脳海綿状血管奇形は従来, 良性の疾患と理解されているが, いったん出血あるいは痙攣発作にて発症すると, 同様の出血, 発作を反復することが知られている. しかしながら, これらの症候性病変の自然歴についてはいまだ明らかでなく, このため手術, 放射線外科治療等の治療成績との対比が困難である. 今回日本各地の大病院を中心にアンケート調査を実施して, 症候性病変の自然歴と手術成績を調査検討した.
症例は保存的治療の49例と, 手術が施行された29例の合計78例であり, 年齢, 性別と病変局在について差異を認めなかったが, 病変のサイズは手術群が有意に大きかった. Kaplan-Meier法でみたProgression-free-survival (PFS) は手術群が明らかに良好な結果を示した. 生下時から初回eventを含む年間出血率は両群に差異は認めなかったが, 初回event後の再出血は保存的治療群において明らかに多く年間出血率10.2%/year/caseであり, 2回目の出血後では19.7%/year/caseとなった. 一方手術群においては治療後の出血率は2.7%/year/caseとなったが, 部分摘出の場合は10.8%/year/caseとなり, 保存的治療群とは変わらなかった. 一方, 臨床的outcomeを最終経過観察時点で比較してみると, 両群にはほとんど差異を認めなかった. その主な理由は手術群における脳幹, 大脳基底核への手術侵襲が関与すると考えられた.
結論として海綿状血管奇形は初回, あるいは2回目のevent後に, 明瞭な活動性の亢進を示し, それぞれの年間出血率は約10%, 20%/year/caseを示した. この出血率の結果を手術群と比較すると, 再出血の予防のためには明らかに手術的摘出が有効である一方, 部分摘出では出血率において保存的治療と変わらないことが判明した. また手術による侵襲があるため, 経過観察の最終時点において臨床的なoutcomeについては両群にほとんど差異は認められなかった.
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