経外科分野でのインドシアニングリーンを用いた術中撮影は, 脳動脈瘤クリッピング後の血流の評価のために用いられることが多い. インドシアニングリーンを用いた術中撮影法は, 手術用顕微鏡に組み込まれて以来, 時間がかからず安価で安全性が高く, 脳卒中外科において進歩してきた. しかしながら, 脳腫瘍外科におけるインドシアニングリーンを用いた術中撮影を評価した論文は少ない. 本稿では, インドシアニングリーンを用いた術中撮影の脳腫瘍外科への応用と有用性について文献をもとに述べる. 血管芽腫, グリオーマ, 髄膜腫に対しての使用例を紹介する. 脳腫瘍外科においても, 術野の血流をリアルタイムに確認することが可能となり, より安全に手術が行えるとされている.
  • 村垣 善浩, 伊関 洋, 丸山 隆志, 新田 雅之, 齋藤 太一, 田村 学, 岡田 芳和
    2014 年 23 巻 11 号 p. 876-886
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/11/25
    ジャーナル フリー
     外科医は手術中不断の意思決定を行っている. 従来, 術中情報は術野に限定され, 術者の五感が重要な意思決定要素となるため, 経験差によるゆらぎは大きい. 有効な改善策として客観的な可視データを術中に取得し判断材料とする方法があり, 術中画像や術中神経モニタリングそして術中迅速診断は代表例である. 可視化した異種データを意思決定プロセスに用い情報として活用する情報誘導手術は, 次世代低侵襲治療の基盤である.
     一方で定性データの解析, 定量データの閾値設定等, 各データの処理と解釈も一筋縄でない. たとえば神経膠腫の手術における覚醒下での神経機能マッピングやモニタリングの結果解釈や5アミノレブリン酸 (5ALA) による発光の偽陽性偽陰性, 手術ナビゲーションのブレインシフトによる誤差やtractographyの過小評価問題, 運動誘発電位の低下閾値等, 関連学会や論文でmain topicとなる検討項目である.
     さらに, 術中より多種類の可視化データが情報統合されて提供されれば, より正確な意思決定に貢献するが, 情報ごとで正反対の意思決定を示唆することも少なくない. 術中画像で残存異常領域がある (摘出示唆) が, 皮質下マッピングでは反応がある (機能温存示唆) 場合が典型的であるが, 施設や患者の方針, 情報ごとのpriority, そして他種類データ等がより高次の意思決定に有用である.
     神経膠腫の積極的摘出術は生命予後との関連を指摘する論文が増加している. 術中MRIとナビゲーションによる解剖学的情報, 機能マッピングやモニタリングによる機能的情報, 5ALAやflowcytometryによる組織学的情報等multimodalityな術中情報時代における, 意思決定のプロセスとその実際を紹介する.
温故創新
原著
  • 新谷 好正, 伊東 雅基, 井戸坂 弘之, 中林 賢一, 卯月 みつる, 新谷 知久, 早瀬 知, 馬渕 正二
    2014 年 23 巻 11 号 p. 889-896
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/11/25
    ジャーナル フリー
     脳動脈瘤の開頭手術において, クリッピングのために瘤の減圧を要する場面に時折遭遇するが, 母血管の一時遮断が困難な例がみられる. そのような例に房室伝導を強力に抑制する作用をもつadenosine triphosphate (ATP) の急速静注による短時間の循環停止 (transient cardiac arrest : TCA) 法が有効である. 経験した全例において短時間の心停止に伴う動脈瘤の著明な減圧が得られ, 安全なクリッピングに大きく寄与した. 合併症はみられなかった. TCA法に習熟した麻酔科医との緊密な連携が不可欠であるが, 本法は母血管の一時遮断に並んで考慮すべききわめて有用な方法である.
  • 北原 孝宏, 花北 順哉, 高橋 敏行, 渡邊 水樹, 河岡 大悟, 宮田 武
    2014 年 23 巻 11 号 p. 897-907
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/11/25
    ジャーナル フリー
     胸椎変性疾患の手術成績は頚椎や腰椎の変性疾患と比べると一般に不良であり, 特に胸髄腹側に位置する椎間板ヘルニア (DH) と後縦靱帯骨化症 (OPLL) では重篤な合併症が生じやすいとされている. しかし胸椎変性疾患は治療対象となることが少なく, その治療に関する大規模な報告もいまだ少ない. 今回われわれは, 当施設において手術治療を行った連続99例に関して後方視的検討を行った. 黄色靱帯骨化症 (OLF) に対しては椎弓切除を用いた骨化巣摘出, DHに対しては主に後側方到達法を用いた椎間板摘出, OPLLに対しては高位に応じた前方 (前側方) 到達法を用いた骨化巣摘出を行うことにより, いずれも良好な成績が得られた.
症例報告
  • 伊藤 英道, 水庭 宜隆, 小菅 康史, 佐瀬 泰玄, 内田 将司, 小野寺 英孝, 高砂 浩史, 平本 準, 大塩 恒太郎, 田中 雄一郎
    2014 年 23 巻 11 号 p. 909-915
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/11/25
    ジャーナル フリー
     一般的に血管攣縮は脳動脈瘤破裂によるくも膜下出血に高い頻度で認められる. 一方, 脳動静脈奇形によるくも膜下出血の程度は軽いため, 血管攣縮はまれとされている. われわれは高度の血管攣縮をきたした小児脳動静脈奇形の1例を経験したので報告する.
     症例は8歳の女児で, 小脳の脳動静脈奇形破裂による脳室内出血, くも膜下出血にて来院した. 開頭術を第5病日に行ったが, 第12病日に高度の血管攣縮を発症して脳梗塞に至った. 本例では動脈瘤破裂後のくも膜下出血による血管攣縮の臨床経過とは異なる点が多く, 両側脳室と第4脳室に残存した血腫が血管攣縮に強く影響した可能性がある. 脳室内血腫を伴う脳動静脈奇形破裂後に生じた血管攣縮の特徴的な臨床経過を考察する.
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