脳神経外科ジャーナル
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23 巻, 4 号
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特集 大脳の機能局在とネットワーク
  • 鎌田 恭輔, 広島 覚, 小川 博司, 國井 尚人, 川合 謙介, 安栄 良悟, 斉藤 延人
    2014 年 23 巻 4 号 p. 296-305
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/04/25
    ジャーナル フリー
     本稿では脳腫瘍摘出手術に役立つ術前機能マッピングと術中機能モニタリングの具体的方法と臨床現場における評価, 信頼性について述べた. 現在術前機能マッピングによる運動野/中心溝局在, および優位半球の同定は現場で十分応用できる. しかし, 言語関連機能MRIの活動部の脳皮質電気刺激による検証では感度は80%, 特異度は60%程度でさらなる改良が必要である. 一方, tractographyは機能している皮質脊髄路と弓状束を正確に反映しているため, 手術計画に有用である. 術中脳機能モニタリング方法としては, 感覚誘発電位, 運動野, 皮質脊髄路電気刺激による運動誘発電位, および覚醒下手術がある. 感覚誘発電位, 皮質刺激運動誘発電位により確実な運動野/中心溝局在の同定が行える. また, 白質刺激運動誘発電位では刺激強度と切除腔と皮質脊髄路tractography間距離に強い相関関係があり, 刺激強度から皮質下構造までの距離を推測することもできる. 覚醒下手術では図形名称課題を用いることで, 効率的に言語皮質, 弓状束を同定・温存できる. 蛍光画像マッピングは悪性腫瘍浸潤領域の同定に有用であるが, さらなる定量的な検討方法の確立が必要である.
  • 三國 信啓
    2014 年 23 巻 4 号 p. 306-310
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/04/25
    ジャーナル フリー
     術前・術中脳機能評価は, 機能的脳神経外科領域において重要な役割を担ってきた. これらの技術はてんかんにおける研究を通じて発展し, 現在では脳腫瘍, 血管障害を含めた脳神経外科手術全般において重要な位置を占めるようになっている. “マッピング” された脳機能を “モニタリング” しながら手術を安全かつ効果的に行う. 病態下での脳神経外科術中モニタリングを脳のさまざまな生理学的側面から捉え, 機能代償・回復という視点で研究することができる. 本稿では最も一般的な運動機能モニタリングについて, 電気刺激による誘発電位と随意運動の差異について自験例を含めて解説した. 今後さまざまな脳機能検査がさらに簡便に使用できるようになり, 生理学的考察により術中の手術方針決定が可能となる. 脳機能局在診断から, よりダイナミックな脳機能研究を行うことにより, 新たな術中脳機能評価や神経科学の展開が期待される.
  • 三村 將
    2014 年 23 巻 4 号 p. 311-317
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/04/25
    ジャーナル フリー
     統合失調症とうつ病に関する機能局在について概説した. 統合失調症においては, 前頭葉や側頭葉を中心に, さまざまな脳領域の形態的・機能的異常が指摘されている. これらの一部は幻聴や妄想といった陽性症状と関連する以外に, 社会性を担うとされる「社会脳」と呼ばれる神経ネットワークの異常を生じることが近年明らかになっている. うつ病の病態生理と関連する神経ネットワークの異常についても, 近年のSPECT・PET・NIRS・fMRI等を用いた機能画像研究では主にhypofrontalityが示唆されている. うつ病の薬物療法, 認知行動療法, 脳深部刺激 (DBS) などに関する縦断的画像研究は, 症状の回復や神経ネットワークの修復に関わるメカニズムの理解に大きく貢献している.
  • 定藤 規弘
    2014 年 23 巻 4 号 p. 318-324
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/04/25
    ジャーナル フリー
     従来, 子どもの発達過程を観察することによって得られてきた社会的行動特性の神経基盤が, 機能的磁気共鳴画像 (機能的MRI) を用いた研究の展開によって明らかになりつつある. 自他同一性から自他区別, 共感と心の理論の発達を経て向社会行動 (利他行為) へ至る, というモデルに基づき社会能力の発達過程を解明する試みについて紹介する. 特に人間の利他的行為において社会的承認 (褒め) が重要であること, そしてそれが基本的報酬や金銭報酬と同様の神経基盤を持つことが明らかとなった. ミクロからマクロレベルに至るまで各階層で進行している神経科学の成果を人文諸科学と結びつける結節点としてのイメージング研究の重要性を論ずる.
原著
  • 足立 秀光, 坂井 信幸, 今村 博敏, 上野 泰, 國枝 武治, 坂井 千秋, 小柳 正臣, 蔵本 要二, 梶川 隆一郎, 重松 朋芳, ...
