近年の網羅的な大規模ゲノム解析により,
IDH1/
2, CIC, ATRXなど, 神経膠腫の発生において鍵となる遺伝子変異が次々と発見された. これらに加えて, 最近新たに発見された
TERTプロモーター領域の変異も神経膠腫の発達に重要な役割を果たすことが明らかになった.
TERTはテロメラーゼを構成する逆転写酵素で, 変異はプロモーター領域の2カ所のホットスポットのいずれかに起こり,
TERTの発現を亢進させる. 神経膠腫の亜型はこれらの変異の蓄積により発生すると考えられる. すなわち, 星細胞腫と乏突起膠腫はともに
IDHの変異を獲得することにより発生し, さらに
TP53と
ATRXの変異が順に起こることにより星細胞腫に発達するのに対し, 乏突起膠腫では
IDH変異に次いで1p19qの欠失と
TERTプロモーターの変異, 次いで
CICの変異が起こると考えられる. 原発性膠芽腫では
IDH変異や1p19q欠失はみられず, RB1, p53, MAPK, PI3K各経路の異常のほか,
TERTプロモーター変異が重要な役割を果たすと考えられる. 最近では
IDH変異と1p19q欠失の有無に基づく神経膠腫の分子分類が提唱されているが, これらに
TERTプロモーター変異を加えることによってより正確な成人神経膠腫の分子診断の基準が形成されていくことが期待される.
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