脳神経外科ジャーナル
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24 巻, 1 号
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特集 脳神経外科手術における構造・機能解剖の可視化―1
  • 小宮山 雅樹
    2015 年 24 巻 1 号 p. 4-11
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/01/25
    ジャーナル フリー
     中枢神経組織は, 前後軸に沿って, 分節性に神経分節 (neuromere) から形成されている. 脊髄は, 中胚葉性の体節 (somite) を中心に種に特有な数の脊髄分節からなるが, 菱脳は種に関係なく7~8個の菱脳分節 (rhombomere) からなる. 古典的な大脳の細胞構築 (cytoarchitecture) は, 個々の神経分節特有の遺伝子発現により規定される組織発生単位 (histogenetic unit) を基本に構築されていることが明らかになり, 血管構築もそれを基本に構築されていることが明らかになってきた.
     脊髄・脳幹・大脳レベルにおける動脈灌流のパターンは, 脊髄・脳幹では横断面において, 大脳では冠状断面において, 中心性の穿通動脈は, 腹側正中から一側性に末梢に向かうcentrifugal patternをとり, 末梢性の穿通動脈は, 背側・表面から中心に向かうcentripetal patternをとっている. このcentrifugal/centripetal patternsは個々のhistogenetic unitsの中で基本的血管構築と考えられる.
  • 片岡 大治, 飯原 弘二
    2015 年 24 巻 1 号 p. 12-18
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/01/25
    ジャーナル フリー
     穿通枝障害は重篤な神経症状を生じることが多いため, その外科解剖を理解することは脳神経外科顕微鏡手術においてきわめて重要である. 特に, 脳動脈瘤クリッピング術の際は, 穿通枝の解剖学的バリエーションと脳動脈瘤との関係について理解しておく必要がある. 前脈絡叢動脈は, 動脈瘤のドームから起始することもあり, また2~4本存在することがあるため, そのような場合には注意が必要である. レンズ核線条体動脈は通常中大脳動脈水平部 (M1部) の後壁から分岐するが, 時としてM1-2分岐部やM2から起始する. 視床下部動脈は前交通動脈の後面から起始するため, pterional approachでは確認することが困難である. 穿通枝の温存のためには, 動脈瘤周囲の穿通枝をすべて確認することが必要で, 神経内視鏡は顕微鏡の死角となる部分の観察に有用である. 穿通枝の血流を温存するようにクリップをかけ, クリッピング後はドップラー超音波流量計, ICG蛍光血管造影, 運動誘発電位などの神経生理学的モニタリングなどの術中モニタリングで穿通枝の温存を確認する. それぞれのモニタリングには偽陰性が生じ得るため, 複数のモニタリングを組み合わせて使用することが重要である.
  • 柿澤 幸成, 本郷 一博
    2015 年 24 巻 1 号 p. 19-25
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/01/25
    ジャーナル フリー
     17世紀初期よりfiber dissectionが行われてきた. 神経線維の走行を実際に目で確認できるという利点がある反面, MRIの拡散強調画像の進歩やその他の手法により, またfiber dissection自体の欠点である時間と労力がかかることや立体的構造把握が困難なことから, 行われることが減ってきている.
     今回われわれは, 欠点の一つである立体構造把握困難に焦点を当て, 三次元モデル化した. いまだにこの手法は脳の構造を理解するために, 特にわれわれ外科医にとって重要なものである.
原著
  • 野田 昌幸, 長島 梧郎, 小林 敦, 加藤 晶人, 森嶋 啓之
    2015 年 24 巻 1 号 p. 26-31
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/01/25
    ジャーナル フリー
     脳神経外科での合併症および合併症に伴う死亡例について検討した. 対象は376床の急性期病床で, 2013年の手術件数215件, 入院症例数413件, 死亡例22例 (5.3%) であった. 死亡例と入院症例全体の平均年齢の差は年々拡大していく傾向があった. 死因は合併症が半数を占め, 感染性合併症による死は18.2%であった. D-dimerによるdeep venous thrombosis (DVT) スクリーニングでは全入院症例の3.1%にDVTを認め, くも膜下出血や脳出血では6%を越えていた. 術直後の皮膚培養で脳血管撮影例の20.2%に, 手術例の47.6%に細菌汚染が確認された. 脳神経外科治療をより安全に行うためには, 技術の習得だけでなく適切な周術期管理, 亜急性期管理を行うためのシステム構築, エビデンスの蓄積が必要である.
症例報告
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