脳神経外科ジャーナル
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24 巻, 2 号
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特集 脳神経外科手術における構造・機能解剖の可視化―2
  • 丸山 隆志, 村垣 善浩, 新田 雅之, 斎藤 太一, 田村 学, 伊関 洋, 岡田 芳和
    2015 年 24 巻 2 号 p. 76-84
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/02/25
    ジャーナル フリー
     グリオーマ摘出において神経脱落症状を防ぎつつ可及的摘出を達成するためには, 大脳白質解剖を熟知する必要がある. 術前のMRIによるtractographyや拡散テンソル法を用いたcolor mapなどを用いて, 腫瘍の主座に接する白質線維や近接する脳回を同定することにより, 手術にて生じる可能性のある機能障害を予測し, 術中に適切なモニタリングやマッピング法を選択することが可能となる. またこれら解剖学的情報は摘出計画に有用であるとともに, 今後の腫瘍の伸展予測を可能とする. 術中迅速診断が可能な場合には, 予測される伸展方向の摘出腔壁からの組織採取により残存病変の有無を確認することで, より積極的な摘出が達成される. 術中これら連絡線維により生じる神経症状は, いわゆる古典的な失語症状とは異なり, さまざまなタスクを用いながら誘発される症状から判断する必要がある. 前方言語野, 後方言語野それぞれにおいて関連する連絡線維を選択し, 白質解剖とともにこれら線維への刺激や障害により術中に生じるであろう言語症状につき解説を行う.
  • 矢野 茂敏, 秀 拓一郎, 篠島 直樹, 倉津 純一
    2015 年 24 巻 2 号 p. 85-91
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/02/25
    ジャーナル フリー
     経鼻的頭蓋底手術はその適応が拡大していくにつれ, 手術の安全性と確実性を担保する術中の画像支援システムへの期待が高まっている. その中で注目されるのがindocyanine green (ICG) 蛍光内視鏡下観察である. 今回, 経鼻頭蓋底手術において, ICG蛍光内視鏡 (KARL STORZ社) による観察を行った30例の結果をまとめた. 内頚動脈や蝶形口蓋動脈などの頭蓋底構造の確認, 硬膜外からの海綿静脈洞の範囲の推定, 腫瘍と正常下垂体の区別が可能であった. 一方, ICG内視鏡の位置や出血の状況により描出感度が違うことも明らかとなり, 定量には一定の条件が必要と考えられた. 本方法は安全性が高く有用であり, 今後の治療成績向上へ寄与することが期待される.
  • 鰐渕 昌彦, 平野 透, 秋山 幸功, 三國 信啓
    2015 年 24 巻 2 号 p. 92-98
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/02/25
    ジャーナル フリー
     経鼻経蝶形骨洞手術では, 重要構造物を温存し, 合併症を回避するために, 鞍部・傍鞍部腫瘍と内頚動脈や視神経などの解剖学的関係を詳細に把握する必要がある. 当院ではこれらの腫瘍に対して, computed tomography (CT) とmagnetic resonance imaging (MRI) を使用し, 互いの画像をfusionしている. 画像は院内併設の画像処理部門である3Dラボで, 専門的知識を持った放射線部の診療放射線技師が作成し, volume rendering (VR) とvirtual endoscopy (VE) 画像を画像配信システム (PACS) へuploadしている. CT/MRI fusion画像により, 腫瘍と周囲の解剖構造物の関係が明瞭に同定され, VR, VE画像は手術計画の立案や仮想手術を行ううえで有用であった. また, fusion画像はどのPACSからでも閲覧可能なので, 患者への病状説明や医学教育という面でも有用であった.
  • —ハイビジョン内視鏡による可視化—
    天野 耕作, 川俣 貴一, 岡田 芳和
    2015 年 24 巻 2 号 p. 99-107
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/02/25
    ジャーナル フリー
     頭蓋内最深部に位置する前頭蓋底腫瘍摘出術の際には光学機器による腫瘍, 周囲構造物の可視化の如何が手術の成否を左右する. 経鼻的前頭蓋底手術 (TSS) は顕微鏡, 内視鏡の導入により飛躍的に進歩したが, 昨今内視鏡のハイビジョン化によってさらなる発展を遂げている. 従来型の6.75倍の画素数 (1,920×1,080=2,073,600 pixel) を誇るHD内視鏡では, その高い解像度を利して腫瘍および周囲構造物をより鮮明に識別できるようになった. その結果下垂体腺腫の術後下垂体機能温存率は向上し, 拡大経鼻手術における微小血管, 神経などの周囲構造物温存の確実性も増した. TSSはHD内視鏡導入によって拡大, 鮮明化した可視化領域に対応した摘出器具の開発により今後さらなる発展が期待できる.