    2014 年 23 巻 4 号 p. 325-330
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/04/25
    ジャーナル フリー
     フラットパネルを搭載した血管撮影装置で収集可能なCT画像とX線透視情報を統合し, 正確な位置情報を視認しながらX線透視下に血管撮影室で手術を行うXperGuide手術を, 脳動脈瘤に合併した急性水頭症8例に行った. 全例に合併症なく脳室ドレナージ術を行い, 1回の穿刺で, 目的部位に正確にドレナージを留置することができた.
     今回の結果から, XperGuide脳神経外科手術は, 脳出血や脳膿瘍, 脳腫瘍などにも応用可能な画像支援手術として期待できる可能性が示唆された.
  • —長期腫瘍コントロールと機能評価—
    木田 義久, 長谷川 俊典, 加藤 丈典
    2014 年 23 巻 4 号 p. 331-340
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/04/25
    ジャーナル フリー
     下位脳神経鞘腫のガンマナイフ治療の長期成績を報告した. 症例は男性11, 女性22例の計33例であり, 平均年齢は47.3歳であった. 多くの症例は下位の脳神経の神経症状として, 嚥下障害, 嗄声, 舌の萎縮などを示した. 前治療として17例には手術的摘出が施行されていたが, 16例については神経症状と画像所見により診断した. ガンマナイフ時の腫瘍サイズは平均して25mmであり, 平均の辺縁線量13.3Gyで治療されている. 治療後, 腫瘍は良好な反応を示し, 83カ月の平均経過観察期間においてCR 1, PR 23, NC 9となった. 2例において経過観察中, 嚢腫の増大が認められたが, 嚢腫の処理によって再度安定しNCとなった. その他, どの症例にも明らかな副作用は認められていない. 機能的には嚥下障害, 嗄声の症状は多数例において改善したが, 舌の萎縮, 聴力障害, 失調などは不変であった. 治療全体を総合的に判断できるよう神経鞘腫のスコアリングを提示した. 腫瘍コントロールに4点, 機能コントロールに4点, 副作用回避に2点, 合計10点満点でみると, ガンマナイフ治療において, 下位脳神経鞘腫は他の神経鞘腫に比べ点数が最も高く, 質の高い治療が達成されたと判断した. 大きな腫瘍, 頭蓋内, 錐体部, 頚部に進展するdumbbell-typeの腫瘍では外科的摘出が必要であるが, 頚静脈孔内, あるいはその近傍の腫瘍, あるいは残存, 再発腫瘍に対してはガンマナイフ治療がきわめて有効である.
  • 金城 雄太, 後藤 剛夫, 寺川 雄三, 川上 太一郎, 森迫 拓貴, 露口 尚弘, 山中 一浩, 大畑 建治
    2014 年 23 巻 4 号 p. 341-346
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/04/25
    ジャーナル フリー
     脳幹部海綿状血管腫は頭蓋内海綿状血管腫の9∼35%を占め, 特に脳幹部では橋に好発する. また出血率, 再出血率ともに他部位に比して高く, 症候性のものは摘出術が考慮される. 摘出に関してはさまざまな到達法が報告されているが, 経錐体到達法を用いた橋海綿状血管腫の手術に関する報告は多くない. われわれは, 術後の神経症状の悪化や新たな症状発現を防ぐためには正常脳組織への侵襲を最小限にする到達法を選択することが重要であると考えており, その点で, 小さな皮質切開でかつ多方向性に病変を直視下に観察することを可能にする経錐体到達法は, 橋海綿状血管腫の手術において有用な到達法になる可能性があると思われる.
症例報告
  • 尾形 衣美, 小倉 光博, 西林 宏起, 佐々木 貴浩, 垣下 浩二, 中尾 直之
    2014 年 23 巻 4 号 p. 348-353
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/04/25
    ジャーナル フリー
     49歳女性. 25歳より躁うつ病と不眠症のため抗うつ剤や睡眠薬を多量に服用していた. 7年前より頚, 体幹にtardive dystoniaが出現し徐々に増悪した. 内科的治療はいずれも無効であった. ジストニアによりADLが強く障害されていたので, 全身麻酔下にて, 両側のGPi-DBSを行った. 頚部, 体幹のジストニア運動は術後早期から著明に軽減し, その後7カ月の経過で徐々にジストニア姿勢も改善した. 術後, 躁うつ病などの精神症状は悪化せず, ジストニアの改善により睡眠薬は減量された. Tardive dystoniaに対しては一次性ジストニア同様, GPi-DBSが有効であり, 基礎疾患による精神症状に配慮しながら積極的に手術適応を考慮すべきである. また術中の電気生理学的同定が電極留置部位の決定に有用であった.
神経放射線診断
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