脳神経外科ジャーナル
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23 巻, 5 号
選択された号の論文の8件中1~8を表示しています
特集 小児脳神経外科領域におけるトピックス
  • 長坂 昌登, 大澤 弘勝, 加藤 美穂子
    2014 年 23 巻 5 号 p. 392-400
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/05/25
    ジャーナル フリー
     無症候性脊髄脂肪腫に対する予防的早期手術の是非について結論はついていない. その解決には, 自然歴とのランダム化比較試験が必要とされるが, 2群間のmatchingや研究の倫理性に問題がある.
     脊髄脂肪腫158例 (男女) の臨床像を分析し, 術後7年間以上の経過観察ができた無症候性脊髄脂肪腫51例の長期治療成績を調査した.
     無症候性86例, 症候性72例. Lipomyelomeningocele (LMMC) とtransitional typeの60%は症候性であった. 手術の67%は1歳未満で行われた. 初回手術時年齢の中央値は0.45歳で, 無症候性は0.4歳, 症候性は0.7歳であった. 無症候性脊髄脂肪腫51例の長期観察 (7.6~25.4年 : 中央値10.8年) で10例 (19.6%) に神経障害が出現し, 5例 (9.8%) に再係留解除術が行われた.
     LMMC, sacral lipoma, そしてlarge lipomaの多くが1歳未満で症候性になり, 脊髄ヘルニア, urological studyによる早期診断, 圧迫がその原因として考えられた.
     LMMC, sacral lipoma, large lipomaは1歳までに, dorsal type, filar typeには3歳までの手術が望ましいと考えられた.
  • 西本 博, 栗原 淳
    2014 年 23 巻 5 号 p. 401-408
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/05/25
    ジャーナル フリー
     近年頭蓋骨縫合早期癒合症の標準的手術方法に頭蓋骨骨延長術が加わり, その治療成績が向上してきている. 今回は現在の頭蓋骨縫合早期癒合症に対する基本的手術方法とその適応について, 特に骨延長術を中心に解説するとともに, 自験例における長期治療成績について検討した. その検討結果では, 頭蓋骨骨延長術の導入により, 特に症候群性頭蓋骨縫合早期癒合症に対するfrontoorbital advancementの治療成績の改善が認められた. さらに今後の頭蓋骨縫合早期癒合症に対する治療上の検討課題についても言及した.
  • 長嶋 達也, 河村 淳史, 山元 一樹, 長嶋 宏明
    2014 年 23 巻 5 号 p. 409-417
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/05/25
    ジャーナル フリー
     小児脳腫瘍は白血病に次いで第2位の小児がんであり, 小児期の悪性新生物による死亡の主たる原因となっている. 治療の原則は, 正しい診断, 疾患の病期診断と予後予測, 集学的治療, 晩期障害の予防である. 手術, 化学療法, 放射線治療からなる集学的治療を超えて, 専門施設, 晩期障害への対処, 緩和医療, 家族サポート, キャリーオーバーへの取り組みなど包括的な医療システムを必要とするため, 小児がん拠点病院の整備が政策として進められつつある. 一方, “medulloblastomics” という言葉によって表されるように, 分子的なサブグループ分類, 新たなリスク層別化が急速に展開しつつあり, 脳神経外科, 小児腫瘍科, 放射線科, 病理, 基礎研究者からなる全国的な臨床研究として進める体制整備が急務である.
手術手技・周術期管理
症例報告
  • 河岡 大悟, 花北 順哉, 高橋 敏行, 渡邊 水樹, 安部倉 友, 寺田 行範
    2014 年 23 巻 5 号 p. 423-427
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/05/25
    ジャーナル フリー
     64歳男性. 尿閉単独で発症し泌尿器科へ入院後, 急速に四肢麻痺となった. 画像検査で小脳テント近傍に短絡部を有し脊髄表面へ下降する硬膜動静脈瘻を認め, 直達手術を行った. 頭蓋内硬膜動静脈瘻が尿閉を含む脊髄症で発症する報告は散見されるが, 尿閉のみを初発症状とし, 他の脊髄症状が出現するまでに時間的ずれを生じた報告はない. 排尿に関する連絡路は主に脊髄の側・後索にあり, 特に求心路は後索にあるとされている. それらの報告と解剖学的見地から, われわれは静脈還流障害がまず側角に起こり, 次にその近傍の側索に障害が及び尿閉症状を発症し, 順次周辺組織へ影響を及ぼし四肢麻痺を呈したのではないかと推測するに至った.
  • 南波 孝昌, 菅原 淳, 山下 武志, 小林 正和, 吉田 研二, 村上 寿孝, 小川 彰, 小笠原 邦昭
    2014 年 23 巻 5 号 p. 429-433
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/05/25
    ジャーナル フリー
     症例は52歳男性, C4/5の前方固定術半年後に頭部左回旋時に意識が遠くなるような症状が出現した. 頭部左回旋時の血管撮影で右椎骨動脈 (VA) のC1/2レベルの生理的狭窄かつ左VAのC3レベルでの高度狭窄を認めbow hunter's syndrome (BHS) と診断した. 頚椎CTでC4外側上縁に骨棘を認めたため, この摘出術を施行し, 症状は消失した.
  • 高井 洋樹, 松村 浩平, 平井 聡, 西山 徹, 松下 展久, 横須賀 公彦, 戸井 宏行, 桑山 一行, 松原 俊二, 平野 一宏, 西 ...
    2014 年 23 巻 5 号 p. 435-439
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/05/25
    ジャーナル フリー
     われわれは, 広範囲の骨変形を伴う髄膜腫の1手術症例を経験したので報告する. 症例は72歳の男性. 進行する右上肢麻痺, 運動性失語, 認知症状を主訴に当科を受診した. 左前頭部から頭頂部にかけて頭部変形を認め, 骨3DCTでは上矢状静脈洞を越える広範囲の骨変形を認めた. 頭部MRIでは変形した頭蓋骨直下の前頭葉に約6cm大の腫瘤性病変を認めた. 手術にて腫瘍摘出と頭蓋形成を行った. 病理診断は髄膜腫 (menigothelial meningioma) であった. 本腫瘍は髄膜腫としては特異的な発育をきたしたものであり, 文献的考察を加え報告する.
  • 平井 希, 齋藤 紀彦, 林 盛人, 横佐古 卓, 岩間 淳哉, 佐藤 健一郎, 青木 和哉, 飯塚 有応, 藤井 芳樹, 岩渕 聡
    2014 年 23 巻 5 号 p. 441-445
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/05/25
    ジャーナル フリー
     77歳女性, 右眼窩部痛を伴った複視を主訴に来院. 動眼神経麻痺が認められ, Tolosa-Hunt症候群の診断にてステロイド治療により症状は改善した. しかし初診時から1年後, 右外転神経麻痺, 両側眼球充血が出現. 脳血管撮影にて海綿静脈洞部硬膜動静脈瘻が認められ, 経静脈的塞栓術を行った. 硬膜動静脈瘻の成因に炎症や外傷などの二次的要因も指摘されている. 本症例では海綿静脈洞部硬膜動静脈瘻の発症にTolosa-Hunt症候群による炎症が関与した可能性が示唆された. Tolosa-Hunt症候群は正確な診断と治療が重要であると同時に, 治療後も十分な経過観察が必要と考えられた.
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