原著
  • 木田 義久, 長谷川 俊典, 加藤 丈典, 佐藤 拓, 永井 秀政, 菱川 朋人, 浅野 研一郎, 鬼頭 晃
    2015 年 24 巻 2 号 p. 108-118
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/02/25
    ジャーナル フリー
     脳海綿状血管奇形は従来, 良性の疾患と理解されているが, いったん出血あるいは痙攣発作にて発症すると, 同様の出血, 発作を反復することが知られている. しかしながら, これらの症候性病変の自然歴についてはいまだ明らかでなく, このため手術, 放射線外科治療等の治療成績との対比が困難である. 今回日本各地の大病院を中心にアンケート調査を実施して, 症候性病変の自然歴と手術成績を調査検討した.
     症例は保存的治療の49例と, 手術が施行された29例の合計78例であり, 年齢, 性別と病変局在について差異を認めなかったが, 病変のサイズは手術群が有意に大きかった. Kaplan-Meier法でみたProgression-free-survival (PFS) は手術群が明らかに良好な結果を示した. 生下時から初回eventを含む年間出血率は両群に差異は認めなかったが, 初回event後の再出血は保存的治療群において明らかに多く年間出血率10.2%/year/caseであり, 2回目の出血後では19.7%/year/caseとなった. 一方手術群においては治療後の出血率は2.7%/year/caseとなったが, 部分摘出の場合は10.8%/year/caseとなり, 保存的治療群とは変わらなかった. 一方, 臨床的outcomeを最終経過観察時点で比較してみると, 両群にはほとんど差異を認めなかった. その主な理由は手術群における脳幹, 大脳基底核への手術侵襲が関与すると考えられた.
     結論として海綿状血管奇形は初回, あるいは2回目のevent後に, 明瞭な活動性の亢進を示し, それぞれの年間出血率は約10%, 20%/year/caseを示した. この出血率の結果を手術群と比較すると, 再出血の予防のためには明らかに手術的摘出が有効である一方, 部分摘出では出血率において保存的治療と変わらないことが判明した. また手術による侵襲があるため, 経過観察の最終時点において臨床的なoutcomeについては両群にほとんど差異は認められなかった.
  • 種井 隆文, 梶田 泰一, 野田 寛, 竹林 成典, 中原 紀元, 若林 俊彦
    2015 年 24 巻 2 号 p. 120-124
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/02/25
    ジャーナル フリー
     中枢性脳卒中後疼痛を呈しプレガバリンを初期治療薬とした20症例において, プレガバリンの有効性, 安全性を検討した. 除痛効果は内服前後のVASを用いて判定した. 今回, プラセボと比較していないが投与後5.1±5.3週において, VASは8.2±1.3から6.7±2.3 (p=0.018) へ軽減した. 副作用は20例中11例 (55%) に認め, 程度および年齢は, 重度5例 (68.2±7.0歳), 中等度3例 (61.3±14.2歳), 軽度3例 (56.0±5.3歳), 副作用なし9例 (64.8±7.9歳) であった. プレガバリンは中枢性脳卒中後疼痛に対して約20%の除痛効果が期待できる. ただし副作用発現率が高く, 年齢を考慮した内服法を検討する必要がある.
症例報告
  • 舘岡 達, 吉岡 秀幸, 金丸 和也, 八木 貴, 若井 卓馬, 木内 博之
    2015 年 24 巻 2 号 p. 126-131
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/02/25
    ジャーナル フリー
     今回われわれはくも膜下出血後にPRESを発症したまれな1例を経験したので文献的考察を加えて報告する. 症例は84歳の女性, 脳底動脈先端部動脈瘤によるくも膜下出血に対しコイル塞栓術を施行した. 術後, 脳灌流圧の維持目的で降圧剤の内服を中止し, 症候性脳血管攣縮は出現することなく経過した. しかしながら, 第17病日に意識障害が生じ, MRI上, 両側後頭葉を中心とした血管原性浮腫を認めたためPRESと診断した. 降圧治療の再開により臨床症候およびMRI所見は改善した.
     くも膜下出血後のPRES合併頻度は低いものの, その亜急性期における高血圧はPRESを誘発する可能性があり, 神経症状増悪時にはこの病態を念頭に置く必要がある.
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